第三話 『漆黒の剣 キュアナイト参上!!』
・場面 《よみの夢の中》
画面、暗闇に包まれている。
その中で、よみがひとり、下を向きながら座っている。
画面、よみの横顔アップ。
ふっと手前に光るなにかを見つける。
ビー玉ほどの大きさをした光る玉。手を伸ばせば届きそうなくらいの所に落ちている。
よみ、それをぼーっと見ている。
女神(夜) 『拾わないの?』
どこからか、星空の女神の声が聞こえた。
よみ 「……ええ」
暗闇の中から、星空の女神が現れる。
心配した表情で、よみを見下ろしている。
女神(夜) 『どうして?手を伸ばせば手に入るのに』
よみ、光る玉から視線を外し、再び下を向く。
よみ 「持ったら、壊れちゃうから」
女神(夜) 『だから目を逸らして、自分の殻に閉じこもってるの?』
よみ 「……放っておいて」
女神(夜) 『夢は、手に入れれば終わってしまう……だけど、そこからまた、新しい夢が始まるのよ』
よみ、無言のまま下を向いている。
女神(夜) 『朝日が昇らない夜明けが無いように、いつかあなたの心にも光が満ちる時が来るわ』
よみ、もう一度顔を少し上げ、光る玉を見る。
画面、光る玉のアップ。
・OP
・場面 《サンタマリア学園 校舎裏に設けられた庭園》
広い庭園の片隅に置かれたテラスに、輝とあかりが並んでベンチに座っている。
レムたち3人、人間の姿になって向かい合って座っている。スイミーだけ寝ている。
画面、頬杖をついているあかり。
あかり 「ん~~……」
輝 「どうしたの?あかりちゃん。さっきから難しそうな顔して」
あかり、頬杖をついたまま、隣の輝をみる。
あかり 「どうしたもこうしたも、悩みの種なんて、1つしかないでしょ?」
輝、考えるように人差し指をこめかみに当てる。
輝 「ん~?……なに?」
輝、笑う。
あかり、ガクッと頬杖を崩す。
あかり 「あ、あのねぇ……なんで人が来ないこんな所で、話し合いしてると思ってるのよ」
輝 「……お、お花見とか?」
あかり 「3人目のプリキュアのことでしょうが!!」
あかり、笑っている輝にツッコミを入れる。
輝 「おぉ!そうだった!!」
輝、ポンッと手を叩く。
画面、人間形態のレムとノン。笑っている。
レム 「はは、君たちは本当に仲がいいんだな」
ノン 「まさしく、名コンビ!って感じね」
画面、笑っている輝とやれやれといった感じのあかり。
あかり 「ま、幼馴染で長い付き合いだしね。こういう会話の流れにも慣れてるわ」
輝 「さっすがあかりちゃん!」
あかり 「はいはい」
画面、一度咳払いをするレム。
レム 「おほんっ……それで、輝?3人目のプリキュアのことなんだけど、誰か心当たりはあるかい?」
画面、腕を組んで悩む輝。
輝 「ん~~……」
ノン 「あかりは?誰か周りにプリキュアの資格を持った人って知らない?」
あかり、輝と同じく、腕を組んで悩んでいる。
あかり 「ん~~……難しいわね。要は私や輝みたいな子ってことでしょ?」
レム 「いや、必ずしもそうとは言えないんだ」
あかり、輝、レムを見る。
レム 「前にも言ったけど、プリキュアの資格は何事にも負けない強い心、そして夢を大切にしていることだ」
あかり 「私は願望はあるけど、夢なんてまだ漠然としたものだったわよ?将来とか何も考えてないし」
レム 「あかりの場合は何事にも負けない強い心がそれを補ったのかもしれない。親友を守りたいって心がね」
あかり、輝を見る。
輝、ニコニコしている。
レム 「それに、あかりは将来に希望を持っているだろう?それがあればいつか素晴らしい夢に出会えるはずさ」
ノン 「そうそう。別に焦ることは無いのよ」
あかり 「……そうね」
あかり、笑う。
輝 「つまり、夢に希望を持っているか、それ以上の強い心があればプリキュアになれるってこと?」
確認するように輝が聞く。
レム 「そうだね。そして、そういう子が君たちの周りに居るはずなんだ」
あかり 「私たちの周りに?どうして分かるの?」
レム 「う~ん、これは僕のカンなんだけど……」
レム、輝を見る。
レム 「輝のまわりには、笑顔が絶えない。笑顔は人を幸せにするし、そうすれば、将来に希望が持てる。だから、負けない心と夢を持つ子が居るんじゃないか……てね」
あかり 「輝がねぇ……まぁ、あながち間違いでもないかもね」
あかり、笑いながら輝を見る。
輝 「え、そ、そうなのかなぁ?えへへ」
輝、照れ笑い。
