恐らく、なんでもない一言に、ものすごく傷付いてハッとなる。それは他でもなく自分が発した思いやりのない言葉遣いのせいなのだと、思い至ってさらに愕然とする。短気は損気、一人相撲、過ぎたるは及ばざるが如し。胸(耳)に痛いたいフレーズが次々、心の中を横切っていく。早とちり先走り症候群。嬉しさで、迂濶な言動へのブレーキが弛む。謙虚さをどこかに置き忘れてくる。
ユー・ガット・メール(胸に来ることばだ)という映画の中で、胸の中にある言葉を全部はきだすと、後でどうしようもない後悔に襲われる、もしそれで本当に相手も傷付いていたとしたら、自分が許せない、と主人公の女性が心を通わせるメールの相手に苦しい胸の内を打ち明ける。その相手が実は、その傷付けてしまったかもしれない相手と同じ人であるとはつゆ知らずに。
どんな空の色も、静かに受け入れ、重苦しい曇天でも決して暗く映さず、移ろう光をたえずたたえる優しい湖面の水のように。そんなふうに、いつもいられたら。霞の広がる春の空を見上げて、そう思う。