【故人からの"ギフト"】

日々、生命のお見送りのお手伝いをさせていただいている中で感じているのは、故人様は遺された方々に必ず何か大切なメッセージ、"ギフト"を遺して旅立たれるのではないかということです。

90代のお父様のお見送りでした。
通夜式の日、担当からは参列者はご子息ニ人だけかもしれないと聞かされていました。
故人様は関西地方のご出身で、自立されたご子息もお二人とも関西地方にお住まいでした。
数十年前に仕事で関東に来られてからは奥様と二人で生活をされており、十年前に奥様を亡くされてからも施設には入らずに最後まで一人で自立して生活されていらしたそうです。
ごきょうだいはすでに亡くなられていたり、ご高齢だったり、遠方にお住まいで、参列は難しいとのことでした。
また、ご子息もしばらく離れて暮らしていたため、お父様のこちらでの交友関係がよくわからず、どこに連絡をすればよいのか見当がつかないようでした。

通夜式は午後6時になり開式。式場には、ご子息二人だけが並んで座られていました。

開式からほどなくした頃、式場入り口にご年配の男性が一人、女性が二人が入って来られました。

『身内だけで葬儀をされると聞いていたのですが、お焼香だけでも上げさせていただいてよろしいですか。近所のものなのですが。』

『もちろんです。故人様も息子さんたち喜んでくださると思います。』

焼香だけでと遠慮されていましたが、時間があったらぜひ閉式後に息子さんたちにお会いになっていただきたいとお願いをしました。

故人様は、ご自宅で亡くなられていました。
その姿を発見したのは、週に2回ご自宅に訪問していたヘルパーさんでした。
ご近所の方は、そのヘルパーさんから故人様が亡くなられたことを聞いたそうです。家族葬であると聞いていたので、式場に来ることを躊躇していたそうですが、長年仲良くしていた故人様に、最期に直接「ありがとう」を伝えたくてお越しになったとおっしゃっていました。

閉式後、故人様のお柩を囲み、ご友人方はご子息にお父様の一人暮らしの様子をお話くださいました。

ご遺影のボルドー色のセーターを気に入ってよくお召しになっていたこと、
いつも身だしなみには気をつけていらっしゃったこと、
毎日、早起きをして庭の手入れ、スーパーへの買い物と、規則正しく生活をされていたこと、
最近は腰が痛いとおっしゃっていたこと、
もう少し元気な頃には、近所の庭の枝が伸びていると、高枝バサミで剪定してくださったこと、
町内の旅行にもよく出かけていたこと、

そして、何よりも離れて暮らすご子息のことをいつも気にかけていたこと…

『面倒見がよくて、◯◯さんは、ほんとにジェントルマンでしたよ。』

故人様を表して、ご近所の方は何度もこの『ジェントルマン』という言葉を使っていらっしゃいました。

故人様は、奥様を亡くされてからの10年間は、一人で暮らしていらっしゃいましたが、決して一人ではなかったのだと思います。しっかりとその土地に根を張って、ご近所ともお付き合いをされ、趣味も楽しまれ、困っている人がいれば力になり、
そこには、他の誰のものでもないお父様の人生があったのです。

ご子息は、高齢で離れて暮らしているお父様のことをいつも気にかけながらも年にお正月とお盆くらいしか会いに来られなかったことや最期の時も一人で逝かせてしまったことに後悔のお気持ちがお有りのようでした。
でも、このご葬儀を通してお父様は、最期の時までご自分で選択し、ご自分の人生を生き抜かれていたことをこのようなカタチでお示しくださいました。
これは、お父様の大きな愛情に他ならないと思いました。
そして、たとえ参列者が二人だけかもしれないとわかっていても"お葬式"を営まれたことに、ご子息のお父様に対する深い愛情を感じずにはいられませんでした。
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