ドナルド・トランプ米大統領は4月1日午後(日本時間2日午前),国民に向けてイラン情勢について演説し,「我々は全てを成し遂げた。イランは海軍も空軍も壊滅した。ミサイルはほぼ使い果たされたか,あるいは無力化された。これらの行動によりイランの軍事力は弱体化し,テロ組織への支援能力は粉砕され,核兵器製造能力も失われるだろう。我が軍は素晴らしい働きをしている」などと,戦争の終結が近いことを強調する一方,「今後2,3週間で彼らに極めて激しい打撃を与え,イランを石器時代へと逆戻りさせるつもりだ」などと軍事攻撃の激化・拡大を明言した。

在米日本人ジャーナリストは,「ゴールデンタイムでのトランプ大統領のイラン情勢を巡る演説は世界中から注目されていた。トランプ氏の想定外に,同盟国からはイランへの軍事行動に対して一定の距離を置かれ,ホルムズ海峡の事実上の封鎖により,アメリカでもガソリン価格が高騰し,物価高に追い打ちをかけるように国民の生活をさらに圧迫することとなった。このため,CNNの世論調査によると,トランプ氏の経済運営に対する支持率は31%で,トランプ氏の政治キャリアにおける最低記録を更新した。この状況に中間選挙を控えたトランプ氏は危機感を持ったのだろう。国民に『ガソリン価格の上昇は短期的なものだ』と安心感を与えるための今回の演説であったように思われるが,その内容は曖昧で自画自賛な点が散見され,具体的なイラン戦争の『終結』に向けた出口戦略は全く見えてこなかった。今,アメリカはパキスタンを仲介して,イランとの合意に向けた『交渉』の働きかけをしているが,トランプ氏の『合意しなければ,発電所を攻撃する』『イランを石器時代へと逆戻りさせる』などの発信は,『交渉』というよりはむしろ『脅迫』『恫喝』『挑発』のようなもので,とても『外交』とはいえないだろう。トランプ氏は,一方的な『勝利』『終結』宣言をすることで,撤退する可能性も示唆しているが,ホルムズ海峡が封鎖されたままでの無責任な『勝利』『終結』宣言はあり得ないのではないか」とコメントする。

 一方,イランのペゼシュキアン大統領が1日(現地時間),アメリカ人を対象にした公開書簡の中で,交渉を通した休戦と終戦の可能性を念頭に置きながら,「対立の道を進み続けることはいつよりも代償が大きく無意味だ」とし,戦争終結の意志を示唆し,「イラン人は米国,欧州,そして隣国を含む他国に対していかなる敵愾心も抱いていない」などと主張。そして,「制裁と戦争,そして侵略がイラン人の生活に及ぼす破壊的で非人道的な影響を過小評価してはいけない」とし「最近の空襲は人々の生活と態度,観点に深刻な影響を及ぼす」と指摘した。書簡ではアメリカによる軍事攻撃を批判し,その責任を指摘しながらも,冷静に経緯などを分析し,低劣な非難は自制していた。ただ,イランの新たな最高指導者モジタバ師とイランのイスラム革命防衛隊軍部が事前に書簡の内容を調整したかどうかは確認されていない

なお,イラン軍は2日、米国とイスラエルに対し「壊滅的な」攻撃を実施すると表明した。今回のトランプ大統領の演説を聴く限り,先行きの不透明さが増すばかりで,「終結」が遠のいてしまったように思える。