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プレシオ国際特許事務所のメンバーが気になる判例を紹介します。

プレシオ国際特許事務所セレクト審判決例


平成22年(行ケ)第10266号

 



1 特許請求の範囲



補正発明の要旨(下線部は補正部分)

 懸架構造体(120a,150)であって,

 支持構造体(118)に接続するように構成された第1及び第2の端部(132a,132b)を有する第1の細長い撓み部材(132),並びに支持構造体から隔離すべき構造体(108)に接続するように構成された第1及び第2の端部(130a,130b)を有する第2の細長い撓み部材(130)を有し,

 第2の撓み部材(130)の第1及び第2の端部の中間にある部分(126)が第1の撓み部材(132)の第1及び第2の端部の中間にある部分(126)に相互接続され,

 第1及び第2の撓み部材(132,130)を画定する溝穴(124,122)が,それぞれ両端に応力軽減用のキー溝穴(128)を有し,

 前記第1の細長い撓み部材(132)及び前記第2の細長い撓み部材(130)によりH形状又はX形状が形成され, 前記第1の細長い撓み部材(132)における第1及び第2の端部(132a,132b)が互いに平行ではなく,前記第2の細長い撓み部材(130)における第1及び第2の端部(130a,130b)が互いに平行ではなく,前記第1の細長い撓み部材(132)における第1の端部(132a)と前記第2の細長い撓み部材(130)における第1の端部(130a)が互いに隣接し,前記第1の細長い撓み部材(132)における第2の端部(132b)と前記第2の細長い撓み部材(130)における第2の端部(132b)が互いに隣接することを特徴とする懸架構造体。



2 引用発明(甲1発明)



 加速度を検出する慣性センサに形成され,質量部2eが接合される島状部1eを枠部1gに連結するロ字形薄肉部1cであって,

 枠部1gに連結される右側及び左側アームを有する第1のアーム,及び,島状部1eに連結される右側及び左側アームを有する第2のアームを有し,

 第2のアームの右側及び左側アームの中間にある部分が第1のアームの右側及び左側アームの中間にある部分に相互に連結され,

 第1及び第2のアームを形成する外側スリット11及び内側スリット14とを有し,

 前記第1のアームの右側アームと左側アーム,前記第2のアームの右側アームと左側アーム,及び,連結部17によりH字状が形成され,

 熱応力が枠部1gに作用した際,前記第1のアームの右側及び左側アームが変形して中央部に対して互いに平行ではなく,かつ,前記第2のアームの右側及び左側アームが変形して中央部に対して互いに平行ではなく,前記第1のアームにおける右側アームと前記第2のアームにおける右側アームが互いに近接し,前記第1のアームにおける左側アームと前記第2のアームにおける左側アームが互いに近接する,ロ字形薄肉部1c。



3 本件訂正発明との一致点



 懸架構造体であって,

 支持構造体に接続するように構成された第1及び第2の端部を有する第1の細長い撓み部材,並びに支持構造体から隔離すべき構造体に接続するように構成された第1及び第2の端部を有する第2の細長い撓み部材を有し,

 第2の撓み部材の第1及び第2の端部の中間にある部分が第1の撓み部材の第1及び第2の端部の中間にある部分に相互接続され,

 第1及び第2の撓み部材を画定する溝穴を有し,

 前記第1の細長い撓み部材及び前記第2の細長い撓み部材によりH形状又はX形状が形成され,

 前記第1の細長い撓み部材における第1及び第2の端部が互いに平行ではなく,前記第2の細長い撓み部材における第1及び第2の端部が互いに平行ではなく,前記第1の細長い撓み部材における第1の端部と前記第2の細長い撓み部材における第1の端部が互いに隣接し,前記第1の細長い撓み部材における第2の端部と前記第2の細長い撓み部材における第2の端部が互いに隣接することを特徴とする懸架構造体。



4 本件訂正発明との相違点



 第1及び第2の撓み部材を画定する溝穴に関して,補正発明が「第1及び第2の撓み部材を画定する溝穴が,それぞれ両端に応力軽減用のキー溝穴(128)を有」するのに対し,引用発明の,第1及び第2のアームを形成する外側スリット11及び内側スリット14は,両端にキー溝穴を有していない点。



5 当裁判所の判断



一致点の認定の誤りについて

 原告は,引用刊行物の図9(等価構造図)は,熱応力Fの作用を等価的に示したものであり,具体的に各部がどの程度変形するかを示したものではないから,図9から前記赤丸で示された部分が平行とはいえない程度に変形することを読み取ることはできないと主張する。

 図9の等価構造図に関して,同図Aは歪みが誘起されていない状態,同図Bは歪みが誘起された状態をそれぞれ示している。

 一般に,この類の等価図は,メカニズムや動作の説明のし易さに主眼が置かれている関係上,通常の構造図(上面図,側面図,断面図等)ほど構造が厳密かつ正確に示されていないことが多いと考えられる。

 同図Bは,歪み誘起時に薄肉部1cが弾性変形して応力を吸収することを示しており,原告が主張するように,薄肉部1cの各部位がどの程度変形するかを厳密な意味で示したものではないといえる。

 しかし,同図Bに関して,(中略)少なくとも,熱応力Fにより薄肉部1cが変形すること,および,その程度はともかく第1及び第2のアームがそれぞれ反るように変形することは容易に理解できる。そして,このように変形すれば,変形前に互いに平行であったこれらの両端部が互いに平行でなくなることは容易に見て取ることができる。

 したがって,「互いに平行でなく」という点を一致点として認定した審決に誤りがあるとはいえない。