かつて付き合ってた女から誕生日にもらった、
手編みのマフラーが2本、まだ手元に残っている。
どちらも黒一色の普通の形のマフラーで、
イニシャル等の個人を特定するような
要素も特に入ってない、没個性だが
スタンダードで、合わせる服に頭を痛めずに
済むマフラーだ。


包茎


まぁ女も大概同じような事を考えて
編むのか、あるいは僕のカノジョになる女が
似たデザインセンスを持ってるのか定かで
ないが、うち1本を手放そうかなと思っている。

と言う以前に、何故今まで捨てないで
持っていたかと言う事だが、実はかつて
これを捨てようと思って、ゴミ袋に入れた
ところ母親に見つかったのだ。
すると母が「これはとても上手に編めているから
捨てるのはもったいない」と言ってきた。
かつて渋谷で古着屋を経営していた母の言葉だけに、
僕はその言葉は信用に足るものと解釈した。



それから何年も僕はこのマフラーを所有し
続けてきたのだが、正直言うと新しい女
出来る度に冷や冷やしていた。
理由は、もし何かしらの拍子にこのマフラーが
新しい女に発見された場合、明らかに
手製の物であるこのマフラー、下手したら、いや
下手しなくてもそれがケンカの原因に発展する事
も充分あり得るからだ!!
「まだ未練があるの!?」的な…)

正直、これを編んでくれた女に対する感情は
良い意味で終わった人間関係のそれだ。
憎しみも未練もない。
しかし捨てるのはどうも忍びないので、
せっかくだから誰かに活かしてもらおうと
思い、ネットオークションに出品しようと
思っている。

ただあえて僕は思った。
バレンタインの近い今、手編みは少々ニーズあるん
じゃないかな?と。
見栄を張って、編む技量も時間もないのに、
カレシにマフラーを贈りたいと思っている
若い女に、出来たら落札してもらいたいな、と。

若い男だったら、自分の女が手編みと言って
差し出してきた物を、疑いもせず喜ぶんだろうな~
だとしても。

たぶん僕も当時はそうだったんだろう。