「脱原発」飯田哲也さん・できるぞ!エネルギーシフト  | Imagine - Empty Boat

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できるぞ!エネルギーシフト 

自然エネルギー革命の時代へ
 NPO法人環境エネルギー政策研究所所長・飯田哲也さん

2010年7月22日下北沢らぷらすで、

「ワールドカフェとトーク 『できるぞ! エネルギーシフト!!

飯田さんと話そう』」が開催された。

ふろむあ~すcafeOHANA、エネルギーシフトを考えるデータバンク、

トランジションタウン世田谷、Bee’sCafeの4団体共催イベント。

ここでの飯田哲也さん(NPO法人環境エネルギー政策研究所所長)の講演を載録。





プロフィール▼いいだ・てつなり
1959年山口県生まれ。

NPO法人環境エネルギー政策研究所所長、(株)日本総合研究所主任研究員、ルンド大学(スウェーデン)客員研究員。

京都大学工 学部原子核工学科、東京大学大学院先端科学技術研究センター博士課程単位取得満期退学。

中央環境審議会、総合資源エネルギー調査会などを歴任。

主著に『北 欧のエネルギーデモクラシー』(新評論)、共著に『自然エネルギー市場』(築地書館)など。

 

みなさんこんにちは。昨日祝島のおばちゃんたちにお話しさせていただきました。
 今日はその資料を元にしてお話させていただきます。


<加速する地球温暖化>

みなさんご存知のとおり、地球温暖化は大変重要な問題です。
今日もすごく暑くて西日本では豪雨の被害が出ていますね。
今年4月、5月は131年の観測史上最も暑かった。

21世紀最初の10年の平均気温も観測史上最高、

そして今年の夏の北極の氷は一番小さくなるだろうと言われています。

 

気候変動をはじめとする天然災害による被害は世界中で急増していますし、

グリーンランドの氷床は急速に融解しており、海面上昇を加速させると懸念されています。

 IPCCの3年前のレポートでは、100年後に40㎝から70㎝海面上昇するとしていましたが、

昨年これを2mに上方修正しました。

アル・ゴアなどは4mから6mと警告しています。

 

しかし、この問題はCO2の増減だけの問題ではなく、より根本的にはエネルギーの作り方と使い方の問題です。
20世紀文明を支えてきた石油の産出は、明らかにピークを迎えています。
最近メキシコ湾沖の海底油田掘削現場から70万キロリットルの原油が漏れて大きな問題となりましたが、

今後の油田開発にも深刻な影響をもたらすでしょう。

石油が逼迫してくれば、ブッシュ政権が起こしたイラク戦争のようなきな臭いことにもなりかねません。


<差し迫ったピークオイル>

なぜか日本のエネルギー政策ではまったく対応がとられていないピークオイルですが、

各国の政府は徐々に対応を検討し始めています。
 

世界の地質学者は、Easy Oil(安い石油)はそう遠からずピークを迎えるだろうと指摘しています。
 

そうなれば原油は増産どころか減産の時代に入るわけで、

右肩上がりの需要とのギャップをどう埋めていくのかが大問題です。

その意味で昨年ドイツ銀行が出したレポートは興味深いですね。 

100年前世界の工業及び商業用の油はクジラから採っていました。

しかし乱獲によって1800年代の半ばに鯨油の生産はピークを迎えます。

その際価格は乱高下を繰り返しましたが、20年後の1870年前後から石油が当時の新しいテクノロジー、

代替エネルギーとして使用されるようになった。
ドイツ銀行は、まさに今石油生産が直面している問題は、当時の鯨油と同じだと指摘しているのです。

さらに深刻なことは、世界人口65億人のうち15億人の人たちは、

未だに今日明日に必要なエネルギーにもアクセスできない状況に置かれていることです。
こうしたなかで地球温暖化問題と共にエネルギー問題を解決することは極めて重大な意味をもっています。


<温暖化劣等生の日本>

ところが日本の経済界の人たち、とりわけ経産省や経団連、電事連の人たちのなかには

「3つの『逆恨み』と3つの『神話』」が根強くあります。

「CO2削減率について1990年を基準としたのはEUの陰謀だ」、

「京都議定書は日本に不利」、さらに「日本の25%削減は突出している」。

これらはみな、根拠のない逆恨みです。

同時に過剰な思い入れによる「神話」にもしがみついています。
「日本は省エネ先進国」というのもその一つですが、これは真っ赤な嘘です。
なぜ日本が省エネ先進国に見えるかと言えば、家庭部門のエネルギー消費が全体の5%にとどまるからです。
ヨーロッパは40%。なぜこんなにも差があるのか?

