先ほども少し触れましたが、テレビがテレビである所以は、
映像を流しているところにあります。新聞・雑誌は活字と写真。
ラジオは音。テレビはというと、映像、音はもちろん、
テロップなどで活字も使えます。
映像を駆使し、もっとも立体的に物事を伝えることができ、
もっとも動きを伝えることができるのがテレビの強み。
これは非常に大事なことで、言いかえれば、視聴者も
そうした映像を見ることに慣れ親しんでいる、
もしくは楽しみにして番組を見ていることになります。
例えるならば、マンガと小説。
大好きな作家の小説を読む場合、表現力に備わった個性を楽しんだり、
主人公の外見・心境などを空想しながら読むことに
何ら抵抗はありませんよね?しかし、マンガではそうはいきません。
ストーリーもさることながら、重要なのは登場人物のキャラクターや
主人公のビジュアル、全体のタッチ、描写です。
殴り書きしたような絵であれば、恐らく、多くのかたが読む気にはならないでしょう。
テレビにとって映像とは、マンガでいう絵と同じ。
ビジュアルは重要な役割を果たしているのです。
そして、良い映像を流すために重要になってくるのが、「動き」です。
最新型のジェットコースターをテレビで取り上げると仮定して、考えてみてください。
1.プラットホームに停車しているジェットコースターと乗客の映像
2.猛スピードで走っているジェットコースターと乗客の映像
3.車載カメラを設置して、猛スピードで走っている
ジェットコースターを乗客の反応とともに紹介する映像
どの映像が、より迫力があり、臨場感が伝わってくるのか、想像できるかと思います。
1.の映像であれば、写真一枚で十分。
つまり、雑誌や新聞のテリトリーです。テレビであるからには、
テレビの強みを活かさなければ、意味がありません。
それは、なんといって映像です。動きを伝えることができる点が、
生命線であり、最大の強み=武器です。
ジェットコースターの最大の特徴は、迫力のスピードとスリル感。
テレビでは、ジェットコースターの迫力あるスピードを
客観的に伝えることができる2.が、最低限の撮影すべき
映像であると言っていいでしょう。
加えて、乗ったときのスリル感を伝えることができる3.なら、
臨場感に満ちた映像になります。乗客のリアルタイムでの
反応=主観映像を伴うことで、視聴者は、
より身近にスピード感と迫力を疑似体験することができるからです。
テレビマンは、知恵を絞って、様々な演出手段を用意し、
動き・変化のある映像を撮って放送します。
動きのある映像を流すことができなければ、
テレビの価値は損なわれてしまうからです。
テレビである限り、動きのある映像を流さなければ、意味がないのです。
このような事情から、テレビは「動き」のないものは取り上げることが、
難しいメディアであるとも言いかえられます。
最近、その存在が無視できなくなったインターネット関連やIT関連の話題がいい例です。
伝えるべき内容が、面白く画期的なものであっても、
撮影し、放送する映像は「パソコン画面」。
感覚でわかると思いますが、パソコン画面だけが、2分、3分と、
延々と流れる映像なんて、面白いはずがありません。
考えただけでもうんざりしますよね。動きを感じ取ることが難しい
「パソコン画面」の映像を、番組で紹介しても、視聴者は飽きてしまうでしょう。
ですから、いくら社会的存在が大きくなっても、内容が画期的で面白くても、
IT関連の話題は、テレビ番組から敬遠されがちなのです。
映像の中身(被写体)は、常に変化するものか、
様々な角度・場面が撮れるもの。テレビでは、動きがあってインパクトの
ある映像を撮れるものが好まれる、ということを覚えておいてください。
これが、テレビ業界でよく使われる「画が大事」という言葉の意味です。