米国は,昨年来ベネズエラのマドゥロ政権を「麻薬テロ組織そのものだ」と非難し,ベネズエラ沖の「麻薬運搬船」を度々軍事攻撃してきたが,トランプ米大統領は3日,米国がベネズエラの首都カラカスなどにある軍事基地や関連施設に突如として大規模な軍事攻撃を行い,マドゥロ大統領とその妻を自宅で拘束して,米国に連行したとの声明をSNSで発表した。
在米日本人ジャーナリストは,「兆候はあったものの,アメリカ議会の承認すら得ていないトランプ大統領の突然のベネズエラへの大規模軍事攻撃には驚いている。アメリカ検察当局によれば,マドゥロ大統領は,軍幹部や政府高官らで構成される『太陽のカルテル』という麻薬組織のリーダーであり,この組織はコロンビアのゲリラ指導者から数百万ドルに上る賄賂を受け取り,その見返りとして大量の麻薬をゲリラ側に流していたとのこと。そして,ゲリラ側はコロンビア政府と戦う資金獲得のため,その麻薬をベネズエラ経由でアメリカや欧州諸国に大量に密輸していたとのことである。このため,アメリカ・ニューヨーク州の連邦裁判所が,マドゥロ大統領を麻薬の密輸やテロリストとの共謀の罪などで裁く予定で,詳細は今後の裁判や報道などで徐々に明らかになっていくだろう。一方,トランプ大統領は,西半球でのアメリカの影響力強化を視野に,世界一の埋蔵量であるベネズエラの石油の確保や中南米での中国の影響力の排除も視野に入れての大規模軍事攻撃だったとの見方も有力だ。今回のマドゥロ大統領の拘束で,CIAの情報収集能力や特殊部隊デルタフォースの高度な任務遂行能力が内外に示されたことで,アメリカに対してこれまで以上に大きな脅威を抱いた国々も多いことだろう。マドゥロ大統領拘束後,大統領代行の職務を遂行することになったロドリゲス副大統領は当初,米国を『残虐な武力使用』と非難していたが,アメリカからの強い圧力に屈したのか,政治的駆け引きなのか,4日にはアメリカとの協力関係を構築する姿勢に転換しており,今後ベネズエラは,アメリカの監視の下,ロドリゲス副大統領を中心とした政権によって統治される見通しとなっている。しかし,一連のアメリカによる軍事攻撃に対しては,国連憲章や国際法に違反するとして,世界中から厳しい批判の声が上がっており,国連安全保障理事会が5日に急遽緊急会合を開くとのことである」と,米国による新年早々のベネズエラへの大規模軍事攻撃でのマドゥロ大統領の拘束に驚愕する。
国連のグテーレス事務総長の報道官は3日の声明で,米軍の行動は「危険な前例」になると指摘し,「事務総長は,国連憲章を含む国際法を全ての人が完全に尊重することの重要性を強調し続けている。事務総長は,国際法のルールが尊重されていないことを深く憂慮している」と述べた。
また,ベネズエラのモンカダ国連大使は,安保理への文書で「国民が自由に選んだ共和制政府を破壊し,世界最大の石油埋蔵量を含む天然資源の略奪を許す傀儡政権を押し付けることを目的とした植民地戦争である」と表明。米国は国連憲章に違反していると指摘している。
「力による現状変更は許さない」という規範は,今の国際社会においては美辞麗句に過ぎなかったようだ。