04 | Roots

04

自分の感情は分からなかった。

悲しいとか寂しいとか

そういう類の言葉とは違っていた



現実味が無い。



あたしは無言で自分の席に座った

すすり泣く声だけが聞こえる中

どれくらい時間が経ったのだろう

ふと気付くと校内放送が流れていた


《 臨時の全校集会を行います。生徒は体育館に集合して下さい》


嫌だ、行きたくない

そう思った

話す内容は分かっていた

現実味の無い今ならどうにか気持ちを保つ事が出来る

今現実を突き付けられるのはキツイ

受け止めきれる自信が無い

行きたくない

気分が悪い・・・


クラスメイトが静かに動き出す

あたしはその場を動けなかった

何を見るでもなく、ただ座って

朝に聞いた母の言葉を頭の中で確かめるように繰り返し

重い空気の渦の中で

なんとも言えない気持ち悪さに襲われていた。




・・・さん、高橋さん

気付くと隣のクラスの担任があたしの目の前に立っていた

教室にいたクラスメイトはみんな体育館へ移動したらしい



行きますよ



そう促されて、何も言葉を返せず

ただ隣のクラスの担任について行くしか出来なかった


怖い。

行きたくない。

何も聞きたくない。

皆に言わないで・・・





体育館にはすでに全校生徒が集められていて

違う学年の生徒達が臨時集会の理由を

あーだこーだと噂している様子だった

同学年の生徒の列は

ただただ静かだった。



校長が静かに登壇した

ザワついていた体育館が、スッと静かになる。


『2年生の宮本巧輔君が、昨日亡くなりました・・・。』


近くのクラスメイトから、わっと泣き声が漏れた

そこからは覚えていない




あぁ・・・言われてしまった。

これで嘘でも冗談でも無いことがハッキリしてしまった。

こんな大規模な嘘は誰にも得がない

本当なんだ

現実なんだ

こんな大勢の前で、校長がそんな事言うなんて。

全校生徒がその事を知る事で

その事実を聞いた生徒の数だけ

巧輔がいなくなってしまったという現実が増えて行く。

《 巧輔が死んだ》という確定ボタンが体育館中のあちらこちらでどんどん押されて

本当はどこかに隠れているだけだった巧輔の姿が

確定ボタンの数に反比例して

少しずつ消されていく

綺麗な温かい赤色が、少しずつ無色透明になっていく

そんなイメージが、頭の中でずっとループしていた。