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プレシオ国際特許事務所のメンバーが気になる判例を紹介します。

プレシオ国際特許事務所セレクト審判決例



平成22年(行ケ)第10137号



1 特許請求の範囲



<本願発明>

絶縁性支持体と複数の配線とを備えるBGA用の半導体素子搭載用フレキシブル基板において,

 半導体素子搭載領域と,該半導体素子搭載領域の外側の樹脂封止用半導体パッケージ領域とを,複数組備え,

 上記配線は銅箔から形成される配線であって,上記絶縁性支持体の半導体素子を搭載する面側のみに1層あり,

 上記配線は,ワイヤボンディング端子と,外部接続端子とを上記絶縁性支持体上に形成される配線の一部とした配線パターンを備え,

 上記外部接続端子は上記配線の上記絶縁性支持体側の面に備えられ,

 上記ワイヤボンディング端子はその反対側の面に備えられ,

 上記外部接続端子の形成される箇所の上記絶縁性支持体に,上記外部接続端子に達する開口部が設けられ,上記開口部の半導体素子を搭載する面側は,上記外部接続端子で覆われており,

 上記開口部形成後,上記ワイヤボンディング端子の表面にニッケル金めっきされてなり,

 上記絶縁性支持体はポリイミドフィルムであって,上記開口部の側壁に上記絶縁性支持体が露出しており,

 上記ワイヤボンディング端子は上記樹脂封止用半導体パッケージ領域に設けられ,

 上記外部接続端子は上記半導体素子搭載領域に設けられ,

 同一の上記配線パターンを有する上記半導体素子搭載領域及び上記半導体パッケージ領域が複数個配列され上記複数個を一括して封止可能なブロックが形成されており,同一の上記ブロックが複数個設けられていることを特徴とするBGA用の半導体素子搭載用フレキシブル基板。

<引用発明>

ガラスエポキシ基板により構成されるベース1に,半導体素子3の搭載される領域と,その外側にSi系ゲル9により被覆される領域を有し,ベース1の半導体素子3を搭載する面側のみに,メタライズ層6からなる複数の配線が設けられ,メタライズ層6はコネクタワイヤボンディング部とアウターリード4に接続する端子とを配線の一部とした配線パターンを備え,コネクタワイヤボンディング部はSi系ゲル9により被覆される領域のメタライズ層6の上面に設けられ,アウターリード4に接続する端子は半導体素子3の搭載領域及びその外側のSi系ゲル9により被覆される領域のメタライズ層6の下面に設けられ,アウターリード4に接続する端子の形成される箇所のベース1にこの端子に達するスルホールが穿設され,スルホールの半導体素子3を搭載する面側がメタライズ層6で覆われているとともに,アウターリード4に接続する端子がベース1の半導体素子3が搭載される面の裏面に露出している半導体素子搭載用基板。





2 一致点・相違点



<一致点>

絶縁性支持体と複数の配線とを備える半導体素子搭載用基板において,

 半導体素子搭載領域と,該半導体素子搭載領域の外側の樹脂封止用半導体パッケージ領域とを,備え,

 上記配線は,上記絶縁性支持体の半導体素子を搭載する面側のみにあり,

 上記配線は,ワイヤボンディング端子と,外部接続端子とを上記絶縁性支持体上に形成される配線の一部とした配線パターンを備え,

 上記外部接続端子は上記配線の上記絶縁性支持体側の面に備えられ,

 上記ワイヤボンディング端子はその反対側の面に備えられ,

 上記外部接続端子の形成される箇所の上記絶縁性支持体に,上記外部接続端子に達する開口部が設けられ,上記開口部の半導体素子を搭載する面側は,上記外部接続端子で覆われており,

 上記ワイヤボンディング端子は上記樹脂封止用半導体パッケージ領域に設けられ,

 上記外部接続端子は上記半導体素子搭載領域に設けられることを特徴とする半導体素子搭載用基板。」である点。

(ア)相違点(キ)

 本件発明6では,1層の銅箔から形成された配線を用いているのに対し,引用刊行物1発明では,めっきや蒸着などにより形成されたメタライズ層を用いている点。

(イ)相違点(ク)

 本件発明6では,絶縁性支持体がポリイミドフィルムで構成され,絶縁性支持体の開口部の側壁に上記絶縁性支持体が露出しているのに対し,引用刊行物1発明では,ベース(絶縁性支持体)がガラスエポキシで構成され,スルホール(開口部)の側壁にベースが露出しているか否かを明記していない点。

(ウ)相違点(ケ)

 本件発明6では,半導体素子搭載領域と樹脂封止用半導体パッケージ領域とを複数組備え,同一の配線パターンを有する上記半導体素子搭載領域及び上記半導体パッケージ領域が複数個配列されているのに対し,引用刊行物1発明では,これらの領域を複数組備え,複数個配列することを明記していない点。

(エ)相違点(コ)

 本件発明6では,半導体素子搭載領域と半導体パッケージ領域の複数個を一括して封止可能なブロックが形成され,同一の上記ブロックが複数個設けられているのに対し,引用刊行物1発明では,このようなブロックの形成がなく,また,複数個設けられていない点。

(オ)相違点(サ)

