昨晩、友人に会うために、外出をしました。
彼とは今から十四年前に、熊野にある天河大弁才天社で出会いました。
龍村仁監督によるドキュメンタリー映画、「地球交響曲第三番」の中で、
故、星野道夫氏の友人として彼が出演しています。
星野さんの本から彼の存在を知り、
また映画を通して、彼の不思議な魅力に惹かれました。
アラスカのネイティヴインディアンであるBob Samは、
古くからネイティヴの中に伝わる神話を語り継ぐ語り部として、
今もなお、数々の神話を語り、またその集いを通して、
人々と触れ合い、それぞれの文化やルーツに誇りと敬意を持って
後世に伝える活動を続けています。
南東アラスカの湿潤とした森の中に、あるとき白人達が乗り込んできました。
彼らは、アラスカ先住民族たちの文化や言葉を奪い 、
そして先住民達の大切な先祖達の墓までも、荒らしていったそうです。
荒れ果て誰も近づかなくなった祖先達の墓を、
ただ一人、もくもくと掃除する若者が現れました。
誰に言われるでもなく、彼は一人、祖先達と無言の会話をするかのように
崩れた石碑を起こし、ゴミを払い、墓地をきれいにしていったのです。
雨の日も、風の日も。
休むことなくそれはずっと続いたそうです。
それが、Bob Samでした。
そんな彼の姿を見た古老たちが、
次なる彼らの大切な神話の語り部にと、Bobを指名したのだそうです。
彼が出演した映画が、天河神社で上映され、
その縁で、本人が天河にやってくる、という情報を得た私は、
彼に会うために再び天河神社を訪れました。
初めて会ったときのBobさんは、
まるで、天河の森の精霊と会話をするように、境内に一人立ち尽くしていました。
おそるおそる、Bobさんですか? と声をかけると、
静かに、ゆっくりと
「Yes」
と答えが帰ってきました。
それが、最初の出会い。
そこから、何かが変わり始めました。
不思議なことがたくさん起こりました。
そして奇跡のようなご縁の繋がりがするすると生まれ、
出会いから二年後、私は、Bobさんの自宅にホームステイをさせてもらっていました。
彼が一人で掃除をし続けている先祖達の墓地を、一緒に歩かせてもらい、
私が去る前の夜、Bobさんは私に、クリンギット族である彼のクラン(氏族)
である、「ワタリガラス」の羽を二本、授けてくれました。
そして、そこから瞬く間に12年の月日が流れたのです。
風の便りに、彼が再婚したことや、
日本と更に深い繋がりが生まれ、度々日本を訪れながら
ストーリーテリングの活動を続けていることを聞いてはいましたが、
12年の間、会うこともなければ手紙を交わすことさえないまま、
時間が過ぎていきました。
それが今年。
やはりfacebookを通して、彼との繋がりがまた生まれました。
そして、昨夜のストーリーテリングが行われる集いの招待を
Bobさんからいただいたのです。
12年もの間、連絡を取り合うこともなかったというのに、
彼は私のことをはっきりと記憶していてくれたようで、
再会したとき、Bobさんは微笑み、腕を広げHugをしてくれました。
12年の月日をいとも簡単に飛び越え、
アラスカの地で別れのhugを交わしたあの時間に、
一瞬にして戻ることができたのです。
時間や言葉や、その手段を必要としない友情が、
今ここにあって、それが私の世界の中にあるんだ。
そのことに、私はただ、とても感動していました。
夕べBobさんが話してくれた神話は5つ。
不思議な、でもとても今の現代にも通じる何かヒントや
普遍的な真理が垣間見えるようなストーリーでした。
この神話についての感想は、
またの機会にしたためることにしようと思う。
一夜明けてもまだ、夕べの夢のような再会が忘れられない。

