音のない30秒にくぎづけになった。ことばひとつひとつの響きに胸が動いた。素敵なフレーズフレーズがひとつのドラマのような抑揚をもって流れていく。内容は、確か、こんな感じ。「どうしてこんなに好きなのだろう」「前に踏み出す勇気をくれるから」「走る姿が美しいから」「30年やってもその奥深さを感じるから」「でも、ほんとうは理由なんてないのかもしれない」「ただあなたの姿を見ているだけで胸が熱くなるから・・・」。細かな部分は違うかもしれない。なにしろ、一度しか見ていないから。前もって放送時間さえ分かれば、ビデオに撮って永久保存版にしたいくらいだ。いま、このときの胸の想いをまるでそっくり代弁してくれているみたいで。嗚呼、早くもう一度見たい。ひとことひとことを改めて胸に刻もう。
2、3日見ないだけで、ハッとするほど深みと艶色を増した木々の葉たち。絵心も風流心もいまいちの自分を忘れて、思わず、写生をして、この瞬間をとどめておけたら、なんて思っている。常緑樹の中の、数少ない落葉樹だから余計にその染まり具合が鮮明に映るのかしら。机の上に、年賀状とクリスマスカードを積み上げた途端、猛烈に別のことがしたくなってせっせせっせと、全く急ぐ必要のないCafe listをつくり始めた。まるで、テストを前にした受験生のよう。過去7年分の年賀状を積み上げてみると、それでも相当な量で、それぞれの年を思い返していると一向に真新しいハガキの方には進まない。一時の半数になった枚数だが、そのほぼ半分は20年以上変わらぬ人たち(恩師の方々)。ささやかだけど、どれもとても貴重な一通だ。ここまで強く、手作り(版画)、手書きにこだわり続けられるのも、最初の頃に褒めてもらえたいくつもの声(一筆)のお陰に違いない。