【カフェ】手話スープ店
私の今年のメルマガタイトルは「よのなかメガネ発想術」。きょうはその第6回目(月に2回出稿)を書きました。同じものをブログにも転載することにします。
蓮香尚文の「よのなかメガネ発想術」[2012/03/26配信]
http://s-pr.com/super-prway/all.php?id=3789
◎今回のタイトルは「手話スープ店」
■被災者のスープ愛飲姿がヒント(1/2)
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コラムタイトルの「よのなかメガネ」は「ものごとを思考する」とき、自分や自社のことだけを考えないで「よのなか全体」からみる発想習慣のことです。よのなか=社会=ソーシャル=俯瞰(ふかん)と置き換えてもOK。「よのなかメガネ」というフィルター(視点)から発想すると、素敵なPRアイデイアが湧き出てきます。
6回目のきょうは、昨年12月27日にオープンしたスープ専門店「ソーシャルカフェ サイン・ウィズ・ミー」(運営:ありがとうの種)というお店の話題。主力商品はスープとスイーツ。オーナーは店長も兼ねる柳匡裕(やなぎまさひろ、39歳)さん(上左)。
▽お店サイト ⇒ http://signwithme.in/
▽お店の入口 ⇒ http://s-pr.com/room/soup-entranse.jpg
このお店、ただのスープ専門店ではないんです。経営者の柳さんと4人の店員のスタッフ全員は耳が不自由の「聴覚障害者」。店名の「サイン・ウィズ・ミー」は「一緒に手話で話そう」の意。「売り」は手話と筆談で接客すること。筆談のために壁にはホワイトボードがある。スープ専門店だけなら、都内にはスープストックやチャウダーズなどのお店があるけれど「サイン・ウィズ・ミー」の業態はゴロゴロ具材が入った食べるスープが特徴になっています。
コンセプトは「憩い」「学び」「相談」の調和した知的食空間。スープやスイーツを通して手話空間を楽しむ場を提供する新カフェであり、女性向けのお洒落な定食屋とも。
フードビジネスをやろうと思ったきっかけと発想のタイミング。柳さんはもともとグラフイックデザイナーや障害者の就職・転職をサポートする会社で仕事をしていました。しかし、せっかく仕事の仲介をしても離職率が高いことと、手話ができる人がいない環境では聴覚障害者が働くことにストレスを感じていました。
▽柳匡裕さん ⇒ http://s-pr.com/room/yanagisan.jpg
それならと自分がそうした場を作ればいいじゃないかと、いつしか独立・起業への道を模索するように。福祉機器の開発や理容店など聴覚障害者が起業した例はあるにはありましたが、まだまだ少ないのが実情です。
そんな中、東日本大震災が起きました。感激したのは温かいスープを飲んで癒されている被災者の様子をテレビで見たときでした。元来スープ好きだった柳さんは「これだ」と思い、スープ店にすることに決めたといいます。
すぐに50社もの飲食店のフランチャイズ店(FC)本部を探しましたが、すげなく断られ、けんもほろろの心境に。打ち合わせのたびごとに、「聴覚障害者が社会的価値を提供出来るのか」や、障害者への偏見ともうけとれる「口のきける人を寄こしてくれないと理解出来ない」というような断られ方も。
ちょうどその頃、長野に本社を置くスープチェーン店「ベリーベリースープ」(スープアンドイノベーション社)のFC店募集を知り、ダメ元の覚悟で応募しました。
▽スープアンドイノベーション社 ⇒ http://veryberrysoup.com/
応対した同社社長の室賀康(むろがやすし、32歳)さん=上右=は「障害がある人が気軽に入れる店は少ないけれど需要はあるはず。障害者がビジネスに挑戦することとスープと手話を楽しめる場になって欲しい」と加盟店入りを即決。東京進出を目指していた同社の戦略と一致するタイミングでの出来事でした。
▽室賀康さん ⇒ http://s-pr.com/room/murogasan.jpg
店員も手話コミュニテイサイトで募集して確保。柳さんと副店長の上山ホサナさん(22歳)はFC契約後、スープアンドイノベーション社に出向き研修、筆談でスープの調理法や接客法を学び、やっとオープンに間に合った。出店が決まるとなぜかそれまで断られていた金融機関の融資も決まった。今では手のひらを返すようにいろいろな商談が舞い込むようにもなっていきました。
出店は文京区本郷の東大赤門前に。その理由。手話を福祉ではなく一つの言語として受け入れられるためには周辺地域の環境が最適であることに加え、手話の必要性を社会発信が出来る人材(東大生)を育成できるのではないか。この2点で東大前を店舗立地に選びました。
■聴覚障害者の社会的価値を伝えたい(2/2)
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基本商品であるメニュー。具たくさんのポトフや焼きトマト入りのオニグラスープのほか東京ビーフシチューやチーズケーキなど約24種類(食べるスープ12種類、飲むスープ3種類)を1杯610円から販売。開店3ヶ月間の平均客数は約2300人、客単価750円という。
