【人】おめでとう!三宅宏実さん
重量挙げ女子48キロ級の三宅宏実(ひろみ)選手が銀メダル。あめでとう、よかったね。なにしろコーチで元五輪銅メダリストの父、義行さんを超えたのだから。
五輪のメダルを目指して歩んできた2人の日々には蜜月も、すれ違いもあった。すべてを成長の糧にしてつかんだ銀の輝き。2人の誇りそのものだ。
時には衝突し、宏実さんは周囲にコーチ変更も進言されたが、「親子でこれだけ行けることを証明したかった」と拒んだ。義行さんも「体が痛くても黙々と練習を続け、逆に励まされる」とし、2人の絆はより深まったという。
ロサンゼルス五輪からメダルは途絶え、義行さんは長い低迷からの脱却を娘に託した。「消えた明かりを、もう1回点灯させたい。そのいちずな気持ちが毎日を支えてくれる」。そして7月29日、親子の二人三脚が結実した。
宏実さんは父の指導の下、競技歴わずか4年でアテネ五輪日本代表に。「父のいう通りすればうまくいく」。しかし4年後、メダルを期待された北京五輪では減量に失敗、涙を流した。
北京から半年後、父に黙って“家出”した。向かった先は競技を始めるきっかけをくれたシドニー五輪代表、平良(たいら)真理さんがいる沖縄。「モチベーションが上がらない」「体が動かない」と打ち明けた。
「期待に応えられない自分がはがゆく、自分と向かい合う時間が欲しかったんだと思う」と所属チームのチームメート。1週間後に帰宅した娘を、父は何も言わず迎え入れた。宏実さんは自分から練習メニューを提案。家出は親離れするための儀式となり、メダルを引き寄せる大きな転機にもなった。
宅・宏・実。「うかんむり」が3つ並ぶ名前には、栄冠をつかんでほしいとの父の願いが込められている。
さて、私が感動したのは父子によるヒストリーではない。父義行さんが娘宏美さんに対する重量挙げを通しての教育方針だ。
「やりたい」というまで強制しない。
自分と比較しない。
子どものやることに真剣に向き合う。
この教育方針をみて、出版関係者はすぐに出版レジュメを作成して著書依頼に動いたことだろう。いかにも現代的な教育方針だからだ。私の目にはそう写る。
書名タイトル風には「重量挙げ銀メダル三宅宏美の父義行さんのやりたいというまで強制しない!現代っ子の育て方」(仮称)というものになるのだろうか。
66歳という義行さんにとって自分たちの生きてきた価値概念を覆さなければならないほど指導方針を変えたからだ。よくぞこまで現代風教育方針の境地までたどりついたなと。
銀メダルをとったのは宏美さんだったけれど、じっと我慢し続けて指導し続けた義行さんの隠れた金メダルがあるように思う。
