2月13日
「はい??真冬さん??もう一回言ってください」

俺は、思わず聞き返してしまった。しかも、丁寧語。

「実は、今、日本にいます。お父さんの仕事に付いてきちゃいました」

受話器の向こうで笑ってる真冬。

「はぁ??なんですと??なぜ、黙ってたとんですか??今から会いに行くから、そこで待っときぃ」

「会いにきてくれるんですか??あと、秋夜さんになってますよ」

「興奮しすぎて、博多弁なったわ。で、どこにいるんだ??」

「祐一くんと初めて会った場所です」

真冬とはじめて会った場所……雪の振る北海道のとあるバス停。

「無理!!このやろう!ぬか喜びさせやがって」

ちなみに、ここ九州ですから。無理ですから、真冬さん。


2月14日


…………来ちまった。オババにダメ元で、話したら「押し倒してこい」言われた……

「雪、キレイですね……」
いきなり、後ろから声をかけてくる不信な女の子。年は多分、おれと同じくらい。

「そうか??この町にいればって、何をやらせる!!真冬」

俺の恋人の真冬は、おかしそうにクスクス笑う。はじめて会った時のセリフ使ってきやがった。

「にしても3月なのに雪か。さすがだな」

「そうですよね。少し寒いです」

俺は、真冬を抱きしめる。

「ちょ、祐一くん」

「久々に会ったんだ。しばらく、こうさせろ。寒いしな」

「いえ、その、あそこの柱の隅で秋夜さんが見てます」

はっ、そういえば、悪寒が……ニシシと笑うオババの声が……

俺は、真冬から離れて辺りを見回す。

「いねぇじゃねぇか」

「あれ??確かに気配がしたんですが……」

「だいたい、オババは風邪で寝こんでるからな」

「そうなんですか??でも、秋夜さんなら這ってでもきそうですよね」

「いや、さすがに、オババでも………………………………ありえるな」

俺ら二人は目がまじだった。ヤツならやりかねん。

「だいたい、秋夜さん風邪なのにきちゃったんですか??」

「まぁ、父さんがついてるから大丈夫だって。だいたい、真冬は俺に会いたくなかったのか??」

「いえ、会いたかったですけど……」

複雑そうな顔をする真冬。

その顔がたまらなく可愛いくてキスを落とす。



「うわぁ」

「どうしたんですか??」

「オババのニシシ声が聞こえた」

「………気にしすぎですよ……って、うわぁ、私にも聞こえちゃいました」

おババの影に怯える二人。

「ふふふ、実はデートプラン、飛行機の中で、考えてたんだ」

「本当ですか??楽しみです」




で、

「映画ですか??久しぶりですね」

真冬が嬉しそうに笑う。俺たちの初デートも映画だった。

「だろ??で、何を見る??」

「笑えて泣けるやつがいいです」

「お前……実は決めてただろ」

「へへ、ばれてました。祐一くん、あのアニメ好きだから、映画化したら一緒にみたいな思ってました」


「だろだろ。じゃあ、野原しんの@けに会いにいくぞ」

「なんで、クレ@ンしんちゃんなんですか??」

「えっ??しんちゃんじゃないの??しんちゃんの映画は泣けるって有名なんだぞ」

「却下です。あれを見ましょう」

と、真冬が指を指す。「リトルシスターズ」兄弟姉妹で野球チームを作る笑いあり涙ありのアニメ映画だ。

「泣くなよ」


「祐一くんは、泣いてもいいですけど、鼻水はやめてくださいね」

「くっ、泣くかもしれんが、さすがに鼻水はたらさんぞ」

「いえ、たらしますよね。祐一くん、いつも泣きすぎで、鼻水たらしまくりですよね」

泣かないから、鼻水も絶対たらさないからな……




「祐一くん、泣きすぎです」

真冬は苦笑いしながら、俺にテッシュを渡す。

「いや、あの京介お兄ちゃん反則だろ。泣くわ。くそ、京介お兄ちゃんめ」


ブーと鼻水を取る俺。


「まだ、鼻水でてますよ」


「汚いだろ。やめろって」

だって、真冬さん、俺の鼻水なめてくんだもん。なんか、エロいだもん。


鼻水をなめる流れで、俺にキスをしてくる真冬。


「押し倒せ」というオババの声が……


キスが終わると、真冬は青ざめた顔で、


「秋夜さんの声で、真冬ちゃんから押し倒せ言われました」


「………なんの呪いだ。このやろう」


その後も、行く先々でおババの幻に悩まされる俺達。


「秋夜さんの生き霊でしょうか??」

とか、言い出す真冬。

「まぁ、ありえそうで怖いよな」

実際に俺と真冬は生き霊に関わった事があるので、否定はできない。

「あのー、秋夜さんをほったらかしにしたのがいけなかったでしょうか??」

「いけなくはないだろうが、これじゃあな……」

デートどころじゃない。ある意味、拷問だ。

「きっと寂しかったんだと思います。風邪ひいたのに、私とデートとかしてたから」

半泣き状態になる真冬。

「泣くなよ。寂しいとかそいいうのじゃないて」

オババが寂しいとかいう玉じゃないと思う。が、俺達のあわてふためく顔を見るなら生き霊でも、なんでもなりそうだ。そういう人だからな……我が母君は……

「祐一くん、帰りましょう。私もついていきます。秋夜さんが心配です」

「ああ、そうだな。デートどころじゃないよな」

本当に生き霊だったら、逃げ切れないしな。

しょうがないか……



で、我が家の門先前で二人して絶句。

「友ちゃん。あーんさせて、あーんで食べさせて」
オババの声。

「いやいや、一回だけって言ったでしょ」

友ちゃん……俺の親父は照れくさそうに言う。

「ええー友ちゃんのいけずーーねっ、もう一回だけ」


「たく、はい、アーン」


「アーン」


ノリノリな声でアーンをする我が母君。


「ノリノリですね」

真冬さん、ひそひそ声。

少し怒ってないか??

「ノリノリだな」

「心配して帰ってきたら、なんでラブラブなんですか??あーんって恥ずかしくないんですか??」

怒ってる。半ば八つ当たり的だけど怒ってんな。

「こうなったらアーンの間に突撃です。祐一くんも秋夜さんが恥ずかしがって、断絶間をあげる姿見たいですよね」


多分、上げない。秋夜さん、親父の反応見て面白がってるだけだから。


しかし、怒りモードの真冬に何言っても無駄だしな。


しゃあない。付き合うか。


俺達は忍び足で庭に回る。

庭が母さんと親父の寝室だ。カーテン越しに二人のシェルエットが見える。

「はい、あーん」
「あーん」


突撃!!

「「ただいま!!って、なんで看護されてる側が、看護服着てるんだ(着てるんですか)!!!!


同時突っ込み。


「ニシシ。二人ともナイス突っ込み。ちなみに、この服は父さんの趣味だ」


オババが嬉しそうに笑う。


親父の断絶間が町内にこだました気がしたが、聞こえなかった事にしておいた。


fine