■11
前回の話
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第一話
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「ありがとう、○ちゃん…」

M美はとても弱々しく答えた。
先ほど、自分の家が如何に裕福かを自慢していた女
と同一人物とは思えない程に。
そして
「もうライブ見れたから十分だわ…」
と。


M美と僕はそこを後にすると、またしてもM美のおごりで
普通の低価格帯のレストランに行き、軽く食事を取った。
帰りの渋谷駅までの道すがら、ふと僕は
『今ここでM美の肩を抱き寄せたりしたら僕に
惚れる
だろうか?』

などと、あまりにガキっぽい妄想をした。


だがそれにしてもさっきの女達だ。
どんな理由があれ仲間外れ無視なんて最低だ!!
僕は心の中で、あのライブハウスにいたM美を無視して
いた女達と会話をしていた。

確かにM美はふてぶてしいし、偉そうな態度だよ!
悪徳商法で周囲の人間に迷惑もかけるし、虚言癖も
あるさ。
話と言えば自慢話か自分の不遇自慢がうざい…

でも、でも、そんなM美にだって…っ!!!!



M美弁護












M美にだって…………………………………









ダメだ!!

良いところがないじゃないかっっっ………………!!!!


M美弁護2



そうなのだ。
考えてみれば僕はM美とは知り合ったばかりで、ここ
までおごってもらったとは言え、まだ会う事自体2回目
なのだ。
さっきの女達に
「お前等にM美の何が解るんだよ!!?」と言っても、
「会うのが2回目のお前こそ、あの女の何が解る!!?」
返されるだろう…
好き好んで無視する程、連中だって子供じゃない
はずだ。
M美とさっきの女達の間の過去の事を考えると、どう
ひいき目に見ても、M美に同情すべきではない。
見下して陰口を叩きながらも、何だかんだ言って付かず
離れずを続けているA子S子の方がはるかにマシ
だったのだ…


やがて津○沼駅に着くと、M美は
「今日はありがとう。ここからはこれで帰れる
でしょ?
余ったお金でタバコでも買ってね。」と言い、僕に
千円札を2枚差し出した。
帰るのに必要な額は160円だったので、言うまでも
なくそれはもらい過ぎだった。

やがて雑踏の中に小さくなって行くM美に、僕も背を
向けた。

話がつまらない、性格がつまらないのは仕方のない事だ。
しかしせめて悪徳商法・マルチ商法・
ネズミ講
なりから手を引けば、ここまで、
お前の評判が失墜する事はなかったのではないだろうか?
そう考えながら僕はA子の待っている家路に急いだ。





それから数日後。
何よりも事後報告を楽しみにしていたS子がまた遊びに来た。
彼女はおそらく僕が、M美と妙な関係に発展していたら
更に喜んだに違いなかっただろう。
(まぁ仮にあったとしてもA子の手前、正直に報告する
はずもないが)
とは言えM美にここまで出費させた事は、彼女から
して評価に値しただろう。


S子「でも全くA子には還元されてないわね」

「しょーがないじゃん!!
A子が欲しがりそうな物なんて買わせる事が出来る訳
ないよ」

そんな僕とS子のやりとりを見ながらA子は
「○ちゃん、もうこんな事しちゃ嫌だからね…」
涙目で訴えた。


A子は可愛い女だった。

いや、こう書くと元カノののろけ話にしか聞こえない
だろうが、彼女の可愛らしさは単に容姿の可愛らしさ
とは違った、何か頼りなげな、儚げな小動物のような
雰囲気があった。
(少なくとも経験の乏しい当時の僕にはそう見えた)


また彼女の涙目を見ると、どんな男をも
「守ってあげなきゃいけない!!」と言う気分にさせる
ような、まるで人を切なくさせる才能めいたものが
あった。


A子実写



「大丈夫だよ!!」
僕は笑った。





そんなA子に、この時既に
他にがいたなんて。




■12へつづく
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