こんにちは、税理士の花光です。
税理士業を営んでいる立場からすると、今の時期は所得税確定申告作業の真っ只中になります。繁忙期ではありますが、普段はなかなかお会いできないようなお客様とお話しする時期でもあります。「1年に1度のお祭り的忙しさ」と捉えることもできるので、体調に注意しながら乗り越えたいものです。
そのような業務の傍らで、ときどきセミナー講師として登壇する機会もあるのですが、先日、講演後の関係者との雑談の中で争族とも呼ばれる遺産分割争いについて聞かれたので、今回はそのテーマから。
相続人間で遺産分割協議がまとまれば何も問題ない訳ですが、常にまとまるとは限りません。遺産分割が揉めると、争いを解決するために家庭裁判所に舞台を移すことになります。最高裁判所「司法統計年報(家事事件編)平成30年度」を見てみると、15,706件が新たに審判、調停に持ち込まれており、この件数は増加傾向にあります。特に、遺産額5,000万円以下の遺産分割争いが4分の3を占めています。
では、争族になっている場合、相続税申告はどのようになるのでしょうか。遺産分割協議がまとまるまで、相続税申告はしなくても良いのでしょうか?
相続税の申告と納税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に、被相続人の死亡の時における住所が日本国内にある場合は、被相続人の住所地を所轄する税務署に行うことになっています。相続税の申告は、相続財産が分割されていない場合であっても上記の期限までにしなければなりません。分割されていないということで相続税の申告期限が延びることはありません。そのため、相続財産の分割協議が成立していないときは、各相続人などが民法に規定する相続分又は包括遺贈の割合に従って財産を取得したものとして相続税の計算をし、申告と納税をすることになります。
その際、相続税の特例である小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減などが適用できない申告になりますので注意が必要です。
この小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減が適用できないというのが厄介で、ちゃんと分割されていればさほど大きな納税額にならないはずなのに、争族になったばかりに未分割で申告せざるを得なくなり、慌てて納税資金の準備に迫られるということにもつながりかねません。
もちろん、原則として申告期限から3年以内に分割があった場合には、修正申告又は更正の請求において上記の特例を適用することができるとされてはいるので、後から取り返すことは可能なのですが、最初に納税資金を用意する分、面倒であると言えるでしょう。
やはり、相続対策の基本は「円満相続の実現」なので、早い段階から準備したいものですね。
<参考>
No.4208 相続財産が分割されていないときの申告
http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4208.htm