セックスをしていると、活性化した性エネルギーが下半身に溜まってきます。それを小周天のルートを通じて脳に引き上げます。ワーク7で説明した還精補脳法(やり方は次図)です。
 還精補脳法を行うには、射精する手前でセックスを中断し、仙骨を前後に揺らして、性エネルギーが仙骨から脊椎を通して脳に上っていく様をイメージします。イメージすることで、女性はできるようになりますが、男性は射精の衝動を抑えなければならないので、ちょっと難しいようです。 男性がうまくできない場合は、彼の仙骨から脊椎を上に向かって手で撫でて、エネルギーが上るのを助けてあげるといいでしょう。 性エネルギーが脳に入ると、脳が満たされ、幸福感が広がっていきます。このことで脳は活性化されるので、思考力や記憶力が冴え、自信や決断力・勇気が湧いてきます。 セックスをするとは、エネルギーを通わせることですが、このとき、口(唇や舌)と性器(乳首、ペニス、膣)が、お互いのエネルギーの交換ポイントになります。 お互いの小周天の性エネルギーの流れが、口や性器をポイントにして相手へと流れ、また相手の性エネルギーが自分へと入ってきます。 セックスをしていて高いオーガズムを感じると、その人本来の魂が出現してきます。そうして、お互いの魂が触れ合い、お互いの高まった性エネルギーをも交換し合うことになります。宇宙を感じる瞬間です。 オーガズムで高まった強いエネルギーを交換すると、彼との深いつながり、エネルギーや魂が融合した「心の至福」を味わうことができます。 こうした「心の至福」を経験すると、オーガズムの感覚が何日も続き、離れていても、彼との一体感を感じられるようになります。

 タオでは、セックスのことを「内丹」と呼んでいます。「丹」は薬という意味で、内丹とは、男女が気を巡らせて体の中でつくり出す不老長寿の妙薬なのです。そのため、体位にも、それぞれ意味と効果がありました。 中国古代の房中術(セックスによって不老長寿を求める養生術)の教えるセックスの体位は、とてもたくさんありますが、基本は6体位です。体や脚の角度とお互いのバランスで、バリエーションが広がっているに過ぎないので、まずはこの6体位を説明します。 タオの癒やしのセックスでは、上になった人が癒やし手で、下になった人に与えるというふうに考えています。 上にいるほう(動くほう)が力を持ってエネルギーを与え、下にいるほうは癒やされることになるので、そのとき、男女の元気のあるほうが上になるのがいいでしょう。 癒やされる(下にいる)側は、動いている人に合わせ、補うように動きます。 あくまで心を一つにして、力を合わせてセックスすることが重要で、相手の動きや気持ちにお構いなく欲望に任せて、勝手なことをしてはいけません。 セックスで癒やしを得るためには、まずはお互いを調和させます。お互いの呼吸を合わせて、体の同じところを合わせます。口と口、手と手、胸と胸、性器と性器を呼吸しながら同調させることで、徐々に一体となっていきます。 すっかり一体になったと感じたら、体の異なった部分、口と性器、耳と舌などを合わせ、より刺激を高めて、性エネルギーを燃やしていきます。 セックスしていて、男性が射精しそうになったら体位を変えます。体位を変えることによりペニスへの刺激が変わるので、男性は余裕を感じ、射精をコントロールしやすくなります。 彼が射精しないようになれば、セックスで、より多くのエネルギーをつくり出せるようになります。男性は最初は大変ですので、スポーツ選手のマネージャーになったようなつもりで、彼をサポートしてみましょう。

