【お花が届けてくれた最期のメッセージ①】


私たちPrayer's marketは、オリジナルな葬送空間をプロデュースするフリーランスのプランナー、フローリスト、切り絵のアーティストで構成されたフューネラルチームです。


桜が咲くと思い出すご葬儀があります。


ホントに不思議なのですが…

ご葬儀の時に、ご遺族との打ち合わせではお伺いしていなかった、わたしたちが意図していなかった、故人様とご縁のある季節のお花が式場にやってきてくれることがあります。。。


その時は、桜の花がそれでした。。。


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桜の花は染井吉野が有名ですが、日本の桜の種類はなんと200種ぐらいあるそうです。

例年、年が明けてほどなくする頃には、花市場には桜が出回るようになります。

春の式場では、早咲きの寒緋桜や寒桜、河津桜などから生けはじめ、2月頃からは、東海桜、彼岸桜、雅桜も生けました。

そして、この時に式場に届いたのは吉野桜でした。


開式前にご参列の皆様には、今日の桜の花は吉野桜であること、吉野桜は奈良県吉野山に咲く山桜の総称で染井吉野の元となった桜であることなどをご紹介させていただきました。


すると、閉式後にご参列されていたご年配の男性から呼び止められました。

『あなたは先ほど、あの桜が吉野桜だとおっしゃっていましたよね。それを聞いたら、◯◯さん(故人)との思い出が急に鮮明に蘇ってきたんです。わたしは、◯◯さんの大学時代の後輩で、とてもお世話になりました。実は以前に◯◯さんと吉野山に吉野桜を観に行ったことがあるんですよ。』


故人様は関西の大学をご卒業されていました。その方は、関西から通夜式にかけつけられたのです。その日の新幹線で帰らなければならないとのことでしたので、すぐにご遺族をご紹介させていただきました。

そして、ぜひその吉野桜の思い出とともに故人様にメッセージを書いていただけないかお願いをしました。


そのメッセージカードは、告別式で代読させていただきました。


まだ若かりし頃、故人様と観た吉野桜。

式場の吉野桜をご覧になって、夢を語り合った当時のことが懐かしく思い出されたこと、東京と関西と離れて暮らし、何年に一度しか会うことはなかったけれど、生涯にわたり先を行く先輩のその背中にどんなに勇気づけられ、励まされたかなどが綴られており、最後は「大変お世話になりました。ありがとうございました。」と結ばれていました。

代読させていただいている時、最後のその一行でわたしは胸が詰まってしまい、声が震えてしまいました。


上手く言葉にならないのですが、最期にあの世に持って行くのは、富とか名誉なんかではなくて、人と人とのご縁への感謝、人が人を思う尊い気持ちなのではないかと思いました。


春には、たくさんの種類の桜が花市場に届く中で、吉野桜とめぐり逢えたのは、やはり故人様がこの桜をお呼びになったのではないかと思わずにはいられませんでした。 



*写真は吉野山観光協会のページからお借りしました。