病気をしたとき、ほんとに罰当たりだが、これで先祖から許しが乞えるかもしれぬと、こころの片隅で思った。もし許されるなら、あとはなるべく多くを望まぬ生き方をしようと。そんな風に思うこと自体が、どこかで自分の願いだけは叶えたいと思う不徳なのだろう。やっぱりこれも先祖の怒りなのだろうか。愚かかもしれないが、お墓の前に立つとそんな風にも思えてしまった。やっぱりひとにはあらがうことのできない身分があるのだろうか、とついこころにもなかった弱音が、胸をかすめる。少し先が分かれば、どれほど楽だろうと、いや、少し前に戻れたら、どんなにか救われるだろうと、せんのないことを思う。 あの時、あともう少し我慢が出来ていればと、そう思うことだけは、避けたい。だから、いまがいちばんつらいと感じたら、きっとここがいちばんの踏ん張りどころなのだと、思うようにしようと。
と。わかっちゃいても、無理をしちゃいけないときほど、無理な我が儘が言いたくなるものであり。。わかっちゃいるのに、ひとことでいいから、返事が欲しいと願ってしまう。ことの理由が分かれば、いまの状況が分かれば、こんなに苦しまないのに。と。ほんとにひとはかくも弱くて、愚かないきものだとつくづく思う。