【自論】社会とつながってこそPR
【伝説のPR職人】のハスカです。
■社会起業家って何者(1/2)
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ボランティアというのは無利益のいわば「無償の愛」ですが、利益を出すことを前提としている事業という点で、社会起業家は明らかに違います。
しかも、事業の対象が医療、福祉、教育、環境、文化などの社会サービスに限定している点も他の営利事業とも異なっています。
利益を出しながら「社会のために役立つ」ことを目的としたこの社会起業家という存在が、これからの日本を変える新たしい潮流になるのではないかといわれています。実は私もそのように思うようになった1人です。
まず定義ですが、日本語訳では社会起業家とは「ソーシャル・アントレプレナー」となります。簡単にいえば「社会問題を起業家精神で解決する人」です。
アメリカに「ソーシヤル・ベンチャー」という言葉がありますが、だいたい同じようなものと思って差し支えないでしょう。社会問題の解決にも起業家精神で対処するというのがおもしろい着眼点ですね。
社会起業家についてちよっとばかり歴史を紐解いてみましょう。普通、社会問題というのは行政機関が解決するものと思っていますよね。いわゆる「福祉」対応です。しかし、それも80年もやりますと行き詰まってきたわけです。
民間ではさまざまな社会問題を、キリスト教会の「コミュニティ」が解決したり、企業が「寄付」行為をすることによって社会貢献活動をしてきました。
この2つがこれまでのやり方でしたが、そのどちらでもないやり方をするのが社会起業家です。これまで行政のテーマであった社会問題を、起業家精神によって経営努力で解決していこうという考え方です。
最初の提唱者はイギリス人です。社会起業家の概念が出てきた背景は、サッチャーにあります。サッチャーは80年代、首相になるときの公約で、財政赤字をなくす政策として福祉サービスを切捨てました。
公約は実現して成功を収めたかのように思えましたが、一方で、小学生が学校に行けないとか、病気になっても病院に行けなくて死んでしまうということが起きました。福祉サービス切捨ての弊害が出てきたのです。
これじゃいけないというので民間人が立ち上がった。これがイギリスの社会起業家の第一幕です。90年代。ロンドンの「DEMOS(デモス)」という小人数のシンクタンクは、独立系で寄付金で運営している研究所です。
経営が大変なので安い給料しか払えない。そこで、雇うのは若い人に限定し、所長は30歳ぐらい、研究員は20代と30代前半にした。若い頭脳たちは固定観念に縛られずに考え続けていたら、ソーシャル・アントレプレナーというところに辿り着いた。
97年には社会起業家のケーススタディや理論を集大成して100頁ぐらいの「社会起業家の隆盛」という報告書を出しています。同年6月にブレアが総選挙で勝って首相になった直後の7月には「これからは社会起業家でいきます」と宣言しました。
財政赤字をなくす手段として増税するやりかたが一番わかりやすいですが、増税はせず社会サービスをカットしたのがサッチャーでした。
これ以外のやり方もあったのですが、ブレア政権が唱えたのは、第三の選択でした。国民に福祉サービスを提供することをノルマにはしない代わりにNPOとか社会起業家にお任せしましょう、そのための補助金は出しましょうということで国家がソーシャル・アントレプレナーとパートナーの関係になって一緒に取り組むということになったのです。
アメリカはどうか。80年代にレーガンさんが連邦政府を小さくする新体制を推し進め、行政の仕事は市町村に下ろすやり方を採用。結果、勝ち組、負け組みのメリハリができ、失業は増えるという社会になった。
90年代の後半にITバブル、ネットバブルが崩壊し、起業家の仕事がなくなり、そういった人たちがソーシャル・ベンチャーとかソーシャル・アントレプレナーに。これまで行政がやっていたようなところに乗り出してきたのがアメリカの社会起業家。経済価値のみならず、社会価値をもつくるのが社会起業家の役割といえます。
それでは日本には社会起業家はいるのでしょうか。もちろんいますとも。
茨城県・霞ケ浦で水をきれいにする「アサザ・プロジェクト」という事業をしているのが飯島博さん。 ▽アサザ・プロジェクト http://www.kasumigaura.net/asaza/
発展途上国の商品を輸入して自立を助ける「第三世界ショップ」や、社会的に意味のある事業に無担保・低利の融資をする「市民バンク」、若手起業家を支援する「チャレンジ若者ファンド」を立ち上げている片岡勝さん。
▽第三世界ショップ http://www.p-alt.co.jp/asante/
▽市民バンク http://www.p-alt.co.jp/bank/
▽チャレンジ若者ファンド http://www.cyber.gr.jp/fund/
北海道・YOSAKOIソーラン祭りをつくった長谷川学さん。10年ぐらいで観客が200万人来て200億円稼ぐお祭りの提唱者。YOSAKOIソーランは、いま全国100都市ぐらいに波及しており、文化を作ったといっても過言ではないし、地域のリバイタリゼーションのモデルになっています。
▽YOSAKOIソーラン祭り http://www.yosanet.com/yosakoi/
また、財団法人ヤマト福祉財団の小倉昌男さん(故人)。障害者が「自分で稼いで生きていける」仕組みを完成すべきだ!宅急便の生みの親にして、数々の国の規制と戦った故小倉昌男ヤマト運輸会長が自らの私財を投入したヤマト福祉財団。
▽ヤマト福祉財団 http://www.yamato-fukushi.jp/
障害者年金を国から10万円もらい、後は自分で働いて10万円程度の月給を稼ぐ。そうすれば自立した生活ができるのではないかと考えた社会福祉法人プロップステーション理事長の竹中ナミさん。
