【発想】アンチノミーで発想せよ
-----------------------------------------------------------------
発想とアイディアを独自の視点から研究している【伝説のPR職人】ハスカです。
私の一貫したスタンスは「あらゆるビジネスの根本は発想・アイデイアにある」。
マスコミと読者を「ハッ」とさせ、「ソウ」だったのかとうならせる、
「わがハッソウ(発想)術は永久に不滅です」。
-----------------------------------------------------------------
今回のテーマは「アンチノミーで発想せよ」です。
■水と油をシャッフルするように(1/2)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
PR広報の成否は伝えたい情報に報道価値を持たせるなどの初期活動がすべて
といっても過言ではありません。その情報や企画自体に独自性やアイディアといった新奇性が備わってなければそもそも報道素材としては成立しないと思っています。
いわゆる「お知らせ情報」は行政こそプレスリリースとして機能するときがありますが、一般企業などは一部をのぞいて価値ある情報ではありませんのでPRにはなっていきません。プレスリリースは社内回覧情報(お知らせが多い)であってはならず、社外のマスコミ報道を意識して作成すべきです。
社会の課題を解決するために知恵を出し合って生まれた情報や企画のみが「ニュース素材」となってプレスリリースに活かされ、マスコミに発信されていくことになります。
しかし、パブリシテイ(報道PR)を成功に導くためのアイディアや企画を立案することはそう簡単なものではありません。最終的に報道されなければなりませんのでそれなりに難しい。
決して捏造ではありません。どこまでも事実情報を積み上げながら、ニュースという山に到達するように意図的・戦略的に創っていくことになります。その制作過程はつらいことのほうが多いですが、無事企画としてまとめあげたときの喜びは爽快なものです。山頂から見下ろす下界のように、掲載媒体が見えてくるのですから。まさにここで「勝負は決まった」と。
まあ、そうはいっても人間ですから、アイディアに行き詰まるときは誰だってあります。そんなとき、相反する対立する概念をクロスさせると斬新なものが生まれます。
二律背反の融合。二律背反はドイツ語で「アンチノミー」。かの有名なカント(似顔絵イラスト)が概念を創ったといわれます。相互に対立あるいは矛盾するわけですから、その落差は最大なはず。「本当にそうなの、そんな馬鹿な」となるわけです。この落差こそがニュース報道の意義・根源になります。
水と油をいっしょにシャッフルするといったように、これまで常識的に慣習的に無理と思われていた相反する概念同士をなつないで融合させるのです。私のアイディア作りは、この思考手法をとることが多いです。
今まで繋がっていなかったものをつなぐ、重ねる、組み合わせる、この手法はインパクトのある刺激的なビジネスシーンを創っていきます。新しい商品、サービス、形態などはみんなこの融合企画から誕生しています。
■二律背反概念を融合する発想(2/2)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
そのアンチノミー、二律背反融合の具体的事例をあげてみます。
▽「ホテルのような病院」、「無人コンビニ」、「団体旅行で一人旅」
▽「匂わない納豆」「匂わない香水」、「酔わないビール」、「畳ベッド」
▽「攻めのゴールキーパー」、「老人専用パソコン教室」
▽「洗剤のいらない洗濯機」、「盛大な離婚パーティ」
▽「消音ピアノ」、「黒幕の日向商品」、「女性の逆単身赴任」
▽「車椅子に乗せない病院」、「我慢しないダイエット」
▽「女性のパワーランチ」、「明るいドラッグ」、「お上公認の密造酒」
▽「真冬の氷菓」、「若者相手の老人パワー」、「臭いけどうまい」
▽「テレビパソコン」、「こってりさっぱりのデザート」
▽「おいしい介護食」、「葬式も請け負う結婚式場」
▽「金持ちのワンカップ酒」、「熱々の老人夫婦」、「動くマネキン」
▽「フランス料理の学食」、「主婦の長期バカンス」
▽「会社のおやつ」、「銀行ロビーのファーストフード店」
▽「低カロリーの油」、「大魔人」、「生涯独身保険」
▽「濃厚なのにあっさり系テースト」(私が趣味でネット通販しているタレ)
いずれも「えっ、まさか、本当に」と思う新たな魅力のアイディアばかり。
この発想の根源は、人間が持ち合わせている「好奇心」にあります。我ら人間には二律背反する概念を、とりあえず混ぜ合わせて、かき混ぜる好奇心が強いものと思われます。
「これとそれを組み合わせたら面白くなりやしないか」とその融合を楽しむわけです。なにせ「別れても好きな人」と歌われるぐらい、アンチノミーが好きな国民性ですから。
落差の大きい情報は社会的にインパクトがありますのでそのままニュースの対象となっていきます。既存価値観の転換だったり常識の否定に加え、新概念の発見・開発などといったことがそれです。
そういうふうに考えると日本人はこういった「ドキッ!」とするようなアンチノミー(二律背反)現象が大好きで、だからこそ小さな島国である日本には何十万というマスコミが存在しているかもしれません。日本は世界に類を見ない媒体王国ですから、これらの媒体を有効活用しない手はありませんね。
「ドキッ」といえば、読売新聞土曜夕刊の社会面に「いまドキッ」という大型企画紙面があります。テレビも今は番組が存続しているどうかわかりませんが、鹿児島テレビ「お茶ドキッ 金曜版」、関西テレビ「2時ドキッ」、中部日本 放送ラジオ「伊藤秀志のツー快お昼ドキッ」というのがありました。
また最近では、長年ライバル同士の「悪魔の提携」や合併が頻繁に行われています。銀行、商社、卸業、スーパーなどが、昨日の敵は今日の友として生き残りをかけた融合を盛んにやっています。政治の世界でも同じ。「政界再編」という言葉もあるぐらいです。
われわれ広報パースンでもアイディアの創出に手詰まりになったとき、この手を思い出して使ってください。アンチノミー、相互に相反する概念の融合させる発想法です。落差が大きい分、完成したときには間違いなくニュースになっていくでしょう。