小雨のなか、7月1日にリニューアルされた平和公園レストハウスへ。広島文理科大学旧校舎(広島大学旧理学部1号館)が建築される少し前、昭和4年に造られた大正屋呉服店(清水組)、中区中島町1丁目1番にあります。屋根から外壁まで大幅にリニューアルしておりました。広島市はながらく、この中島町で唯一生き残った被爆建造物を撤去して丹下健三に新しいレストハウスを建てさせようとしていました。広島市の被爆建造物に対する考えは極めて冷淡で、ユネスコや市民団体、研究者らの反対を無視し続けた対応が続いておりました。さまざまな方々の努力で撤去が先延ばしになり、現在は広島市の「観光資源化」方針により、存続が「許された」建造物です。
休憩所ですので、南西側にはエレベーターとトイレが別棟で付設されていました。文化庁の度重なる指導もあり、当時の柱などが残され、一部見学できるようになりました。外壁は修復の上塗りがはがされて当時のままの部分が現れていました。レンガ風のスクラッチタイルも昭和初年のRC建造物の特徴的な面持ちを醸し出しています。復元も当時に似せた技術で、なじんでいました。ファサードのコーニスの廂に3つのライトはなかなか斬新なデザインだったかと思います。2階部分はカフェになっていましたが、音響環境が悪く、かなり響きます。3階は旧中島町のジオラマが中心にあり、江戸時代から当時の状況に関する展示や、片渕須直監督によるアニメ映画『この世界の片隅に』のなかの、大正屋呉服店がでてくるシーンなどが解説されていました。