【編集者】三度の食事に役立つ記事を
「暮らしの手帖」の社主、大橋鎮子さんが雑誌記事で語っていた言葉に感動。
◎三度の食事に役立つ記事を作る
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商品テストなど実直な企画で読者に愛されている雑誌「暮らしの手帖」の社主で、名物編集長だった故花森安治氏と一緒に創刊にかかわった大橋鎮子さんの話を雑誌で読んだ。
創刊の昭和23年。父をなくしたのがきっかけで妹と母を養わねばならなくなって「喫茶店でもやろうかしら」と母に相談すると、「それでは店の前を通る人にしか知ってもらえないからお金にならない。全国に向けて商売しなければ」といわれ発奮。
当時日本読書新聞に勤めていた大橋さんは編集長に相談を持ちかけ、紹介されたのが花森さんだった。以来、二人三脚で同誌の経営に参画。
その大橋さん、90歳の現在も毎日会社に出社。超長寿連載「すてきなあなたに」を執筆したり、企画のタネを探したりとやることは一杯ある。
「だって誰も企画を出さなければ雑誌は出せないでしょう。三度の食事に役立つ記事を作らなくっちゃ・・・」
私は大橋さんが語った2つの言葉に感動した。
ひとつは大橋さんのお母さんがいった「商売は全国に向けて」と、現在もなお編集企画のお仕事をされており、その根本姿勢について「三度の食事に役立つ記事を」といっておられることです。
「暮らしの手帖」は料理雑誌ではないのに三度の食事に役立つといっている点、ここに女性ならではの視点を感じずにはいられない。暮らしの象徴である食事シーンに自然と話題になる記事を作りたいという意味なのだろう。
これで売れる訳がわかった。「三度の食事に役立つ記事」は大橋さんがたどり着いたシンプルマーケティングの極意だと思う。
私は自称マーケッターという日本人をほとんど信用していない人間。ほとんど米国発の先人(経営評論家)の受け売りをやっているからだ。はっきりいって全部マネ。「プランディング」に「強み」・・・。やめてくれ。こうした今はやりの言葉をすべて否定し、その上で私はさらに罵声を浴びせたい。人の真似をするなと。自分の言葉で自分の思想を語れと。
大橋さんを見よ。これぞマーケティングの極致だ。大橋さんはマーケティングという言葉こそ使っていませんが、暮らしの雑誌の編集方針に「三度の食事に役立つ記事」をと位置づけたのはまさにシンプルマーケティングの極意。こういう人の生きたひと言ひと言をせんじて噛みしめたい。