1世帯当たりの電力消費量は、日欧ともほぼ同じレベルですが、

ヨーロッパの住宅は断熱効果が高いので、ボイラーなどにより全室暖房を行います。

日本の住宅は断熱がきちんとされていないので、ドテラを着て家族で炬燵にあたる。
日本は省エネではなく、貧エネなんですね。

もう一つは交通部門です。
車社会のアメリカではこれが40%も占めていますが、

日本は東京、大阪、名古屋などの大都市圏の公共交通が超密に整備されているため、

この部門でのエネルギー消費も比較的少ない。
家庭部門の異常な低さと交通部門の低さにより、全体の半分を占める産業部門を補っているわけです。

ですから家庭、交通、商業部門を引いて産業部門だけで比較すると、

一人当り、あるいはGDP当りのエネルギー消費量は、ヨーロッパやアメリカよりも大きい。
どちらかと言えば、未だに重化学工業に依存した20世紀半ばの産業構造を引きずっているわけです。


<経済と環境は両立可能>

 「日本は環境先進国」も明らかに嘘ですね。

自然エネルギー開発は全然進んでおらず、環境分野では「負け組」に入りつつあります。

つまり「3つの『逆恨み』と3つの『神話』」に拘泥している限り、日本の温暖化対策は遅々として進まないのです。

ところが、「温暖化対策は経済を失速させる」との批判もすぐに出てくる。

経済成長ばかりを追い求めるのがいいのか悪いのかはちょっと置いておくとして、

1990年から2007年における各国の経済成長とCO2削減をマッピングした図を見てください。


 

スウェーデン、デンマーク、ドイツ、イギリスはCO2を大幅に削減しつつGDPも伸ばしています。

アメリカは金融などを含めて経済は伸ばしていますが、

CO2も大量に出し続けていますからある意味で当たり前ですね。

これらと比較すると、日本はCO2を増やしながらも、それほど経済成長していないの が分かります。

 

なぜこんな差が生まれたのか。

①環境税を導入しているかどうか、

②CO2の総量削減の仕組みをもっているかどうか、

③自然エネルギーを増やす政策を採用しているかどうかの3点で検証すると、

日本とアメリカはすべて×。

②はEU全体で取り組んでいるので、フランスは①、③は×ですが、日本よりは CO2を削減している。

すべて○のスウェーデン、デンマーク、ドイツ、あるいは③のみ△のイギリスでは、

経済政策のなかに環境政策がきちんと組み込まれて いて、CO2を削減しながら経済成長しているわけですね。

何もやっていない日本は、今や環境でも経済でも劣等生になっているのです。

 

しかし未だにCO2排出量増は「家庭と業務の伸びが問題」と責任転換している。

電気をつくる電力会社の側でCO2排出量をカウントするのではなく、

電気を消費する各家庭でカウントしているからこんな言い訳がまかり通るのです。

 

2007年に日本は、京都議定書の目標値から9・2%もCO2排出量が増えました。

その内の90%は電力会社の責任です。

家庭や商業も増えてはいますが、それは予定の範囲内でしたので、

目標値が守れなかった最大の責任は電力会社にあります。


<電力は最大のCO2排出源>

なぜこんなことになったのか? 1990年から2000年代まで、

コストの安い石炭火力発電がひたすら伸び続けたためです。

政府は原発によって石炭火力から出るCO2排出分を相殺しようと考えていた。

ところが地震や不祥事などによって原発の稼働率はどんどん下がってきました。

その分を埋めるために さらに石炭火力を増やすという悪循環に陥ったのです。

 

特に柏崎刈羽原発の稼働停止によって、原子力の「4つの『神話』」が崩れました。

2007年7月に新潟県中越沖地震が起きましたね。

その前の週、 京都議定書の目標を達成するために経産省と環境省が合同で中央環境審議会を開催しました。

私はそこで、「温暖化対策で原発に依存するのは止めるべき」と発言。

しかし私の隣に座っていた東電の勝俣社長は「原発しか答えはない」と断言しました。

皮肉なことにその1週間後、柏崎刈羽原発7基はすべて止まってしまった。

 

ところがこの審議会は摩訶不思議でした。

現に地震が起きて原発が止まっているのに、それは無かったことにして計画が作られていく。

私は何度も「原発停止を織り込んだ計画を作るべきだ」と提言しましたが、

座長には聞き入れてもらえませんでした。

 