輝 「でも、私は今のところ心当たりはないよ。みんな夢は持ってるし大切にしてると思うけど、こんな危険なこと、無闇に巻き込ませられないもん」
あかり 「ちょっと!私は良かったの?!」
輝 「うん!だって、あかりちゃんは私の一番の親友だもん。だから、一番信じられるの」
ニコッと笑う輝。
あかり 「うっ……ま、まぁ、どっちにしてもあんた1人じゃ危なっかしくて見てられないしね。私がちゃんと最後まで付き合ってあげるわよ」
あかり、照れ隠しに頭を掻く。
輝 「うん!一緒にがんばろう!」
輝、笑顔。
ノン 「でも、そうなると、あと1人のプリキュアはこれから見つけるってことになりそうね」
レム 「そうだな。ま、地道に探すさ」
レムとノン、笑い合っている輝とあかりを見て微笑む。
画面、パタンッと本を閉じる1人の少女、アップ。顔は見えない。
画面、それに気が付いて驚く輝たち。
画面、輝たちのすぐ傍で読書をしていた冴島 よみが本を持って立ち上がる。
一度、不機嫌そうな顔で輝たちをみたあと、その場を去っていく。
輝 「び、びっくりしたぁ……私たちの他に人がいたんだ」
ノン 「全然気が付かなかったわ……」
輝 「今の話、全部聞かれたかな?」
レム 「た、多分」
汗を流しながら顔を近づけて話している輝たち。
画面、よみの去った方を見ているあかり。
あかり 「あの子って……確か」
輝、それに気が付いてあかりの方を向く。
輝 「あかりちゃん?あの子知ってるの?」
あかり 「ええ。確か、『冴島 よみ』って子……っていうか、運動部の中じゃ知らない人いない位の有名人よ」
輝 「へぇ……?」
あかり 「なんでも、剣道部に入部して、その日のうちに部員の人全員に勝っちゃたんだってさ」
レム 「そりゃあ、すごいな」
あかり 「うん。それで次の日、先輩たちの話も聞かずに退部届け出してやめちゃったんだってさ」
輝 「え?やめちゃったの?」
あかり 「うん……退部の理由もはっきりしないらしいよ。謎の達人1年生ってことで、今すごい有名」
ノン 「へぇ、すごいのねぇ」
関心したように目を丸くしてよみが去った方を見るノン。
レム 「だけど、これ以上ここで話す訳にはいかないな……あの子が俺たちのことを誰かに話されたら困るし、一度解散しよう」
レムとノン、席を立とうと腰を上げる。
輝 「決めたっ!!」
画面、勢い良く立ち上がった輝。
その横で、驚いた顔をしたあかり。
あかり 「き、決めたって……なにを?」
輝 「そんなに強い子なら、きっと心も強いはず!3人目のプリキュアは、あの子しかいないよ!?」
あかり 「えぇええ?そ、そんないい加減に決めていいの?」
輝 「いい加減じゃないもん!ね?レムもそう思うでしょ?」
レム 「う、う~~ん……?」
苦笑いをして困っているレム。
輝 「それに、大体の話は聞かれちゃったんだから、説明する手間も省けるし」
あかり 「ああ、それが狙いな訳ね」
輝 「ち、ちがうよぉ!私は本当にそんなに強い子がプリキュアになったら頼もしいなって思ったから」
あかり 「はいはい」
画面、今まで寝ていたスイミー。目をゆっくりと開ける。
スイミー 「……ふぅ。騒がしいなぁ」
ため息を1つ。
・場面 《ディザイヤー本拠地 ラウンジ》
画面、ディザイヤー本拠地の城、全景。
画面、ディザイヤー本拠地内のラウンジに移る。
部屋の中央に置かれたルーレット台が回っている。
画面、カフェインを見上げるように下から映す。
カフェイン 「どういうことですか?ダハーさん。2回も赴いたというのに、このような失態を被るとは……私は聞いた事がありませんが」
画面、肩をすぼめて小さくなっているダハー。
ダハー 「い、いや……と、途中まではうまくいっていたんだ。……プ、プリキュアが、ふっ2人にならなければ、僕が勝っていたんだ」
見下したような視線で、ダハーを見ていたカフェインが眉をひそめる。
カフェイン 「ほう……プリキュアを倒すどころか、見す見す増やして帰ってくるとは。それはご苦労様でした」
ダハー 「ぐぐっ」
奥歯を強く噛むダハー。
ルーレット台の中央の炎がぶわっと燃え上がる。
ネブソクーン 「ふんぬ~~……」
ダハー 「ひっ」
怖がるダハー。1歩下がる。
カランッカランッと玉が跳ねてルーレットが止まる。
カフェイン 「……ふぅ」
出た目は『ダハー』。カフェインがため息交じりでダハーを見る。
カフェイン 「ダハーさん……これ以上の失敗は、許されないと分かっていますね」
