「おまえはほんまにあほとちゃうか?」「なにが?」「なにがって、おまえ。ど~していつもいつも、せっかく大事に積み重ねてきたものを、いっぺんでなくすようなことを、それも、ほんねとはまったく逆のことを言って…。ほんまにあほやで」「だって…」「だってやあらへん。なんで、あともう少しをいつも、辛抱できへんで、せっかくのもんを不意にするんや?」「そんなこと言うても…。わかってて、全部ちゃんとできるくらいなら、いまごろ…」「いまごろなんや、言うてみぃ」「いまごろ、もっと大人になれてるわ」「そんなんとちゃうやろ。どうして、いつもこうも、自分の感情に勝たれへんねや。ほんまに、あほちゃうか」「わかってるわ~。だから、かなしいんやん」「もっと、かしこ~ならなあかんていつも言うてるやろ。素直すぎたら損するんやって」「損してもいいもん」「あほ!。そないなこと言うてるから。やせ我慢がかっこええなんて、だれがそんなもんに気付いてくれるんや」「ちゃんといるもん」「どこにや?わかってるなら、もっとわかりやすう言うてみ」
「それができたら、苦労せんわ…」

「おまえおれのこと愛しとらんのか?」「愛しとる」「ほしたら、なんで、そんなこと言うんや。なにがなんやらわけがわからんわ。それになんや。こないだ、いうとったやないか。どこで、なにしとっても、好きにはかわりはないいうて…」「そんなもん…」「そんなもん、なんや?」「そりゃあ、そのとおりや。だけど、ときどき、胸の奥のほうで声がするんや」「声ってなんや?」「『おまえはあほか?どこまでお人よしなんや。そんなかっこつけて、だれかが幸せになれるとでもいうんか?ほんとのこと言うてぶつかっていかな、あかんのやないかぁ?』って」「ほな、そうしたらええやないか」「だって…」「なにを恐れてるんや?本音を言うて、嫌われるってか?ふられるってか?あほか。逃げでどないすんねん」「わかってるわ。ほなかて、困らせとうない」「だれが、困るていうたんや?確かめたんか?」「いや…」「勝手に自分であいてのことを決め付けてるだけやないか…。なにをええかっこしとんねん。ちゃんと本音で話さんか~」「うん」「うんやない、はいやろ」…。

なあんて。いつも。本音で言えたらいいのにね。それにしても、何を恐れているんだろ。自分でもかなしくなります。ほんまにあほですわ。それにしても、こういうこころのねじれは、あるとき、なんの前触れもなく訪れる。おんなは、やっぱり辛抱がたらんのでしょうねぇ。すぐ、言わんでもいいことを口にして、事態をこじらせる。だまっておけばさえ、なんにもなくすごすことが出来たことまでもだいなしにしてしまう…。それさえも、先祖のおんなたちの因縁のせいなんか?と、どこかで声がした気がして、泣くに泣けない哀しさをおぼえる…。こういうときは、たぶん、ことばを重ねようとすればするほど、よけいにややこしくなる。せっかくの想いまで台無しにしてしまうのに…。ああ。ちゃんと、食べんとろくなおもいにとらわれませんねぇ。真実はいつも、ひとつであってひとつでなく…、あらゆることは、いいこともそうでないことも含めて、受け止めていくしかないのにね。なにを、焦ってるんだろ。この、わたし…。季節の変わり目に、とんでもない(感情の)嵐に襲われて
しまいました。それも、ひとり、かってに…。あああ。