東電はその年、4000億円の利益を見込んでいましたが、蓋を開けてみたら4000億円の赤字。

原発が止まったため原油高騰にも関わらず石油火力を動かし、他の電力会社からは電気を買い、

さらに原発補修費がかかった。

おまけに火力によって増えたCO2分のクレジットを海外から購入しており、

別途600億円から700億円支出しているはずです。

「原発は安くて儲かる」との神話は崩壊しました。

 

さらに「安定供給に役立つ」との神話も地震によって打ち砕かれました。

映画『ミツバチの羽音と地球の回転』に登場するスウェーデン政府のエネルギー庁長官は、

「スウェーデン政府は原子力を風力と同じ不安定電源として認定した」と語っていました。

なぜなら原発は、いつ止まるか分からないし、一度止 まったらいつ動かせるかも分からないからです。


 「原発はCO2削減に効果的だ」との神話も成立しません。

規模が余りに巨大であるがゆえに、停止の際のバックアップとして化石燃料を用意しなければいけません。

止まったらあっと言う間にCO2が増えてしまう。

 

ただでさえ手垢のついていた「安全神話」もまた、

耐震基準すらいい加減だったことが判明して完全に崩壊しました。


<原発建設ラッシュは過去の話>

こうした現実にも関わらず、日本では御用学者や御用マスコミによって

「原発は1箇所で100万キロワット以上の発電が可能なのに、

自然エネルギーは微々たるもの」との言説が流布されています。

しかし、「原発こそ本当に実現可能なのか?」と問うべき時代なのです。


 『ジャーマンウオッチ』のデータによれば、原子力は1970年代から80年代にかけて

アメリカ、日本、ヨーロッパが建設ラッシュに入りましたが、 その後低迷の時代を迎え、

現在は年間2~3機程度しかつくられていません。

このペースが続けば、世界の総発電容量は急速に減少していきます。

もし現在の容量を維持していこうとするなら、ものすごい建設ピークを迎えなければいけませんが、

先進国ではとてもできそうにありません。せいぜい中国やインドでしょ う。

 

日本でも、40年で廃炉にすると、原発の総設備量が今年以降、急速に減っていくことが分かります。

寿命を40年以上にすると、いつどこでどんな事 故が起きるか分からない「チキンレース」となります。

浜岡1号炉は耐震基準のバックチェック(事後適用)で継続を断念しましたが、

美浜1号機は40年を超 えてチキンレースに突入しましたね。


 これと全く対照的に、世界全体で毎年風力、太陽光は倍々ゲームで増えています。

風力は昨年3800万キロワット、原発38機分増えました。

太陽光 は1000万キロワット、原発10機分です。

自然エネルギーが幾何級数的に増加するのに対して、原子力は昨年、正味で減少しています。

昨年、ドイツの環境 大臣(当時)は、

「再生可能エネルギーを増やすためには原発から撤退しなければいけない」と述べましたが、

この傾向はますます強まっていくでしょう。



<オルキルオト原発の悪夢>

フィンランドのオルキルオト原発3号機の建設では、深刻な事態も起きています。

この建設を巡っては2005年にフィンランド国内を二分する激しい議論が行われ、

わずか1~2票差で建設が決まった。

当初32億ユーロ、当時のレート約4000億円でフランスのアリバ、ドイツのジーメンスと契約し、

この固定価格で2010年完成する予定でした。

ところが次々に追加費用がかさみ、昨年ジーメンスは逃亡。このままいけば、

利子を含めて1兆5000億円前後に まで建設費が膨らむと予想されています。

 

このためアリバは今や倒産寸前で、今年初めに一番の儲け頭である送電部門を売却、

さらに三菱重工が増資してなんとかもっている状態です。

現在は2014年完成予定ですが、毎年「後40ヵ月で完成する」と言いながらズルズルと遅延しています。

遅れれば遅れるほどペナルティを払う必要がありますから、本当に無残な状況です。

 

今完成したとしても、初期投資分だけで1キロワット/時当たり140円と太陽光の4倍近く。

実際にはこれに燃料費や維持・管理費が加わるので、とてつもなく高価な電気を生み出す原発になるわけです。


<もう誰も原発には投資しない>

こうしたことで原子力産業は金融界からの投資を得られなくなっています。

シティバンクは「原子力は余りにリスクがありすぎる」と判断。

投資しても回収できないかもしれないと考えているわけです。

 

