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はじめから
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前回
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カノジョは、可愛らしいオタクだ。
ひょんな事から僕はこの子と付き合う事になったのだが、
数年ぶりに感じるこの胸のトキメキに、年齢は関係無いの
かも知れない。

身体はともかく、心は恋愛毎にリセット・再起動されて、
いつも童貞の頃のような心境に戻る。
またカノジョを数人の友達にも会わせたが、長い付き合い
の友人をさえ「ホントにこの変態男と付き合っていく
つもりなの!?」と言わしめる程に、カノジョは僕とは
アンバランスな、まとも(そうに見える容姿の)な人で、
また我ながら確かにそうだと思う。

だがこのカノジョが僕にもたらしたモノはあまりに大き
かった!!
まずそれは「今のままの自分でいちゃいけない!!いたく
ない!!」と自分に積極的に向き合う事であった!!!!

すなわちそこにはマンガの事も含まれていた…

今の僕は、到底『マンガ家』等と名乗ってはいけない
ような体たらくだ。
何年も業界に関わる程に、自分が如何にダメなヤツで
あるかと言う現実も、目を背けたくなる程叩き込まれた。
そして作家として僕なんかよりもはるかに優秀であった
にも関わらず、仕事を失い業界を去った先輩作家達を
何人も何人も見て来た…
そんな中で、才能のないザコである僕なんかは、いずれ
本格的にマンガを辞めざるを得ないかも知れない…
しかし今辞めたら生涯悔いが残るのは目に見えている。
そしてまだ決して万策が尽きた訳ではない!!
しかも僕を傍らで見てくれている人がいるじゃないか!!!

すると僕は、あれ程にまで描けなかったマンガを、
描こうとすると微妙に気持ち悪ささえ覚える程になって
しまったマンガを、自然と描けるようになっていた!!!!

何度も繰り返すがこの5年間、そんな気持ちは全く起こら
なかった。
ある時は軽井沢の別荘に行き、ボケーッと風景を眺めて
何時間も過ごし、またある時は週に何度も図書館に入り
浸った。
そしてここ数ヶ月、マンガよりもよほどだるくてつまらな
そうな仕事である『掃除』のバイトに取り組んだにも
関わらず、どんな事をしても『マンガを描きたい!!』と
思わせる決定打に欠けた自分の心が、たかだかカノジョが
出来た、しかもオタク寄りのカノジョが出来た…
それだけで、何をしても動かなかった僕の気持ちが、
あっさりと動きだしたのであった!!

これだっ!!!!
正にこれだ!!
まるでサビ付いて固まった歯車が、ギシギシと音を立て
ながらも回り始めたかのようなイメージが頭に浮かんだ。
するとどうだろう!!?
動くのだ!!
感情に連動した僕の身体・右手が動くではないか!!!
それでも一番描いていた時と比べたら手の速さは落ちた
が、ここ近年では上出来であった。


たかだか大切なオンナが出来た、と言うだけで意図も
簡単に問題はクリアした!!

例えばそれは僕がサーファーで、カノジョがサーフィン
好きだったり、例えばそれは僕がミュージシャンで、
カノジョがロック好きだったりしたら、自然とそれぞれの
ジャンルでカッコ良いところを見せたくもなる、と言う
男の当然の気持ち・本能にも近かったのかも知れない。
あるいはリビドー…

自分を認めさせたい!!!
その、人として当然の気持ちは方向性が明確になった時、
てきめんに効力を発揮する。
まず編集に認められ、読者に認められ、そして自分に最も
近しい人に認められたい…

そんな時心底から言える。
俺は無敵だ!!!!と。

デビュー前のあの頃のような熱い気持ちを、僕は別の形で
取り戻せたのだ!!
しかも今回のはデビュー直後の『根拠のない無敵感』とは
違う。
伊達にも、ザコなりにとは言え、十余年この業界に根を
下ろしてきた、年の功や統計に裏付けられた根拠。

それでいて
「やるだけ無駄じゃん?マンガなんてさ。」
と言う周囲の批判を全身で受けながらデビューした、
あの頃の僕の気持ちに近い…

行ける!!!
これは間違いなく行けるぞ!!!!

ちょうどその頃だった。
僕が掃除屋のバイトを辞めたのは。

例えば引越屋が、卒業・進学シーズン節目の3月が忙しい
ように、掃除屋にも異常なまでの繁忙期と言うのがある。
だが逆に言えば異常なまでに仕事がない月もあり、その
月が正にそれで、僕には1ヶ月に6日しか仕事が回って
来なかったのであった!!!!!
(9000円/日×6日=月給54000円)

こんなのやってられねぇよ!!!!
これならどこぞの作家の下でアシスタントやった方が
はるかにマシじゃん!!!!
次の瞬間、「辞めます」と会社に電話していた僕だった。

それから僕の収入源は事実上絶たれたと言える。




それから少し経った頃。
最愛の、そして僕に作家復帰へのやる気をくれたカノジョ
が、苦い表情で言ってきた。

「二人の関係を見直したい。
少し考える時間を下さらない?」
と…………………………………………!!!!!

神妙なカノジョの顔付きに、僕は自分でも解る程狼狽した!!!!

そしてそれは直接の別れの宣告ではないとは言え、
僕とてそれなりの女と恋愛もしくはそれに準ずる事を
して来ている。

関係を見直したい。
少し距離を置きたい。
考える時間を下さい…。

そんな提言をして来た女は過去に何人もいた。
だが今までの僕の統計から言うと、これ系のセリフを
吐いた女が時間を費やした結果、ポジティブな返答を
した試しは一度もない。
間接的とは言え、これが別れの宣告となってしまうの
だろうか!!?
どうしてもそれは死守したい!!
ジンクスを破って、次のステップに行きたいではないか!!

この時わずか交際2ヶ月と1週間。

滑り出した僕の手は止まり、ネームは未完のまま、見る
事すら忌々しく感じるようにまでなってしまった…


つづく
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