60歳と25歳の友人が、前方から駆け寄ってくる。それも満面の笑顔で。わたしのなまえの最初の2文字に「ちゃぁ~ん」とつけて叫びながら。。。友ぜんぽうよりきたるあり!?である。まあ、笑顔といい、親しみを込めて呼んでいただけるのといい、(なんだろう~?)気になる。「これ食べな~い?美味しいから。。」ちいさな、飴のような包みを差し出してくださる。「う~ん。うれしいけど~。。。」。可愛げがないといわれそうだが、正直、食事と食事のあいだでものは口に入れ(たく)ない。果物かなにか、口の中がさっぱりのものなら、稀にお言葉に甘えちゃうときもあるけれど。それにしても、外から帰って、口を濯がすなにかをいれるのは…。たとえ、水を飲むだけとしても。それは、彼女たちも知っているはず。。でも、あまりに薦めて下さるので、ちょっと申し訳ないなと思いかけていたところに、「やっぱりダメか~」の声。「ん?なんじゃ?」。果たして。それは、ウイスキーの入ったキャンディで。。まんまと悪戯を仕掛けられるところだったみたい。なにしろ、中華の前菜のクラゲ(の紹興酒?)に、或いは、桃とチーズのフルーツタルト(の洋酒)を口にしただけで、顔を真っ赤にしてしまった実績!?の持ち主。まるで、リトマス紙か、フェノールフタレインか、である。ひょっとして子供の頃より敏感になっているのかしらん。紅茶に垂らしたブランデーも、父が好きだった粕汁も、案外平気だったのになぁ~。


そんなわけで、「ちょっとひとくちどうぞ」というのが、大抵だめである。子供の頃についた習慣というのはおそろしい、と、我ながら思う。で、そんなところに、表題のお菓子である。もっとも、風が余りに強くて、最後の一文字がうまく聞き取れず、ひょっとしたら、どんでもない(文字)間違いをしているかもしれぬのだが…。ともあれ。もういまでは、作っている菓子店はないという。わずかに、千年続く古都にはあるというけれど、それもほとんどが機械の生産。なのだが、目の前に現れたのは、薦めてくださったかたの、手作り。なんとも涼しげな色と風情。薄いブルーやら、ピンクやら、イエローやら。ちょうどあのおひなさんの菱餅の色いろだろうか。大きさは、少し大きめの落雁といったところ。外側はすこし固く、なかはゼリーのような寒天のような…。灼熱!?の火の前で、作るのに3日かかるのだという。飴を溶かして作るのだろうか。それに、たったひとくち、ひとときのために…。である。でも、そういうのが、たまらなく好きである。その場では、仕方なくポケットに忍ばせたのだが、そのあとで、そのたいへんな工程を聞いたものだから、とてもひとくちでなんて食べられない。ほんとうの、粋とは風流とは、きっとそんな風にしてはじめて味わえるもの、なのかもしれないと思った。思いがけず、しんみり、でもほんのり、ほんわかしたひとときをもらえた。