 本件発明6は,BGA用の基板であるのに対して,引用刊行物1発明は,PGA用の基板である点。

(カ)相違点(シ)

 本件発明6では,開口部形成後,上記ワイヤボンディング端子の表面にニッケル金めっきされるのに対し,引用刊行物1発明では,ワイヤボンディング端子の表面にめっきを施すか否かを明記していない点。





3 当裁判所の判断



 相違点(ク)(絶縁性支持体の構成,開口部側壁への絶縁性支持体の露出)に係る容易想到性の判断の誤り(取消事由3)について

(1)絶縁性支持体の構成

 甲2,3,5ないし9の記載によれば,半導体素子搭載用基板において,絶縁性支持体をポリイミド(フィルム)で構成されるフレキシブル基板とすることは,周知又は公知であったものと認められる。

 他方,引用刊行物1に記載された発明は,半導体素子を搭載するベース(基板)1にアウターリード4(リードピン)を立設した半導体装置(プラグインパッケージ)において,大チップ搭載可能とし,ピン数の増加(多ピン化)を可能とし,配線の引き回しを容易にし,パッケージサイズを小型化するという課題を解決するために,アウターリード4を基板全面に設け,搭載される半導体素子の下部にもアウターリード4が立設された構成とした発明であり,アウターリード4の配置に技術的な特徴を有するものである。そして,引用刊行物1に記載された発明の技術的特徴であるアウターリード4の配置は,その技術的内容に照らして,特定の材質の絶縁性支持体(ベース)と関連性を有するわけではなく,絶縁性支持体(ベース)の材質を問うものではない。

 さらに,引用刊行物1には,「以上の説明では主として本発明者によってなされた発明をプラグインパッケージに適用した例を示したが,他のパッケージなどにも適用できる。」(4頁右上欄18ないし20行)と記載されており,PGA用の基板だけでなく,他の基板に適用できることが記載されているから,引用刊行物1には,そこに記載された発明を,PGA用の基板以外の,はんだボールにより外部と接続するBGA用の基板等に適用することについて示唆があると解することができる。

 したがって,引用刊行物1発明において,絶縁性支持体をポリイミドフィルムで構成することは,容易に想到し得たといえる。

(2)開口部側壁への絶縁性支持体の露出について

 本件発明6は,開口部にはんだボールを配置する前の状態の半導体素子搭載用基板を特定したものであり,開口部の側壁に絶縁性支持体が露出している。

 他方,引用刊行物1発明は,原告主張のようにスルホールの表面にめっき等で導電層が形成されているものと特定することはできず,メタライズ層6とアウターリード4との電気的接続の態様やスルホールの構造は,限定されていないものと解される。そして,引用刊行物1に記載された発明は,半導体素子搭載用基板の発明であるところ,この半導体素子搭載用基板とは,半導体素子の搭載に使うための基板という意味と解され,引用刊行物1の記載に照らしても,半導体素子を直ちに搭載できる状態の基板に限る根拠はなく,製造工程のある時点のものも含まれると解される。そうすると,仮に,引用刊行物1の半導体素子搭載用基板において,最終的にスルホールの側壁に導電層が形成されるとしても,その製造過程においては,スルホールにベースが露出した状態の半導体素子搭載用基板が存在し,それをもって,引用刊行物1に記載された半導体素子搭載用基板の発明ということができる。

 したがって,相違点(ク)のうち,本件発明6では,絶縁性支持体の開口部の側壁に絶縁性支持体が露出しているのに対し,引用刊行物1発明ではスルホールの側壁にベースが露出しているか否かを明記していない点は,実質的な相違点でないということができ,審決は,同旨の結論を採る点において誤りがあるとはいえない。

4 相違点(サ)(BGA用の基板とPGA用の基板の相違)に係る容易想到性の判断の誤り(取消事由4)について

(1)引用刊行物1発明をBGA用の基板に適用することの容易想到性の有無

ア 引用刊行物1発明に使用されているようなピン(アウターリード)を,本件発明6に使用されているようなはんだボールと置き換えることは,以下の優先権基準日前に発行された複数の文献の記載によれば,周知であったものと認められる。

 そして,引用刊行物1には,「他のパッケージにも適用できる」(4頁右上欄20行)と記載されており,引用刊行物1には,そこに記載された発明を,PGA用の基板以外の,はんだボールにより外部と接続するBGA用の基板等に適用することについて示唆があると解することができる。 

イ 原告は,メタライズ層6がアルミニウムであることを前提として,アルミニウムにはんだは付着しないとされていること,特殊なアルミニウム用はんだを使用すると煩雑な処理が必要となり,簡便に小型・高密度の半導体パッケージを製造するとの本件発明6の目的に反することから,引用刊行物1発明において,アウターリード4がメタライズ層6に直接はんだ付けされることはなく,引用刊行物1発明のアウターリード4に代えてはんだボールを使用することには阻害要因があると主張する。

 しかし,引用刊行物1発明のメタライズ層6は,アルミニウムに限定されるものではないから,原告の上記主張の前提及びその前提に基づくその余の主張は,いずれも採用することができない。

ウ そうすると,引用刊行物発明1をBGA用の基板に適用することは,当業者が容易に想到し得たものと認められる。