平成22年(行ケ)第10262号
1 特許請求の範囲
【請求項1】
包装品を充填した袋の開口端部を搬送ベルト上に横置きにして,その開口端部に上方からエアを吹き付けて同開口部を前記搬送ベルトに対して偏平状態にさせた後,前記袋の開口を開かせ,開口した前記袋内に2本の拡開口バーを挿入しそれを横に広げて袋の開口を横に広げ,横に広げられた前記袋の開口端部を挟んでシールすることを特徴とする袋による包装方法。
(請求項2~7は割愛する)
2 審判で審理された無効理由
本件審決の要点は、本件発明1ないし6は甲1ないし甲6発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない,というものである。
※甲1ないし甲6発明のうち、裁判所の判断において用いた引用例は以下の通りである。
甲2:米国特許第5092104号明細書
甲3の1:特公昭62-12085号公報
甲5:特表平9-501378号公報
3 当裁判所の判断
容易想到性の有無について
(1)本件発明1と甲3の1発明との対比
ア 甲3の1発明と甲2発明との組合せについて
甲3の1発明に甲2発明を参酌することによって本件発明1が容易想到というためには,甲3の1発明において,製袋充填セクション12で被包装物10が充填され,かつ,一端部が開口された個々の包装袋36が吸着ベルト46の搬送ベルト面に吸着固定されつつ搬送された後,送気ノズル48から圧縮空気が送気されて開口部が開放される前に,甲2発明の「排気ノズルを介して調節可能な空気流を指向させる手段」を適用することを要する。
しかし、甲2発明の「排気ノズルを介して調節可能な空気流を指向させる手段」は袋の閉口といった袋の開口過程(C工程)とは全く逆の工程に用いられるものであるから,甲3の1発明における袋の開口過程の前段階に甲2発明の「排気ノズルを介して調節可能な空気流を指向させる手段」を適用することの動機付けとなるものが存在しないといわざるを得ない。したがって,甲3の1発明に甲2発明を参酌しても,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が相違点2を容易に想到し得るものとすることはできない。
イ 甲3の1発明と甲5発明との組合せについて
甲5発明には,その記載から、本件発明のB工程,すなわち,「開口端部に上方からエアを吹き付けて同開口部を前記搬送ベルトに対して偏平状態にさせ」る技術事項が開示されているとは認められないから,甲3の1発明に甲5発明を参酌したとしても,当業者が相違点2を容易に想到し得るものとすることはできない。
ウ 甲3の1発明と甲2発明及び甲5発明との組合せについて
前記ア及びイのとおり、甲3の1発明に甲2発明を参酌しても,また,甲3の1発明に甲5発明を参酌しても,本件発明1の容易想到性が否定されるところ,甲2発明は内容物が入った状態の袋の閉止工程のために「排気ノズルを介して調節可能な空気流を指向させる手段」を使用するものであるのに対し,甲5発明は内容物が入っていない段階の袋の開口工程のために第二のノズル43から突出する下方フラップFの縁部に向けて圧縮空気を噴射するものであるから,両者はそれぞれ目的及び適用場面を異にするものであり,甲3の1発明に対し甲2発明と甲5発明を併用して組み合わせることの動機付けとなるものが存在しないといわざるを得ない。
(2)原告主張の取消事由に対する判断
ア 甲2発明に対する評価及び甲3の1発明との結合に関する判断の誤りについて
原告は,甲3の1発明における吸着ベルトによる搬送工程と甲2発明による上方からのエアの吹き付けを伴う搬送工程とは,少なくとも下側フィルムが搬送手段に対し密着状態を実現し,これによって次の工程を確実に実現し得る点において明らかに共通していると主張する。
しかし,甲2発明においては,原告が指摘する箇所を考慮しても,
・下側フィルムが搬送ベルトに対し密着状態であるか否かは明らかではない。
・開放袋の下側フィルムを「密着」することまで読み取ることはできない。
したがって,甲3の1発明における吸着ベルトによる搬送工程と甲2発明による上方からのエアの吹き付けを伴う搬送工程とが下側フィルムが搬送手段に対し密着状態を実現している点で共通であると認めることはできない。
以上のとおり,この点に関する原告の主張は採用することができない。
イ 甲5発明に対する認定判断の誤りについて
a. 原告は,第二のノズルによる圧縮空気の噴射は、開口部を含むバッグ全体における搬送ベルトに対する密着状態を目的としている,また、第二のノズル43は単に下側フラップFだけでなく,上側フラップ,すなわち上側フィルムをも含む開口部全体に対し,第二のノズル43からのエアの吹き付けを行っているなどと主張する。
しかしながら、甲5の記載によれば、第二のノズル43は,コンベアベルト18の側方に位置する下方フラップFの縁部に向けて圧縮空気を噴射するものであるから,バッグの開口部をコンベヤベルト18に対して偏平状態にする作用を奏するとはいえない。
b. また、原告が主張する,甲5発明において,下側フィルム(フラップF)を搬送ベルト(コンベアベルト18)に密着状態とするものであることは、本件発明1のB工程とは目的,作用効果が異なっている。
c. さらに,原告は,甲5の図3及び図4においては下方のフラップの突出の程度は極めて小さい旨主張する。
しかし、甲5発明には「上下のフラップを有しており,その下方のフラップが上方のフラップを横方向に越えて突出する」ものであって,「固定装置25が突出するフラップFを固定」することが明記されていることからすれば,少なくとも固定装置25が固定できる程度には下方のフラップは突出していることは明らかであるから,原告の上記主張は採用することができない。
d. 加えて、原告は,甲5発明が第二のノズル43による上方からのエアの吹き付けを採用しているのは,次の工程である第一のノズル31による開口工程に際し,「バッグの開口部が確実に大きく開かれるようにする」ことを目的としているからに他ならないと主張する。
しかし、甲5の記載から、エアの吹き付けは,あくまで下方のフラップFを固定装置25に確実に挿入するためのものであって,原告の上記主張は失当である。
e. また,原告は,甲3の1発明におけるCの開口工程の前段階において,甲3の1発明の吸着ベルト46の吸着機能に加えて,同様に前記吸着機能に立脚している甲5発明に着目し、その第二のノズル43による上方からの噴射機能を更に重畳することは,当業者においては容易に想到し得る技術的改良であって,そこには何らの困難性も存在しないなどと主張する。
しかし、甲5と甲3の1のそれぞれの記載から、甲5発明のように突出している下方のフラップFに圧縮空気ジェットを噴射して固定装置へそれを確実に挿入し固定する技術と,甲3の1発明のような送気ノズルのエアによる位置ずれを吸着ベルトによって防止する技術とは異なるから,甲3の1発明の吸着ベルト46の吸着機能に加えて,甲5発明に着目し,その第二のノズル43による上方からの噴射機能を更に重畳することは当業者といえども容易に想到し得るということはできない。
したがって,この点に関する原告の主張はいずれも採用することができない。