ルームメイトは、ちょくちょく変わった。
何度目かの、ルーム・チェンジ。
同室には、
日本人だけは嫌って頼んでおいたので、
それはなかった。
。。。
でっかい荷物持って、入ってきた。
小柄で、華奢。
黒髪が肩まで。
。。。
『 はろ 。 私、チャー・シュウ って言います。 よろしく 。。。 』
。。。
確か台湾の人。
チャー・シュウ。。。
すごい。
私は、こみ上げる笑いを我慢できなかった。
ほかほか湯気の浮かぶ、
チャーシューメンが、
脳裏をよぎった。
すごいなぁ。
名は体を表すとか言うけども、
名が食そのもの、っていうのも、何て言うか。。。
すごいな。
それしか思いつかなかった。
その時点では。
。。。
華奢な、チャー・シュウは、すこぶる秀才だった。
そして、良く、勉強した。
時折、
言いたい内容を、ダイレクトにかつスムースに英語に変換できないまどろっこしさがあるのか、
チッツ☆ と舌うちみたいな表情をしたりして、びっくらこいた事もあったが、
相対的に、
とても友好的に同じ空間で過ごせた。
。。。。。が。。。
。。。平和は続かないもんだ、と悟った。
ド真夜中。
眠っていると、
バリンバリン、
ガサゴソッツ、
すごい音がした。
飛び起きた。
そしたら、
チャー・シュウが、
暗闇の中、
デスクスタンドだけの明かりの中、
むさぼるように、
大量の、
落花生を食べていた。
殻つきの落花生。
すごいよ。
床の上。
ここは、モルモットの部屋か。。。。
ごっつい、ブ厚い、
宇宙工学か何かの、
英語の専門書を読みながら、
ブアリ、ガサゴソ、
ぺっつ、ぺぺぺっつ。。。。
手早い、かなり慣れた手つきで、
しかも片手で、
お豆さんの殻を粉砕し、
ぽいっつ、と、豆粒をほじくり出して口に運ぶ。。。
目は、ごっつい書籍のページに注がれていた。
すごい光景だった。
スポットライトを浴びた、チャー・シュウ。
怖いを超越して、厳かにさえ感じられました。
私は、
何も言わず、
無言で、また、2度寝しました。
。。。
翌朝、
やはり、
私たちの狭いお部屋は、
モルモット、もしくは、りすさんのねじろのようでした。
さすがに私もヒステリックに、
( お掃除、ちゃんとしてよねっつ☆ チャー・シュウっつ。 もうっつ☆ )
と言ってしまいました。
チャー・シュウは、
優しく微笑みながら、
静かに、
そして、
確かな文法の英語で、
独特のイントネーションで、
言いました。
” chiecororine, noone die by dust .... "
。。。。てな感じのフレーズだった。
ゴミで死ぬのは稀有な事。
。。。。確かに、
当時のアメリカは、まだまだ平和だった。
しかし、まぁ。
チャー・シュウ。
やはり、大陸の人。
私なんかと違って、
とらえ方が壮大だ。
ちょっとした、落花生の殻が散らばっただけで、
ヤイヤイ怒った自分が、
少し恥ずかしかったりもした。
チャー・シュウに用事があって、
名前を呼ぶたびに、
笑えた。
。。。
持っとけ、持っとけとしつこく言って、
チャー・シュウは、
自分の写真の裏に、漢字でフルネームを書き、
それを私に託した。
その時は、
しつこい女め。
自意識過剰だわ。
。。。。とか思ったりしていたが。
。。。
あれから歳月は、思いっきり流れ、
紆余曲折あり、
カレン・キングストンの本の影響なども加味されて、
のそのそと部屋の片づけとかしていたら、
書籍の間から、
はらり、、と写真が落ちてきた。
どっか公園らしいところ、
マリーゴールドの咲き乱れる一角で、
座って、にっこり笑っているチャー・シュウだった。
ずっと探していたのに、ちっとも出てこなかった写真。
裏面には、
漢字で、
ちゃんと名前が書かれてあるよ。
。。。
大陸の人。
数理学か、
物理か何か、
とにかく私には到底及べない分野を学んでいたチャー・シュウ。
今も、
落花生のゴミの中で、
難解な書籍を読みふけっているのだろうか。。。
。。。
今でも、
中華料理屋さんとかに行くと、
メニュ観て、
笑う。
。。。
散らかった落花生の殻とかゴミなんて、お掃除したらすぐ綺麗になる。
ちょっとした事だったのに、
涙ながらに激怒した私。
ごめんね。
チャー・シュウ。。。
またもう一度逢いたい。
逢って、直接、笑いながら名前を呼びたい。
かけがえのない、大陸のお友達。
大切な事を教えてくれた人。
maria’ gold
マリア様の金貨っていう意味もある
マリーゴールド。
親戚のおばちゃんは、
国体花(こくたいばな)って呼ぶよ。
何でも、国体があった時に、
天皇陛下が通られる道路沿いに、
突貫工事でヒッシで植えたそうだ。
ふーん。
道に金貨ばら撒いたのね。
確かに、太陽光線の当たり具合によっては、
文字通り、金色に輝く。
すごくパワフルな花。
冬なのに、
咲いてくれているよ。
黄色い花は、元気をくれるから好き。