映画やビデオの世界でセックスというと、激しくベッドを軋ませますが、その方法では、男性はすぐに射精してしまいます。 タオのセックスでは、射精を目的にしていないので、挿入はもっと遅く、運動もゆっくり始めます。そのほうが、性欲の興奮が遅い女性にとっても、気持ちがついていきやすいのです。 タオのセックスには、九浅一深、左三右三といった言葉があります。
これは挿入の方法と動かし方のことです。 九浅一深というのは、女性のGスポットの周辺を9回突き、1回深く突いて、リセットするという方法です。左三右三とは、さまざまな方向に、さまざまな角度で、単調にならないよう、いろんなリズムでやりなさいということです。 挿入は巧みに腰を動かしながらも、男女の心は一つにして行います。 隋代に書かれた『洞玄子』には、男女がいかに協力して腰を使うべきかが説かれています。「天は左に回り、地は右に回っている。春と夏が過ぎると、秋と冬が来る。男が詩を吟じて、女が唱和する。上の者が行い、下の者が従う。これは不変の理である。男が動かしても女が応じない。また女が動かしても男が応じない。これだと男の体が損なわれるだけでなく、女体もおかしくなる。陰陽が融和せず、捩れてしまうからだ。こんなことをしていたら、どちらにもよくない。男は左に回し、女は右に回す。男は突き下ろし、女は受けて持ち上げなければならない。こうすると天平地成、うまくいく」 いかに男女が協力して行うものなのか、わかりますね。男性の協力もないと難しいですが、二人の動きを合わせるためには、相手を気遣いながら、二人の空気やリズムをつくることが大事です。セックスでは上になるほうが主導権を握りますから、女性が上になって、リズムを誘導するのも一つの方法です。

 心と体が切り離されている現代人は、愛と性欲も離れてしまっています。 これをつなぎ合わせることを前戯に取り入れると、下半身志向の男性でもセックスで愛を感じられるようになるので、前戯の前に心がけるといいと思います。 まず、両手の指を自分の胸の真ん中に置きます。ここは心臓のある場所です。 心臓に愛情を送り、花が咲いていくイメージを持ちます。自分自身への愛や喜び、思いやりで心を満たしていきます。 次に、左手を胸に置いたまま、右手は性器に置きます。女性は、エネルギーが心臓から性器へ伝わり、また心臓に戻ることをイメージします。これは燃えにくい女性の性欲を促します。 逆に男性は、エネルギーが自分の性器から心臓へ伝わり、また性器に戻ることをイメージします。男性は燃えやすい性欲を抑えて、心臓を愛で満たすことが重要なのです。心臓と性器がうまくつながったら、お互いの目を見つめ合います。 心臓と性器とお互いの気持ちをつなげることで、より深い愛と絆が生まれます。
 タオではお互いの性エネルギーを交換することが重要なので、オーラルセックスはとても大切です。オーラルセックスでは、舌や口を通して、お互いの性エネルギーを与えたり、取り込んだりすることがとても簡単にできます。 男性はフェラチオの快感がとても高く、たいていの男性はフェラチオが大好きです。セックスよりもフェラチオのほうが好きな男性もいるぐらいなので、女性は自然な流れの中で、フェラチオを経験できるでしょう。 逆に女性は、フェラチオが苦手という人もいると思いますが、ペニスにキスをするようなつもりで始めてみるといいかもしれません。ペニスはとても敏感ですから、キスでも充分に反応します。また、ペニスがまだ小さいうちに口に含むのも、いい方法です。 フェラチオをするときは、女性は手でペニスの根元をしっかり握ります。そうすることで、深さや角度などを女性が自分でコントロールできるからです。 男性は、フェラチオで興奮しやすいですから、あまり調子に乗って射精までいかないように気をつけましょう。 ペニスが熱くなり始めたら、片手でペニスを握りながら、胸など、他の部分を愛撫し、ペニスに溜まった性エネルギーを全身に広げるようにします。このとき、ペニスから手を離すと男性は気が散り、勃起していたことを忘れてしまいますから、注意が必要です。 勃起が弱くなったように見えても、二人がいい雰囲気であれば、再度フェラチオを始めると、またすぐに勃起します。 オーラルセックスも、あくまで愛のエネルギーを与える、取り込むというイメージでやるとうまくいきます。

