ロンゼルは、とび級だった。

だから私より年下だけれど、学年は上。

もの静かで、良く凪いだ春の海、ひねもすのたりのたりかな、的な気配の女の子だった。

寮の部屋は、空調が壊れていて、

夏に寒く、冬に暑い、という、前代未聞の本末転倒な室温状況であったが、

ルームメイトのロンゼルは、

全く文句一つ言わない。


私は、と言うと、

やれ、暑い、

やれ、寒い、

きゃ~水冷たすぎる、

あれれ、お湯が出ないよ、

や~、出たら、突然熱湯だ!

。。。。と、


毎日、文句たらたらだったような感じで、

当時は気がつかなかったが、

今にして思うと、


エンドルフィン大量に発生した実験用の小ねずみ、みたいな奴だった。


。。。


私のお誕生日。

20歳は、ニュージャージーで迎えた。

迎えたと言っても、当人は、自分の誕生日すら忘却するほど、


ヒッシに、毎日、語学コースのファイナル・テストだったので、

それどころじゃないって感じで、

あんまり臨場感すらなかった。


。。。


その日、いつものように、カフェテリアで、

冬場のあんまり美味しくない夕食をすませて、

部屋に戻ると、

ロンゼルが、

chiecororine,これ。。。

と言って、小さな箱をくれた。


へ?  何?

。。。貴方、今日、お誕生日でしょ?


びっくりした。

自分すら無視している私の誕生日。

ロンゼルはちゃんと覚えてくれていたのです。


細くて華奢なリボンをほどくと、

箱の中には、

手のひらに乗る位の大きさの、

ガラス容器に入った、

香水がありました。


琥珀色。


オーデコロンは使っても、香水はそれまであまり買わなかった。


香水は、大人になってからだから自分にはまだ少し早いと思っていたので。


。。。


グロリア・ヴァンダー・ビルド。


スワンのコラージュが入った素敵なガラス容器。


ガラス容器の重さが手のひらに伝わり、


それと同時に、


ロンゼルの優しい心持ちが静かに私の胸のあたりにじんわりと流れ伝わる感じがして、


涙が、


洪水のように溢れてきました。


何ていうお礼を彼女に伝えたのか全く覚えていない。


それでも、


たった1度、


初対面の挨拶の時に交わした会話で、


私の誕生日を覚えていてくれたロンゼル。


奨学金をもらいながら、


そして、アルバイトもしながら、


そういうお金で、


グロリア・ヴァンダー・ビルドを贈り物にしてくれた人。


もう一度、


逢って、お礼をちゃんと言いたいほどです。


事情があり、突然帰国したので、


荷物とか、紛失した物もあります。


でも。


この大切な香水瓶は、


今も、私の手元にあります。


先日、大掃除していたら、出てきました。


ずっと忘れていた思い出が、


この白鳥のコラージュが付いたガラスの香水瓶を手にすると、


ほのかに残る香水の香りと共に、


優しく蘇ります。


もう、20年以上過ぎた今も、


容器の内側に残る揮発した香水の香りは、


とても印象的で強く、


どんな状況でも決してへこたれない、


タフで、チャーミングな、


東海岸で出会った素敵な女性達のイメージそのもの。



物質、物体、物、等に、極力、執着はしないようになろうとは思っていますが、



時には、


こうして、


手のひらに乗るほどの小さなガラスが、


私に、


生きてゆく勇気とガッツをよみがえらせてくれる場合もあります。



もはや香水の液体は揮発し、琥珀色にガラスの内側に付着しています。


それでも、甘く深い香りは、


20年以上経過した今もなお、


凛として存在し、


静かに蓋をあけると、


素敵な空気が、


呼吸と共に鼻口腔からおでこ周辺の脳に抜けるのが分かる。


まだまだ解明されてない謎のゾーン海馬の中へも流れ入り、


眠ってしまっている脳細胞すら心地よく刺激してくれているのかも知れないですね。


人間の脳は、活躍しているのは、全体の数パーセントに過ぎない。


そして、香りと脳の働きとの関連性も、


昨今、アロマテラピーやハーブの研究で少しは解明されつつあるが、


まだまだ、未知の分野ですね。



私は、学者でも何でもないけれど、


香りという存在は、


私達生物にとっては、


とても貴重で大切だと思います。


香水瓶は、洗ってしまうと香りも薄まってしまうので、


表面だけ綺麗に拭き、


大切にしまっておこうと思います。



ガラクタ捨てれば未来が見える。。。というカレン・キングストンの本は、


ブログのお友達に教えてもらいました。


好きな本なので、思いついた時にいつも少し読み返しています。


お部屋の片づけも苦手な私でしたので、


読みながら少しずつ掃除もがんばっています。


掃除すると、色々、探していたものが出てきます。


そして、物と同時に、


出来事を思い出しますね。


物、物質は、単に、トランスミッターみたいな存在だと私は思うのです。


物体そのものが、何かしらアクションを起こすというのではなくて、


その存在にまつわる、過去や現在の出来事や、


それに連鎖する記憶や思い、


そういう目には見えない、様々な波動が覚醒すると同時に、


手にする人に作用すると思います。


だから、掃除は本当に大切。


本当に大事な事を、思い出させてくれるから。


ここ最近になって、しみじみ、そう思います。


。。。


マンハッタンのtwin tower が崩壊して、


今は、groud zero というメモリアル・エリアに変わってしまっても、


私にとって、


やはり、


アメリカは、素敵な存在です。


たった数年の滞在でしたが、


本当に、たくさんの出来事を経験し、


学ばせてもらった国。


昨今、少し魅力が薄らぎつつありましたが、


グロリア・ヴァンダー・ビルドの香水瓶を眺めると、


魅力的だった頃のアメリカが蘇ります。


繁栄も、

敗退も、

衰弱も、

そして、崩壊ですら、


自然の流れ。


現在のアメリカの衰退のみを憂うのではなく、


広いスパンで、


私にとってのアメリカという存在を、


大切にしながら、


生きてゆきたいと思います。


そして、


途絶えたコンタクトも、


もう一度、


少しずつ、


たぐりながら、


いつかまた、


留学の頃のお友達とも、


楽しくお話できる、希望的観測を胸に持って、


ま。


じりじり。


fly me to the moon



ピアノ弾き語りの、編曲と練習も、がんばりますね♪



月から見渡せば、


見えないものはない。


逢いたくても逢えない人達ですら、


高い天空から眺めたら、


すぐに分かる。


そういう気持ちで、


たどたどしいピアノを、弾きます。


哀愁は、誰にでもあります。


大切なのは、


哀愁から逃げない事。


なぜなら、哀愁は、


決して哀しい存在ではないからです。


前向きに哀愁と共鳴できたら、


それが一番進歩した生き方だと思います。


何でも、positiveに。


パス  イット イヴ。


そういう勝手な語源に思いつきました。


記憶の中のトラウマは、イヴにふんわりパスすれば良いのではないでしょうか?



私は、

クリスチャンでも何でもないですが。。。


それでも、

ご飯食べる前とかには、


一瞬、


心の中で、


   天と

   地と

   精霊のみなにおいて。。。。



 何故かそう思う時があります。


 小さな粒の、種をまいて、とても素晴らしい花に育ったりする様子を見る時も、そう思う。


 人間も、大きな自然の、ほんの1部分なんですよね、実際。


 20代の頃には、


 考えてもみませんでしたけれどもね。



 。。。



 catch you later on....



        キラキラ  霧 キラキラ


    
        今日の晩ごはん、何にしよかな。