トモコと飲みに繰り出した。
彼女の愚痴を聞く、いつもの飲み会になるはずだった。

金曜日の夜で、スタンディングバーは
若い人たちが多くて活気があった。
トモコの愚痴は、相変わらず堂々巡りだ。
たくさんの男をとっかえひっかえだけど、
誰にも大切にされていない。
男は見た目じゃないし、長く付き合って
わかる良さもある。この5年間ずっと
言っているけど、まるで響かない。

煙草を吸いに行ったトモコを待ちながら
ビールをあおっていると、
彼女は男二人を連れてきた。
40代くらいで一人はカジュアルな感じ。
お笑い芸人、和牛の川西君に似ている。
もう一人はワイシャツを着て固い感じ、
古坂大魔王っぽいお顔立ち。
私の好みは、まじめなサラリーマン然とした
古坂だな、と思う。

「ひっかけてきちゃったー!」
うれしそうなトモコ。
もうちょい、あんたと話したかったんだけど、
と思うけれども、そこはニコニコしておく。
川西君が、饒舌だ。
「僕、すっごくタイプだと思って!」
と私に言う。
え、私?
「髪型とか、お顔とか、服の感じも!」
熱量を込めて褒められるのは、悪い気はしない。
だけどなあ。

しばらく話して、トモコが
「煙草休憩いこ!」
と私を引っ張る。
私は吸わないんだけど、あ、女の会議か。
電話ボックスぐらいの喫煙ルームで会議開催。
「川西君、熱いね!ゆきこ、行っちゃいなよ!」
「そうねえ。トモコは古坂、行くん?」
「えー、あんなのタイプじゃない」
「じゃ、川西君、いく?」
「えー、あんなのタイプじゃない」
じゃあ、持ってくるなよ、とは言わずにおく。

狭い喫煙ルームに川西君も乱入してきた。
「何話してんの?」
「内緒、内緒!」
古坂も入ってくる。
3人の喫煙者に囲まれ、いぶされる私。
ビールを飲みたいので出る。

しばらくして戻ってきた3人だが、
どうやら川西君と私をくっつける段取りになったそうだ。
ラインを交換して次の週に会うことにして、
しばらく飲んで、帰ることになる。
川西君は優しいけれど、少々教養に欠ける。
体も細い。ただ、浴びるように飲む。
そこだけはよい。

男と飲むのは悪くはないけど、
女同士の話ができなくなるのが困る。
トモコともそのうち会おうと約束するが、
なんとなくすっきりしないまま、この日はお開き。