ミンミン 『ちょっと!カフェイン様!?』
画面外からディザイヤーの幹部でダハーの姉のミンミンの声が響く。
画面、暗闇の中から、すぅっと姿を出すミンミン。
ミンミン 「出た目をちゃんと見てもらわないと困ります」
軽く笑っているミンミン。
画面、ミンミンからルーレット台に目線を下げるカフェイン。
カフェイン 「……」
画面、カフェインの顔のアップ。眉をひそめる。
出た目が『ミンミン』に変わっていた。
カフェイン 「ふっ……これは失礼しました。では、ミンミンさん……今回は貴女に任せましょう。よろしくお願いします」
インチキを見破りながらも、軽く笑ってそれを認めるカフェイン。
ミンミン 「お任せください!」
頭を1度下げて、踵を返して歩き始めるミンミン。
ミンミン 「ホント、世話のかかる弟を持つと苦労するわ」
ダハーの横を通り過ぎるとき、小声でミンミンが呟く。
俯いていたダハー、ミンミンの言葉に顔を上げる。
振り向いてミンミンの後姿を見るダハー。
画面、ミンミンの後姿。
ミンミン 「ま、いつものことだけどね」
ミンミン、手をパタパタ振りながら闇に消える。
ダハー 「……姉さん」
ダハー、ミンミンを見送る。
・場面 《サンタマリア学園 1-A教室前》
画面、開きっ放しの教室のドア。
輝、あかりの2人が顔だけ出す。
画面、教室の全体を見渡す。
あかり 「ちょっと、輝。本当にあの子と話するの?」
輝 「うん!もちろん」
画面、廊下で向かい合って会話をしている輝とあかり。
あかり 「やめたほうがいいんじゃないかなぁ」
輝 「どうして?話す前から諦めちゃ駄目だよ」
あかり 「いや、あのね。さっきの話の続きなんだけど……」
あかり、声を潜めて小声で喋る。
あかり 「あの子、剣道部をやめてから他の部活の勧誘を片っ端から断ってるのよ。しかも聞く耳持たずで」
輝 「……へ?」
あかり 「で、誘いがあまりにしつこいと、いっつも持ってる竹刀で叩かれるらしいよ」
顔が青ざめる輝。
輝 「う……た、叩かれると痛いのかな?」
あかり 「そりゃ……かなり痛いでしょ」
輝 「ど、どうしよぅ」
あかり 「ん~~」
腕を組んで目を瞑っているあかりに、輝が訊く。
よみ 「……あの」
画面、呼ばれて振り向く輝とあかり。
画面、静かに立っているよみ。
よみ 「邪魔なんだけど」
輝 「あ、ご、ごめんなさい」
さっと身を引いて道をあける輝。
よみ、歩き出す。
あかり 「ちょっと、あなた」
画面、あかりに呼ばれて振り向くよみ。
あかり 「上級生に向かって、『邪魔』はないんじゃない?」
少し怒ったような顔をしているあかり。
興味なさそうに、頭を少し下げるよみ。
よみ 「上級生の方だったんですか。すいませんでした」
よみ、あかりを見る。
よみ 「でも上級生だからって、そんなところに立っていられると他の人の邪魔になりますよ」
よみの言葉にさらにムッとなるあかり。
よみとあかりの間に、硬い笑いを浮かべた輝が割り込む。
輝 「あ、あははっ、ごめんね。次から気をつけるよ」
ふぅ、と軽く息を吐いて、よみ、教室に入っていく。
あかり 「……輝」
よみを目で追っていた輝、振り向いてあかりを見る。
あかり、不機嫌な顔。
あかり 「私、ああいう子苦手だわ。別の子にしましょ」
輝 「え、えぇええ……」
画面、困りながら笑っている輝。
画面、輝たちの後方、廊下の曲がり角に隠れていたレムたち(人間形態)が顔を出す。
ノン 「これは、無理かしらね」
レム 「そうだなぁ、あの子をプリキュアにするのは難しいんじゃないかな」
画面、考えている表情のスイミー。
スイミー 「……ふぅん」
CM
作者コメント「黒羽 烏」-------------------------
どうも、おひさしぶりですw黒羽 烏ですw
第三話前編、やっとUPできました^^
病気になったり、通院したり寝込んだりと、とても有意義な3月でした
みなさんも身体には気をつけて、そしてこのブログを見て少しでも元気が出れば、とても嬉しいと思います
後編は、なるだけ3月中にはうpしたいと考えています。
生暖かい目で見守ってくれると嬉しいです^^
では、また後編でお会いしましょう!!
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設定は随時更新していく予定です。
ストーリーを進めていく上で必要とあらば
設定を多少変える場合もありますのでご了承ください。