2016年『紅白歌合戦』のテロップフォントは、モリサワの《リュウミン》 | フォントって大切だよ♪

 

2016-12-31

 

以前のコメント欄にも書いておりましたが、公私ともに一からやり直すつもりで……と水面下でこっそり準備していたら、紅白の書体記事を書く季節になってしまいました。テレビとアニメといえばフォントワークス。映像業界では同社のシェアが圧倒的に大きいことから、今年も毎年恒例のテロップ明朝だと予想し、そのつもりで記事を考えていました。

これは同社が誇る最高級書体である筑紫明朝をベースに、画面上でも読みやすくなるようにとアレンジをくわえたものです。作者の藤田重信さんは今年の『プロフェッショナル』にも出演してらっしゃったし、まずテロップ明朝で間違いないだろうと。仮にテロップ明朝でなかったとしても、フォントワークス製の何かを選ぶだろうと。そうでなければ、『プロフェッショナル』でフォントワークスを特集した意味がないだろうと、勝手にそう思い込んで勝手に脳内で記事の段取りを考えていました。紅白からプロフェッショナルに話を進めて、そこからさらに写研と石井明朝体に持っていけば完璧だと、紅白が始まるまえから、すでに脳内ではあらすじが完成していたのです。

ところが、そこに出てきたのはフォントワークスではなく、モリサワのリュウミンでした。出版や広告の世界では定番のリュウミンとはいえ、テレビで見かける機会はそれほど多くありません。あまりにも予想外のモリサワだっただけに、考えていた記事のすべてが崩れ去り、最初から構成を考え直さなければならなくなりました。モリサワということで、『真田丸』や『君の名は。』のA1明朝とか書けばいいのかなとか、とりあえずそんなことが思い浮かびました。石井と筑紫とA1はいいものなのですよ。

というわけで、最初からやり直しです。個人的には写研の血というか、石井明朝体の面影が感じられる筑紫系のほうが好きなのですが、テレビで見るリュウミンも何だか新鮮で、もう少しウェイト(太さ)を落としたほうがリュウミンは綺麗なんじゃないかなとも思ったけれど、これはこれでいい書体体験ができました。金属活字由来の矜持を今に伝えるリュウミンに対して、色っぽい筑紫といったところでしょうか。このあたりをとっかかりにして、とりあえず紙に下書きするところから出直してきます。

よいお年をお迎えください。