ファーストフード店から出て僕らの話題は
映画の話から選挙の話へと移りファッションの話、次に会える日の話へと移っていった。
「あや、バイクでちょっとどこかいこっか?!」
「うん!どこ行く?どこ行く?海とか?」
「海かー、よし!近くでいいとこ知ってる!いこ!」
と今度は僕が彼女の手を取り引っ張った。
250ccの僕のバイクの後ろにあやを乗せて走った。
風が気持ちいい。
あやもぼくの腰に手を回し風を感じている。
最初にバイクに乗せたときに見せた恐がり様はもう全くない。
海に着いた僕らは潮の香りとバイクで感じたのと同じような風を受けた。
辺りは陽が落ち始めほんのり暗くなってきた。
夕空が僕らを歓迎しているようだった。
海には夕日が映り、小さく波打っていた。
少し歩いてベンチに座った。
僕は彼女の唇にそっとくちづけた。
彼女は握っていた僕の手をぎゅっと強く握った。
「けんいちぃーそういや手出すの早かったよねー」
「え?!そ、そう?そういやちょっと早かったかな…」
「最初はびっくりしたもん」
「覚えてる?はじめてちゅぅした時のこと」
そうあれははじめて大学の外で会って映画を見に行った日だった。
帰る時になって僕はバイクで送ろうか?と提案したのだった。
「ほんと?嬉しいーでもバイクの後ろ乗れるかな?恐くない?」
と言った彼女のかわいさが僕は恐かった。
彼女が僕の人格を飲み込んでしまうのが。
しかしそのときだったかもしれない、あやを好きだと確信したのは。
あやと付き合いたいと思ったのも抱きしめたいと思ったのもこの時だった。
きゃーきゃー恐がってたあやを僕はうるさいなとも思わなくて
むしろ楽しかったのだった、後ろで騒いでいるあやと風を浴びることが。
あやの部屋のマンションの前に到着した頃には後ろの騒がしかった彼女も静かになっていた。
バイクから降りた彼女は少し疲れていたようだった。
僕がバイクから降りる時に彼女は「バイク楽しいねー!気持ちいいねー」と言った。
その瞬間彼女はフラッとよろけた、僕は彼女の体を支えた。
そしてそのまま僕はあやを抱きしめた。
抱きしめられたあやは「よろけちゃった…」と言った。
そのまま僕は彼女にキスをした。
僕はキスしてやろうとか思っていたわけでは決してなかった。
よろけたあやを愛しく感じた。
あやを愛しいと思う事を伝えるのにはキスしか思いつかなかった。
いや思いついたというよりは体が勝手に動いたと言うべきか。
彼女の白い肌はピンク色になった。
あのアイルランド考察の講義ではじめて顔を合わした時よりもはるかに赤くなっていた。
僕も少し照れながらピンク色になったあやと少し見つめあった。
人通りもあるのですぐに離れたが
その見つめあった時に二人の心は通じ合った感じがした。
少し沈黙が流れたがすぐに話をした。
「バイク、気持ちいいでしょ?」
「最初は恐かったけど、すごい気持ちいいねー」とか。
「バイクに酔った?」と聞くとあやは
「ううん、けんいちぃに酔ったぁ!」と言った
この時はじめてあやはぼくのことを【けんいちぃ】と呼んだ。
「あはは、うまいこと言うねぇ」
「えへへへへ」
かわいい、あやの魅力は僕の人格を変える。
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