心と身体を癒すヒーリングセックス
 タオでは、性は「生を養うもの」です。セックスは楽しむものでもありますが、健康を保つための養生法でもあるのです。そのため、セックスのエクスタシーやオーガズムは、できれば毎日感じたいところです。それぐらい、性エネルギーの癒やしの力は、人間の生活にとって重要なものなのです。 中国古代の性の指南書『玉房秘訣』の体位の説明には、「……これを日に六回、二十日続けるといい」といった具体的な回数や日数の記述もあり、実際にその健康法をマスターするには、毎日をほとんどセックスのためだけに過ごさなければならないのでは? と思うほどです(巻末付録で紹介しています)。そこまで忠実に実行することはなくとも、毎日エクスタシーを感じながら生活することこそが、健康の源なのです。 エクスタシーを感じている男女がお互いの「気」を交換して循環させられるようになると、癒やしの効果は素晴らしく高まります。 自分の性エネルギーを活性化させて、小周天のルートを通して全
身に巡らせる練習は、第2章でしましたが、今度は、セックスで得られた性エネルギーを全身に巡らせるのです。セックスで活性化された性エネルギーを彼に与えて、彼の体の中で巡らせます。また、彼の性エネルギーを自分に引き込んで、あなたの体の中で巡らせていきます。 このとき、お互いのオーガズムに達する度合いが深いほど生まれてくるエネルギーは強く、癒やしの効果も大きくなります。 二人がつながっているとき、性エネルギーをお互いの体に巡らせると、二人の間に小さな宇宙が生まれます。言葉ではうまくいえない、神秘的な時間です……そして、そのおかげで心も体も癒やされ、再生するのです。 しかし、男性にとって、挿入しているのに射精しないというのは、とても大変なことです。男性には技術や我慢も必要なので、パートナーとは事前によく話し合っておく必要があります。 射精と快感は別物であり、射精より気持ちのいい、複雑で多彩なオーガズムがあるということをわかってもらえたら、男性も協力的になってくれるでしょう。 彼が協力的になってくれれば、癒やしの力はより大きくなっていきます。それは、「気」が、気持ちやイメージに従うものだからです。また、彼が体の中でエネルギーを巡らせられるようになると、たとえ射精したとしてもエネルギーの喪失が少なくなり、疲労も小さくなります。

お互いの気持ちを合わせる
 男性と女性が惹かれ合い、心や体を開き合い、オーガズムが生まれるのは、単に好きだからそうなるのではありません。宇宙の法則に従い、陰陽が反応し合うからそうなるのであって、人間の力ではない、と素女はいいます。 人間の力でできると思っている間は、本当の快感は得られないのです。聖なるセックスをするには、女性は男性に天のイメージを持ち、男性は女性に大地のイメージを持ちます。天と地が交わるイメージを持つのです。 いいセックスのためには、心を鎮め、リラックスして、相手を素直に慈しむことです。そうして、お互いの心を一つにしてセックスに向かわなければなりません。そうでなければ、「気」を通い合わせることができないからです。 また、苛々したり、くよくよしたりしているときには、セックスしてはいけません。 セックスは、そのときに抱いている感情によって、大きく変化してしまうからです。いつも愛情に満ちていればいいですが、苛々しているときは、苛々した感情を増幅してしまうのです。 もしも悪い感情のままセックスすると、その結果、男性は簡単に射精してしまい、消耗して病気になり、女性は冷え性になってしまうと、素女はいいます。 だから、彼が乗り気でないときに、セックスを強要してはいけません。逆に、自分が乗り気でないときに、お義理でセックスするのもよくありません。どちらかが元気がないときは、時間をかけて日頃のストレスや怒りを鎮め、無理に挿入したりせず、マッサージやスキンシップなどで心や体を癒やすにとどめます。 また、二人が元気だったとしても、時間がないからといって、粗雑なセックスや手抜きのセックスをしてはいけません。それは、心や体を壊してしまいます。 セックスで癒やしの効果を引き出すためには前戯に時間をかけ、最低でも30分ぐらいはキスをしながら呼吸を合わせ、お互いの体に触れ合ったりします。 最初は手と手、足と足、口と口など、同じ部分を合わせたり、絡めたりして、心がすっかり同調したら、徐々に刺激的な前戯へと入っていきます。 刺激的な前戯とは、口と耳、手と性器といった違う部分を合わせることです。 決して急いではいけません。