明けの明星が、あさひできれいな境界をきざむ稜線を眺めているように、三日月と一緒にならんでいる早朝。きょうはくもひとつない晴れとわかるその空の下の空気は、とても澄んでいて、吸っていてとても心地よいように思います。海を眺められるだけで、どうしてこんなにほっとうれしいきもちになれるのだろうと、いつもおもいながら眺めています。とおくのちいさな半島の稜線がくっきりと見えるときはなおさらです。ふゆがちかいことを思わせる、やまのいろが日々濃く、深く色づいていきます。秋の日の午後。こんなにも陽光がいとおしく、ときをこのままとめてしまえたら、どんなにいいでせうと、思ってしまう時間はほかにないのではと、いくつの秋を重ねてもそう感じます。芝生の上をあるいていると、なおそうおもう気持ちがつよくなるのでせうか。人生は70から、いつか、100をこえてなおお元気な方がそうおっしゃっていたようにおもいます。べつの本では。黒川いほこさんという方が書いていますが。脳科学では、55歳からが脳がもっとも活動的になるのだそうです。つまり知恵がもっともたくさんはたらくという意味だそうです。たんなる記憶という意味では、10代の半ばがピークだそうですが。それで、合点がいきます。話が面白いのはがぜん、還暦をすぎてなお古希を過ぎてなおの方々だと、いつも思っていたので、その一節を読んだとき、思わずうれしくなりました。

 

休日の朝。あの人に会いたいという番組があります。森繁さんの回と、優作さんの回を観ました。この日の朝は、はしもと治さんという作家の方でした。その前にもなんどか印象深く観た覚えがあります。わずか10分で、その方の人生を実に上手に切り取って、観る人にその人のいきざまがいきかたがとてもよくわかるフレーズとともに語られていきます。そういえば。シャツの店でその方の遺作となったそのドラマに出られていた八千草さんがのセリフを先日耳にしましたが。その方というのは、鶴田さんで、その10年ほど前に、忘れがたい一作がありました。「男たちの旅路」。もちろんオンタイムでは保育園児でしたので。19歳の頃に観たのでしたが。はげしく胸を揺さぶられました。テレビを観てこんなに心が動くことがあるのかと、自分でも、驚きながらそのあと、しばらくそのドラマのことが頭から離れないほど、動揺と感動をしていたように思います。戦中派の司令補と、戦後派と言われる若者世代との葛藤と共感が、ぶつかり合いを通して、互いの気持ちが近づいていく中にあって。「別離」と「流氷」の回を観て。こころが激しく動かされたのでした。戦友への忠義を通し、家族をもつことさえよしとしない司令補と、水谷さん、桃井さん演じる若者世代とのやりとり。何週間か前、深夜のラジオが、このドラマのテーマソングを流していました。半分以上寝ながら、嬉しく聴いていました。

 

奇しくもこの日、健康のありがたさをあらためて実感する話を耳にしました。ゴルフに教えられた、いえ、教えられることは、ほんとにほんとに数知れずあると、感謝しています。無駄な動きがないことの美しさ。常につぎの行動を予想して、決断して、立って、構えて、打って。飛んでいく球筋のうつくしさ。ころがっていくボールの美しさ。そして落ち際、止まり際のうつくしいボール。カップへの吸い込まれ方のなんと美しいこと。ゴルフの上手な方は、どうしてこうも、ティーグランドに立って談笑しているだけでも、なにかがちがうのでしょうかと、感心してしまうことばかりです。大は小を兼ねるのだと。大きなクラブでそれより短い距離を打つのは、その逆よりもはるかに簡単なのだと、頭では分かりますが、高さと距離を見事に調整することは、どうして、ナイスショットより何倍もむずかしいのだと分かります。ころがりのいいボールはまるで磁石ですいよせらているかのようにカップの中にきえていきます。どうしたらあんなころがりがいいボールが打てるのでしょうか。と書いていたら、大好きな刑事ドラマの曲がラジオから流れています。もういちど大門団長だったあの方の姿を観たいと願いながら、フェアレディZに乗っておられた姿のとき、今のわたしの年齢よりはるかに若かったのだとおもうと愕然としてしまいますが。その方と尊敬するホームラン王のその方が大の親友だと知ったとき、恐れ多くも、いつかプロアマでまわることができたらと。そんなことを夢見て。いちばんの動機にゴルフを目指したわたしなのでした。