ブッシュ政権時に初期投資の80%補助を決めても結局1基もできなかった理由は、

残り20%のお金を出す人が誰もいなかったからです。

共和党に自らの温暖化対策を受け容れてもらうための取引として、

オバマ政権は原発2機分に限って残り20%分についても国が信用保証するとサインしましたが、

国が全額保証しないと銀行や投資家は原発にお金を投資しない時代なのです。


スタンフォード大学のヤコブソン教授は、

「仮に原子力に他の問題がないとしても温暖化対策にはとても間に合わない」と述べています。

 また昨年11 月『ファイナンシャル・タイムズ』は「ピークウラン」と題した記事を掲載、

 石油だけでなくウランも早ければ2013年位にピークを迎える可能性があると指摘。

「そうなると日本はフランスに次いで最も電力供給が脆弱な国になる」

「日本はロウソクを用意しておいたほうがいい」とまで書いています。

 

世界銀行でさえ「原発は短期的CO2削減効果が限られている」と判断していますし、

コロラド州のロッキーマウンテン研究所代表のエイモリー・ロビ ンスは、

「原子力は競争力があり必要で信頼でき安全で安いというのはすべて幻想だ」と端的に指摘しています。

投資家が見向きもしないのは当然なのです。


<自然エネルギー100%は可能>

こうした原発の凋落を尻目に爆発的に普及しているのが自然エネルギーです。

全世界に降り注いでいる太陽エネルギーだけで、

現在の文明が利用しているエネルギーの1万倍もの量なのです。

そのうち工学的に利用可能なものは、ドイツの大統領諮問委員会のデータによれば3000倍分はある。

風力で200 倍、バイオマスでは20倍です。

残された課題は、いつまでにどうやって実現するかです。

 

単純計算では、日本の土地面積の5%を太陽光に利用すれば日本全国のエネルギーを賄えます。

東京大学と東京電力の共同研究では、千葉銚子沖洋上に 風力発電を並べれば、

日本の電力の95%を賄えるとの試算が出ました。

東電はこれはまずいと思ったのか、設置場所をかなり狭くして再計算をさせたのですが、

それでも東電管内の32%の電力を賄えるとの結果が出た。

つまり日本の電力の15%は千葉銚子沖の風力発電だけでカバーできるわけです。

今年春、環境 省が再生可能エネルギーのポテンシャル調査を行いましたが、

北海道の風力発電だけで日本の電力を賄えるポテンシャルがあると発表しています。

 

こうした動きを先導しているのはヨーロッパです。

過去8年間の電力シフトを見ると、天然ガス、風力、太陽光の順にシフトが進み、

原子力、石炭、石油は削減しています。

昨年だけですと、風力発電がトップ、太陽光は2番目の天然ガスを追い抜く勢いで増えています。

 

ヨーロッパの人々にとっても、これだけの普及は予想外でした。しかしこの成果を受けて、

2050年までに自然エネルギー100%を達成できるとするシナリオがこの3カ月の間に立て続けに5本も出ました。


欧州気候フォーラム(ECF)、ポツダム気候研究所、コンサルティング会社、

さらにオーストリアのどちらかと言えば保守的なエネルギー研究所など が共同してまとめたレポートでも、

ヨーロッパ全体の電力を2050年までに自然エネルギーだけでカバー可能。

ドイツ政府の環境諮問委員会(SRU)やドイ ツ連邦環境庁(UAB)も同様なシナリオを出しています。

また、欧州再生可能エネルギー協会(EREC)では、

欧州のエネルギーすべてを2050年までに 再生可能エネルギーによって賄えるとのシナリオを発表しています。


<自然エネルギーがもたらす恩恵>

太陽光発電は、日本では一時減少しましたが、

昨年余剰太陽光発電買い取り制度と補助金が始まったので2・5倍に増え、昨年は60万キロワット増加しました。

これは悪いことではありませんが、ドイツは昨年380万キロワット、原発約4機分増えています。

 

なぜこんなにも大きな差が生まれるのか?

 ドイツでは自然エネルギーによる「7重の配当」が実現しているからです。

2008年で見ると、①今や自 然エネルギーは電力供給の主力(16%)となり、

②これは自給率の向上と化石燃料費用の節約をもたらし、③CO2を1・2億トン削減しています。

京都議定書におけるドイツの削減目標は日本よりもはるかに厳しい21%で、すでに達成していますが、

そのうちの半分は自然エネルギーによって実現しています。

 

さらに④経済産業効果5兆円でGDP成長率は2%を達成、

⑤雇用効果は石炭・原子力を合わせた7万人の4倍、27万人に上り、

さらに⑥自然エネルギーの便益を地域に還元する仕組みが整っているので地域の活性化につながり、

⑦自然エネルギーへの投資が増えることでお金のグリーン化が進んでいます。

自然エネルギー銀行には、5%複利、元本保証で20年後に2・5倍になって戻ってくるものもあります。

グリーン投資が増えないわけがありませんね。

 

