追跡マンション不安 入居寸前に契約解除、購入者が激怒です。

シリーズでお伝えしている「マンション不安」。
東京都内にある高級マンション。待ちに待った入居寸前になって、購入者全員に、契約の解除が申し渡された。

参加者の怒りが爆発した説明会。
問題となっているものは。
東京・文京区の静かな住宅街の中にたたずむ、地上8階建てマンション。
全107戸、販売価格5,000万円台から、2億6,000万円までの高級マンション。
ロビーには、エスカレーターが2基。
住戸部分からも、豪華さが伝わってくる。
都内にあって、閑静な文教地区。
周辺環境も、魅力のはずだった。
このマンションに、今大きな問題が。
このマンションは、全戸完売にもかかわらず、契約解除という、異例の事態になっている。
すでに全戸完売。
2016年2月には、入居となっていたにもかかわらず、売り主からの一方的な契約解除という異常事態に。
そのきっかけとなったのは、都知事の付属機関である東京都建築審査会が下した、建築確認を取り消す決定だった。
11月末に行われた住民説明会では、一方的な通告に、購入者の怒りは爆発。
マンション購入者からは、「前代未聞の裁決が下りたということは、前代未聞のひどい建築物を造ったということ」、「ふざけるなよ! 自分がこの立場だったら、どうなの」、「何千万、何億ですよ。100円のジュース買ったんじゃないんですよ」、「形を示してください、誠意を!」などの声が上がった。
中には、入居前に、現在の家を売ってしまった男性も。
自宅を売った男性は、「2月からですね、住まいがないんですけど、わたしは、どこに住めばよろしいんでしょうか」と話した。
今回の決定は、まさに、新居への期待を絶望に変えるものだった。
マンションを購入した60代夫婦は、「落胆ですね。われわれも、年齢なので、ある程度、ついのすみかで考えてましたので。大げさに言えば、人生設計が狂ったような感じ」と話した。
この高級マンションに、いったい何があったのか。
その原因は、駐車場にあった。
通常、マンションでは、建物1階など、直接外につながっている階を「避難階」といい、避難階以外のフロアには、緊急時に外へ出るための避難階段を設けるよう、東京都建築安全条例で定められている。
このマンションでは、駐車場を避難階としていた。
しかし、駐車場から外に出るためには、段差およそ2.5メートルのスロープを上がらなければいけないため、建築審査会は、駐車場を避難階ではないと判断。
そのため、このマンションが、違法建築とされた。
周辺住民側の日置雅晴弁護士は、「傾斜路で出てますから、例えば、車いすの方が駐車場で火災等にあったときに、避難できるかというと、避難できない。出られればいいというわけではなく、一定の基準を満たした避難ができるかどうか」と語った。
まさかの事態に、購入者からは、「一番問題なのは、そもそも、これだけもめてるところを、正確に購入者に伝えてなかったところ」との不満も聞かれた。
今回の問題の背後には、長年にわたる、あるトラブルがあった。
建築計画が持ち上がった2004年から、建物が、街の景観に合わないとして、周辺住民が、何度も建築確認などの審査を請求していた。
建築反対派の周辺住民は、「もうちょっと低いマンションであった方が良かったですし、この(マンション前の)堀坂っていうのは、本当に、子どもと年寄りがよく使う道なので、その坂の真ん中に駐車場の入り口を作る計画でしたので、反対だと考えております」と話した。
購入者側は、そうしたトラブルが続いていたにもかかわらず、建築主も、販売会社も、自分たちに、きちんと説明をしていなかったと主張。
購入者の怒りは、販売の窓口となっていた三菱地所レジデンスへ。

マンション購入者「あれだけ細かい問題点がリストにされたけど、あなたの会社は聞いていたの?」
三菱地所レジデンス担当者「すみません。わたしどもも、今回の事象が起きて、こういった事情は知りました」
なんで大丈夫って言ったんですか!」

不満が収まる気配がない、今回のトラブル。
こうした購入者の声にどう応えるのか。
わたしたちの取材に、建築主である「NIPPO」は、「建築確認申請に関しましては、慎重に作業を進めてきたものでございますので、取り消しという判断がなされたことについては、全く遺憾です。今後の対応については、検討を進めている段階で、解答は控えさせていただきます」と回答した。
閑静な住宅街に建つマンションは、解決のめどが立たないまま、冬を迎えようとしている。