居酒屋で、狭い卓を4人で囲む。
古坂とトモコ、川西君と私が並ぶ。
「お久しぶり!」
にこやかに現れた私を見て、川西君は
明らかにホッとした表情。
見えないように腕をつかんだり、
足を寄せてきたり。
刺身のしょうゆを取り寄せたり、
オーダーを取ったりと優しさは相変わらずだ。

ビール、ハイボールをじゃんじゃん飲んで、
仕事の話や、少しつやっぽい話題も遠慮なく、
中年たちの飲み会は盛り上がる。
1時間半で、予定通り川西君は立ち上がる。
また会おうね、と2人の前で約束も交わした。
古坂もトモコも、我々のやり直しを祝福していた、
そんな気はしたのだが。

3人で飲みだすと、古坂が饒舌に。
趣味だという絵画鑑賞の話になり、
印象派は好きなのでそんな話もしていると、
興味のなさそうなトモコは別の話を
しようとする。
あっちこっちに飛ぶ話をなんとか
結び付けたり、放流したり、また呼び戻したりと
話題をつなぐ。
そのうち、スマホを見たトモコが立ち上がる。
「ちょっと用事ができたから帰るね!」
あっけにとられる古坂と私。
後で聞けば、やりとりを続けていた新しい男が、
急に会いたいと言ってきたらしい。

彼女を見送り、古坂と私は残った酒を飲み干し、
彼の紆余曲折の生い立ちを聞いてあげて、
さあ、帰ろうと思ったら。

「トモコちゃん、こんな早く帰るとはなあ」
「ごめんね、言い出しっぺがこんなで」
「川西君とも後で合流したいしなあ」
「そうなの?」
「それに、もうちょっと話したいので、
別のとこ行かない?」
そんなふうに言われると、うなづくしかなかった。
モスコミュールが遠のくのが残念だった。

古坂はコンビニに入り、ビールを買った。
あれ? どこで飲むんだ?
一瞬、外で飲むのはいやだな、と思った自分、
まだまだだなあと反省する。
これはラブホに引っ張り込まれるやつじゃないか。
飲み友達の彼女(セフレ?)を、
飲み友達と合流する前に誘うわけない、
こんな真面目そうな男が、と思い込んでいた。
やっぱり男なんだな。男の性欲をなめたらいかん。

ただ、そうと決まれば私も腹をくくる。
この快楽の旅人ゆきこが、誘いを断るわけにはいかない。

そっと握ってきた手を握り返して、
私は古坂について行った。