久しぶりに日本橋三越に来た。
昭和の良き時代の象徴、豪華さと厳かさを兼ねた建物は、
最新のスマートなビル群とは別世界のデザインだ。
野菜を煮る時に煮崩れを防ぎ、味を浸み込ませるために、
料理の下ごしらえで面取りという作業がある。
料理人は彫刻のような見事な形にあしらえる。
美味しい日本酒を飲む。
ほのかな香りが口から鼻に抜け、更には、料理を引き立てる。
どれほどの時間がかけられて、今、ここにあるのか。
世界で活躍しているアスリートと話をする。
厳しい鍛錬を心から楽しんで様々な工夫をしている。
そのパフォーマンスに人々は感動する。
職人の作る細部までこだわりのある作品、
突き詰めめていくその世界に人は魅力を感じる。
注文してから半年待ちなんてのはザラにある。
本物には合理性という言葉は当てはまらないこともあり、
本物には、本物のためのコストパフォーマンスがある。
その場、その局面だけを見れば無駄と思えること、
必要性を感じないこと、生産性を下げてしまうことも、
ひとたび、本物に出会った時、その物を手にした時、
それを口に入れた時、人は幸せを感じたり感動を覚える。
できている、伝わっている、納品できた、クレームもない。
その上で利用する人の人生を豊かにするために、
もうひと手間かけることがプロフェッショナルだと思う。
これから接する人を喜ばせたい。
相手の笑顔を想像して、ひと手間かけているその時間が、
実は、自分の幸せなのだと、そう思う。