▽社会福祉法人プロップ・ステーション http://www.prop.or.jp/
飯島博さん、片岡勝さん、長谷川学さん、小倉昌男さん、竹中ナミさん。この5人が日本を代表する社会起業家だと思います。
以上、社会起業家について述べてきましたが、企業が今後新しい成長分野に乗り出そうと思ったら、手法を変えてソーシャル・アントレプレナーシップで起業をやればいいということになります。
社会貢献でなくてもれっきとした社会事業開発で十分いけます。医療、福祉、介護、教育、環境、文化、安全など「生活」に関する分野がふさわしいです。
これまで社会的な事業を担ってきた行政やNPOの世界では、使命の追求を重視するあまり、運営効率やコスト意識などが希薄だった。そのためこの両者は交わる機会がほとんどなかった。
しかし、社会起業家が発揮した行動力は、社会と経済の活性化という点できわめてダイナミックで、間違いなく次代をリードしていく存在になるだろう。社会問題の複雑さがますます明らかになっている現代にあって、社会起業家の生き方や考え方は、私たちに広報パースンにも重要なヒントを与えてくれます。
■社会起業家の発想を広報に活かす(2/2)
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社会起業家を整理しますと、
○行政や企業がカバーできず、地域生活者が困っている「問題を発見」し、
○問題解決のため「地域の経営資源やネットワーク」を活用する同時に、「志・使命
感」を持ち、
○事業を継続・発展させるため、事業の仕組み作り、組織、戦略、実践する 「マネ
ジメント (計画・実行・管理)手法」で取り組み、
○事業を通じ「リーダーシップ」を発揮し、
○行政、企業を巻き込み「共生・協働」の新たな経済の仕組みを創り出す人というこ
とになります。
例えば、地域生活者が困っている「問題を発見」しとありますが、これなどは広報パースンの発想マインドという点でもっとも大事な点であります。
すなわち、企業は自社の利益を追うだけにとどまらず、その企業を取り巻く周囲の社会問題を積極的に発見し、「自らの資源」を投入して解決していかなければならないのであります。
それは、経団連の「企業の社会貢献」の定義をみてもわかります。
○社会の課題に気づき、自発的にその課題に取り組み、
直接の対価を求めることなく、自らの資源を投入すること
次に、「志・使命感」を持ちとありますが、これこそ企業の経営哲学ともいうべき「ミッション」であります。ミッション( mission )は任務、使命。もともとはキリスト教布教のための伝道「使節団」の意味で、よくミッションスクールというのはまさにここからきたのである。
すなわち、「社会のために役立つ」という強い「使命感」をもつ、このことは広報担当者としてイロハのイなのである。利益よりも社会正義を優先させるという考え方にたてば広報パースンはジャーナリストなのである。
社会起業家の登場によって考えさせられるのは「市民社会の形成」だ。これまで、政府、企業、NPOという単体の枠組みではできなかったことを可能にしている。それは「所属する組織に対する忠誠心」ではなく、「目的達成に対する忠誠心」を中心に行動している点。もはや広報パースンは自社企業のみならず、それらを取り巻く業界団体、そして一般社会まで目を配り、実際に行動を起こさなければ「逃げ腰」と非難されるようになってきたことだ。
そのことは「ライフスタイル」にも通じる。「働き方と生き方が同じ」という社会起業家の行動様式の事実に注目したい。働くという行為が、自己実現や自己表現の手段なのだ。自分の価値観を仕事に反映させることで、心の満足感を得る社会起業家的な働き方はこれからの時代にマッチした生き方なのであり、その先導的役割を担う広報パースンもまた、彼らと同じ「ライフスタイル」にならなければならない。
起業家と社会起業家との間には、基本理念として「営利」対「非営利」あるいは、「利益極大化」対「社会的貢献」といった図式が浮かび上がってきますが、ここにきて、営利法人といえども社会的責任を意識せざるを得ない流れがある一方、非営利法人といえども組織のサステナビリティーを確保しなければ、高邁な社会貢献の理念も画餅に終わってしまう。もはやこういった単純な対立的な図式は成り立ちにくくなってきているのが21世紀だと思います。
間違っても、「広報」を販促手段や集客ツールとして考えて欲しくない。広報パースンたる者、つねに「社会とのつながり」を意識した発想をしていって欲しいね。
斎藤槙著「社会起業家-社会責任ビジネスの新しい潮流-」(新書)
http://tinyurl.com/2diabl
によれば、社会起業家から教わった生き方と働き方には共通する特徴があったという。これはこのまま広報パースンにもあてはまりますね。
01.自分の好きなこと、楽しいことに夢中になろう。
02.いろいろな人と喜びや悩みや夢を分かち合おう。
03.効率を優先させない。何が大切かを見極める。
04.かわいい子には旅をさせよ。かわいい子だけでなく、自分がかわいい大人も旅に
出よう。きっと名案が浮かぶから。
05.おかげさまの気持ちを忘れずにいよう。
06.あきらめるから失敗する。成功するまで頑張ろう。
07.人と競争するのではなく「協奏」しよう。
08.人生に無駄はない。一見マイナスなことでもそこから何かが見えてくる。
09.人がどう思うかではなく、自分がどう思うかを大切にしよう。
10.たまには自分を褒めよう。
▽斎藤槙著「社会起業家-社会責任ビジネスの新しい潮流-」(新書)
[本の内容]
第1章 NPOのような企業、企業のようなNPO
第2章 ビジネスの社会化、NPOのビジネス化の潮流
第3章 社会起業家を生み出す基盤
第4章 活躍する社会起業家たち アメリカ篇
第5章 活躍する社会起業家たち 日本篇
結びにかえて—社会起業家たちのインパクト

