はじめの一歩
三田松阪公園でのお散歩に、またまた失敗した僕。
「やっぱ、ここは幹線道路がグルッと囲んで、高速も近くにあるし、音が怖いのかな?」
ぷれこは言う。
「耳折れてるのに、音に敏感だね、くまきちは」
なんだよ、それ。
耳折れだから、なんじゃないの?
松阪公園ではカラスも鳴いたし、鳩も何羽もエサをつついていた。
小学生ぐらいの男のコが自転車に乗って、公園内を周りながら僕を興味深そうに見ていたけど、僕があんまりビクビクしていたので、ぷれこは声をかけることができなかったんだって。
「でもさ、くまきち。せっかくいいお天気だから、もう少し頑張ってみようか」
そう言うと、僕はキャリーごと自転車の後ろのかごに乗せられて、移動した。大通りにはひっきりなしに騒音をまき散らしながら車が走っていた。遠くにピーポーピーポーなんていう音も聞こえる。路地の角では家の新築工事も始まったばかりで、大工さんがトントン、トントン威勢よく金槌をふるっていた。
そんな音も怖かった。
「やっぱ猫にはキツい環境なんだねぇ」
ぷれこはそんなことを言いながら、自転車を押して歩いて行った。僕の様子をときどきみながら。
大きな交差点を渡って、坂道に入る。
ぷれこは、スーパーの駐輪場に自転車を置き、リュックキャリーを背負って坂道を上った。
「さすがに、この道は自転車は無理だわ……」
ほんの少し上った先に、また公園があった。
「ここにはねぇ……、野良猫さんたちが大勢いるんだよ。でも、わたしがついてるから心配しなくていいからね」
ぷれこはそう言って、階段になっているところを上ったんだけど……。
「あれぇ、すっかりキレイになっちゃってる!!」
そこの公園も、松阪公園みたいに整備されて、地面は砂地、新しいカラフルな滑り台をまんなかに、周りにいくつかベンチが置いてある、そんなふうになっていた。
「ちょっと前まで、地面は土のままだったし、お砂場もあったし、もっともっと太い木がいっぱいはえてて、小山のとこにはブッシュもあって、もっと広かった気がするんだけど……」
ぷれこはキョロキョロあたりを見回した。
「あんなマンション、あったっけ?」
公園の奥に新しいマンションが建っていた。崖の中腹みたいなところにある公園だけど、もしかしたら半分、切り崩されてマンションになったのかもね。
いっぱいいると言っていた野良猫さんたちは、一匹もいなかった。
以前からある古い木製のベンチに、ぷれこは僕をおいた。
僕はまた、キャリーのなかでジッとしていた。
ここには鳩がたくさんいた。
鳩も僕を警戒しているのか、近づいてこない。
しばらく、ぷれこは僕をみつめていたけれど、諦めたのか、携帯を取り出してお友達に電話していた。
「今日は違う公園に来てみたけど、やっぱりダメみたいよぉ」
だってさ、松阪公園ほどじゃないけど、ここだって車の音、してくるよ。
「やっぱり猫は猫だねぇ。。犬とは違うんだねぇ。」
またそんな、ムタイなことを。。。。。
松阪公園に比べると、ここはずいぶん静かだった。スーパーの裏手、緑の多い高級住宅街へと続く急坂の途中にある。
お兄さんがひとり、ベンチでお弁当を食べて煙草を吸っていた。
ぷれこが長話しているうちに、なんだかずいぶん落ち着いてきた。
電話を終えたぷれこは、ホケーッと日向ぼっこしている。
僕は、意を決してキャリーから出ると木製ベンチの背と座面の間の隙間からベンチの裏へとスルッと降りた。
ぷれこがあわててカメラを構えたときには、すでに椅子の裏。
そして、これが記念すべき僕の(土の上を歩いた)第一歩になった。
はじめの一歩
遠くの車の音は、まだ気になるし
一歩、歩いては座り込んだりしながらも
葉っぱの匂いを嗅いだりもして
ヘッピリ腰でベンチへ戻ると
(ぷれこが乗せてくれたんだけどね)
積極的に、キャリーへ入った
ほっ
家に着いても、すぐキャリーから出てこられなくて
ぷれこには笑われたけど、でも僕
頑張ったんだよ。
はじめての一歩
感動したとは、とてもいえないけど
ドキドキしたのはたしか、かな。
2006/3/25