▽メニュー ⇒ http://s-pr.com/room/soup-menu.jpg
顧客の約8割は近隣の学生やビジネスマンで、スタッフの聴覚障害を知らずに訪れる人がほとんど。来店客の比率。「聴者8割・ろう者2割」「女性7割・男性3割」「東大関係者6割・外4割」「日本人8割・外国人2割」。気になるクレームはもちろんある。ほとんどは「注文間違い」、それと「提供時間の遅さ」も。
繁忙時間帯を除くアイドルタイム(閑散時)の稼働率をあげるための企画も考えています。店内にある「しかくスペース」を有効活用、手話サークルや手話によるセミナー等を提案。誰でも講師登録ができ、さまざまな学びや交流の場に使えればと「手話deソーシャル・エンターテイメント・スペース」に。
「しかくスペース」はろう者・聴覚障害者のポータルサイト。こことコラボして、カフェ事業だけでなく学習事業にも力を入れていく方針。
▽しかくスペース ⇒ http://shikaku.in/space/
(10時~21時)
ろう者としてこだわったのがフランチャイズ方式の起業。なぜか。これまでろう者は援助を一方的に受けることが多く、ビジネスの対象としてみられることがなかった。聴者とろう者がビジネスでWIN-WIN関係を築けるということを実証させ、ろう者でも社会価値を提供出来ることを社会認知させたかったという。そのためにフランチャイズ方式は手っ取り早い有効な手段でした。
オープンまでに、テストマーケティングも兼ねて震災チャリティカフェを2回実施。レンタルカフェやレンタル屋台のテスト。同時にFacebook・ツイッター・HPもフル活用。メディアへはプレスリリースを提供。テレビも 「長野放送」「NHKおはよう日本」「NHK子ども手話ニュース」「日本テレビ・エブリィ」「テレビ東京・WBS」等の放映に加え、全国紙も報道。
▽プレスリリース ⇒ http://veryberrysoup.com/docs/release_111121.pdf
この手話スープ店を通して何を伝えたかったのかを聞いてみました。
柳さんは「ろう者ということでフランチャイズや銀行融資を断られるなど社会的な偏見を身をもって実感した。それでもいつかは理解賛同者は必ず現れると信じて頑張って今回に至った」とこれまでの経緯を前置きした上で、
「これで少しは社会認知の一助になっていると思うが、まだまだ。ホテルに泊まっても手話で接客してくれるところはないし、テレビも字幕放送がない。ビジネスの現場でも取引方法が聴者ベースになっており、交渉スピードが遅く成約までに時間がかかる。そういう意味では私たちの方が色々な不便を経験した身として他のところよりもサービス意識は高いつもり。これをノウハウとして取り入れながらマーケティングや経営
に活かしたい」と語ってくれました。
同店に「3つの指針」というのがあり、私はこれこそが一番大事なこと、ここに柳さんの社会や事業経営に対する思いすべてが反映されていると思います。
▽他利--------誰もがありがとうをもらえる社会にしていく取組であること
▽自立・自律---他責ではなく自責で意思決定し行動ひとつひとつに責任を負うこと
▽選択肢 -----子どもたちに夢を与えられる存在になること(ロールモデル)
また、[ありがとうの種の夢]の以下の言葉も素敵だ。私の提唱する「よのなかメガネ」をかけて思考する時、必然的に社会とのつながりが。すごい発想力というのは結局のところ社会連携力なのだと思っています。
私たちの取り組みは、現在、関係するスタッフや関係者だけで完結するものではありません。私たちのありがとうの種が、次の世代で花開き、そしてもっと自由に、そして楽しく、他のために、さらに広く、さらに深く、輝ける社会にしていく取組です。その世界はすべての人が自分の役割を楽しみ、世のために果たせる、そんなことが当たり前になる社会を目指しています。 (了)
これまでに書いたコラム「よのなかメガネ発想術」
01回目は「常識を否定したバリアフリー」(2012/1/12)
http://s-pr.com/super-prway/all.php?id=3679
02回目は「秋入学で発想力を鍛えよう」(2012/1/26)
http://s-pr.com/super-prway/all.php?id=3699
03回目は「女性向けどんぶり専門店の挑戦」(2012/2/13)
http://s-pr.com/super-prway/all.php?id=3724
04回目は「手こぎ自転車」(2012/2/27)
http://s-pr.com/super-prway/all.php?id=3747
05回目は「高速道路上で結婚式」(2012/3/12)
http://s-pr.com/super-prway/all.php?id=3768
06回目は「手話スープ店」(202/3/26)
http://s-pr.com/super-prway/all.php?id=3788



