性教育ビデオの衝撃 | スコ猫くまきち日和+

性教育ビデオの衝撃

dakoさんの「育児オトコ」への道 で、セックスについてどう教えようという連載が始まった。
そこで、ちょっと思い出したこと。

わたしも性教育は思春期にキチンとすべきだという気持ちは持っている。
特に、妊娠、避妊、堕胎に関することはキチンと教えておいたほうがいい
と思ってはいる。
でもさ……。
実際にいつ、どんなふうにということになると、
やっぱりとっても難しいよね。
たぶん、ひとりひとりピッタリな時期というのは、みんな違う。
性の目覚めには、かなり個人差がある。
早いコは年々早くなっていると言われている。
でも、一方では遅いコ、奥手なコもいるんじゃないのかな?

わたし自身はかなり奥手だった。
ファーストキスなんて、たぶん、ええ~っ!!!! と、絶叫されるほど遅い。
初体験だって、ええええ~っっっ!!!! と、のけぞられるほど遅いと思う。
というのも、かなり嫌悪感があったんだよね。
だからまぁ、かなりイビツなタイプだと思うので、わたしの話は参考にはならないかもしれない。
ただ、ホントにいろんなタイプがいる、ということは、
性教育というとき、考えたほうがいいんじゃないかな?
特に、性というプライベートな問題は、平均値でいっしょくたに考えて教えるのはどうなのか? と、思うのだ。

性の低年齢化、10代の性は乱れてる、ヒドイ、凄いっ、気持ちいい
あおるものは数多くあり、派手な話ばかりが取り上げられ、
好奇心だけを刺激する世の中にあって、
実際の10代はどう思っているんだろう?
本当に中学生でしてなきゃ恥ずかしいと思うのか?
そういうコばっかりなのか?
わたしには、そうは思えないんだよね、どうしても。
大人たちが作った流行に乗ってみせるコだって当然いる。
好奇心いっぱいの10代だから、大人ぶりたいコもいるし、
注目されたいコもいるだろう。
だから、派手な化粧をして、
「ええ~っ、中学で初体験なんて当たり前じゃん。みんなやってるよぉ」
「アタシ? アタシはエヘヘっ、13歳ぃ」
媚びた視線でテレビに映る女のコを見るたびに、
わたしは痛々しいと思ってしまう。

以前、10代で妊娠・出産・堕胎していく女のコたち と格闘していた
広島の産婦人科医の話を書いた。
その取材のとき、やはり早期の性教育は必要だという話になり、
その先生の講演会に出席したことがあった。
母親向け、保険の先生向けの講演会だったけれども、
そのとき、PTAで作ったか何かの性教育用のビデオも上映された。
そのビデオを小学校高学年になったら見せている……という話だったと思う。
もう、ウロ覚えなんだけどね。
で、そのビデオを作った女性たちは、低学年から見せるべきだとか
幼稚園から教えるべきだと言っていた。
幼稚園ぐらいの子供は素直に「赤ちゃんってどこから生まれるの?」という興味を持つ。
そういう機会をとらえて、コウノトリだのキャベツがどうのとごまかさずに、
「お父さんとお母さんが仲良くするから生まれるのよ」
ぐらいの話をしたほうがいいという。
うむ、それはそうかも……と、そこまではわたしも賛成だった。

そして、いよいよビデオの上映。
主催者側の女性たちは「感動的なのよぉ、とても」と、熱く熱く語っていた。
わたしも期待をもって見た。

内容は、そのものズバリの出産シーンだ。
ドラマや映画のような上半身を映し出すなんて甘いもんじゃない。
無修正ノーカット版。
赤ちゃんの頭が出てきて……と、正真正銘の出産を
真正面から映し出したビデオだった。
もちろん、撮影に協力したお母さんの勇気と、
正しい性教育のためにというその意気には拍手を贈りたい。
ただね、それでもね……。

当時、わたしは20代後半で、いくら遅かったとはいえ性体験済みだった。
かつての潔癖は胡散霧消し、エッチ大好き時代だった。
そんなわたしでも、かなりショックだったんだよね。
声も出ないというか、息が詰まるというか。
こんななのか? と、思ってしまった。
グロテスクに見えてしまった。

出産された方々には本当に申し訳ないいぐさだと思うし、
出産というのは、実際はそれはそれは感動的な瞬間だとも思っている。
女の誇りでもあるはずだ。
同じ女として、そんなふうに感じたわたしは恥を知るべきかもしれないけれど……。
 

正直、出産が怖くなった。
見なきゃよかったと思った。
あのビデオも「わたしは子供、産まなくていいや」と思ってしまった
一因だったかなとも思うのだ。

性教育というのは、当時のわたしより
もっともっと感受性の強い世代のコに施される。
だから、そのあたりの微妙で繊細な感受性を
損なわないようなものであってほしい。

もちろん、同じビデオを見て、感動するコもいるだろう。
女であることを実感するコもいるだろう。
わたしも早く大人になって赤ちゃん産みたいと思うコもいるだろう。
でも、わたしのように怖くなる女のコだって、きっといると思うのだ。
だいたい初潮にだって、複雑な想いを持つ。
自分が大人になることを、どのコもどのコもすんなりと受け入れていく
というものではないんじゃないのかな?

ひとりひとりの個性と成長に合わせて、適正な時期に施される性教育。
なんていうと、すごく難しそうだけど。
理想はやはり家庭で行われるべきものなのかなという気がしている。
家族の関係が、親子の関係が、キチッとできていなければ、
できないものだとも思う。
性教育をする前に、親と子がどれだけ信頼しあえていて
コミュニケーションがとれているか。
そこから問われるものかもしれない。

だから、親は迷うし、困ってしまうのかもしれないね。
でも、迷いながら、戸惑いながら、
それでも子供の身体のために、未来のために
一生懸命伝えるということは、とてもステキなことだと思う。