世界でも、自然エネルギーへの投資が2004年から毎年60%も増え続け、

リーマンショック後の2008年以降でも毎年30%増、昨年は15兆円 が投資されました。

毎年30%ずつ今後9年間伸び続ければ、2020年に100兆円を超える可能性は十分あります。

10年前にはほとんどゼロに近かった産業が、わずか20年で世界の一大産業になろうとしているわけです。

 

この大変化のなかで日本はわずか1%ぐらいを占めるだけです。

世界の動きに逆行している日本の自然エネルギー世界シェアは、どんどん縮小する一方です。


<サハラ砂漠でヨーロッパ全域の電力を>

これは世界のトップ企業の株式時価総額でも一目瞭然です。

自然エネルギーでは1兆円を超える企業が4社、1800億円以上は8社登場します。

これは各国に生まれていますが、日本の企業は1社もありません。

これら自然エネルギー企業は誕生してわずか10年ぐらいのベンチャー企業ですが、

トヨタ自動車や東京電力など日本の老舗企業を超える勢いです。


 

まさに100年前、T型フォードの1号機が世に送り出されたのと同じ大転換の時代を迎えているわけです。

問題はこうした歴史的大転換の時代に、日本の姿はかけらも見えないことです。

昨年、国際自然可能エネルギー機関(IRENA)が発足しましたが、これも新しい時代のエポックです。

 

最近ヨーロッパで特に注目されているのは、集中太陽熱発電です。

サハラ砂漠で鏡を使って太陽光を集めて発電する仕組みですが、

わずか2~3年で柏崎刈羽原発7機分に相当する数百万キロワットの発電施設を建設することが可能です。

柏崎刈羽原発はすべて建設を終えるまで30年以上かかりましたから、比較にならないスピードですね。

 

並行して北海や地中海を高圧直流送電線(HVDC)で橋渡し、

ヨーロッパ全域にスーパーグリッドを張り巡らせる計画が進んでいます。

少し前までは空想のような話だったことが、どんどん現実化していて、

既に洋上風力発電基地を設置する海洋の区割りまで進んでいます。

 

サハラ砂漠の1%、10キロ四方に集中太陽熱発電を建設すれば、

ヨーロッパ全域の電力を賄えると言われており、

ドイツ・ミュンヘンに本拠のある企 業共同体デザーテックが本格的にこの事業に乗り出しています。

これにはドイツ銀行、ジーメンスなども参加して40兆円もの投資を呼びかけています。



<地域からエネルギーシフトの波を>

自然エネルギーは普及すればするほど安くなります。

現在の日本の全量買取制度は余剰分しか売れない極めて不十分なものですが、

ドイツなどのように売電して儲かるような仕組みを導入すれば、さらに爆発的に普及するでしょう。

そして自然エネルギーを導入すればするほど、化石燃料の使用は減りますから、

電力価格は安くなっていくはずです。

 

現在日本では風力発電を巡って低周波問題などが起きていますが、

国土のいたるところに風車が存在するデンマークでは、こうした問題はほとんど起き ていません。

地域の合意を踏まえてきちんとゾーニング(土地利用区分)した上で建設され、

かつその利益が地域に還元されているからです。

 

自然エネルギーは小規模分散型ですから、これが普及するということは、

私たちの身の回りのいたるところに自然エネルギー発電施設が登場することを意味します。

ですから普及に向けてはきちんとした合意のために、予防的なルールと地域オーナーシップが不可欠です。

 

その点で、デンマーク・サムソ島の事例は象徴的です。

この島ではすべて島民出資により自然エネルギー100%の島を目指し、10年間で実現しました。

ラムサール条約に登録されている鳥の楽園もある島ですが、上手に共存して、風力発電を導入しています。

また、ワラや太陽熱を利用したバイオマスボイ ラーなどで、

電力だけでなく温熱の自然エネルギー化も進めました。

島民は、風車が1回転するたびに「100円儲かった」と喜ぶことはあれ、反対する人はい ません。

 

こうした地域オーナーシップを確立するためには、地域エネルギー事務所のような仕組みを作り、

それを中心にして自然エネルギーを普及させていくこ とが効果的です。

小規模分散型の自然エネルギー導入には、やはり地域から変えていくことが必要です。

ぜひみなさんと一緒に今後も取り組んでいきたいと思い ます。


 環境エネルギー政策研究所
  HP http://www.isep.or.jp/

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