アレクサンダー・テクニーク(AT) とは、最近日本でも注目を集めているボディ・ワークです。


オーストラリア出身のシェイクスピア俳優であったF・M・アレクサンダー(1869-1955)が自分の声のかすれという病状を治すために生み出した、「身体の使い方」に関する知識と実践の積み重ねの集大成が、「アレクサンダー・テクニーク」として、ヨーロッパやアメリカに広がったものだそうです。


欧米の演劇や音楽学校では、基本科目のひとつに数えられるとか。


個人的には、歌を歌う時に微妙な身体の使い方の違いで声の出かたや質がまったく変わることから、 ATに興味を持ちました。


ヨガとも共通するような部分もあり、このブログの読者のなかにも関心のある方がいるかと思い、2冊ご紹介します。


小野 ひとみ 著 アレクサンダー・テクニーク やりたいことを実現できる〈自分〉になる10のレッスン


より、まずATの基本概念を説明しましょう。


Primary Control とは、身体にはもともと調整作用が備わっている、という考え方。特に Head Lead といい、頭からリードしていくとされます。


Means Whereby とは、動きの最終的な形よりもむしろ途中のプロセスに注意を向けることの大切さ。


Inhibition と Direction はそれぞれ、主にマインドとボディの領域にかかわる概念です。


インヒビションとは、自動操縦で無意識に動いている身体の癖を意識し、「ちょっと待てよ」という意識にスペースを作ることをいいます。


ダイレクションとは、身体を動かす時に、自分で決めた行動を起こすということ。具体的には4つの方向性に注目します。


1) Neck Free

2) Head Forward and Up

3) Spine Long, Back Wide

4) Knees Forward and Away from each other


これについては、言うことなしで、ヨガにおける身体の使い方と共通するので、納得することしきり。



芳野 香 著 アレクサンダー・テクニックの使い方―「リアリティ」を読み解く


では、もう少し具体的に実際のレッスンではどんなことをするのかが分かります。さらに、心(マインド)と身体(ボディ)の関係、またこの二者の「ずれ」によって、色々な不都合が身体に現われることを描いています。


私自身、ヨガを教えている経験からも言えることですが、往々にして「くせ」となっている身体の使い方は、本人は無意識であることが多く、その「くせ」を意識することが、一番大きな”はじめの一歩”であることが多いです。それさえクリアすれば、意識の向け方ひとつで、身体は自然に良い方へと、自分で変わっていくことができるともいえます。


芳野氏の言葉を借りれば、


「しなくてはいけないこと」  ではなく 「しなくてもいいこと」 を知る (=第4章タイトル)


「からだの使い方」 を考えることは 「自分と向き合う」 ことでもあります。 (p 273)


自然で機能的な 「からだの使い方」 を得るには、「しなくてよいこと」 を 「しない」 とともに、この 「許可」 の感覚が大切なのである。 (p 19)


この本の方が、少々専門的かもしれないものの、ATの全体像をつかむには適していると感じました。

ヨガとは、歴史的な関連は無いボディワークなのですが、西洋生まれのボディワークの中では、とても東洋的な趣のあるアレクサンダー・テクニークです。


ココロとカラダについて、ご興味のある方には、お勧めです。


ただ、シンガポールでは、残念なことにATの指導者がいないらしく、色々人に聞きまわっていますが、いまだに先生が見つかりません。


文献ばかり読んで、耳年間になってしまった私・・・ぜひ一度、ATのレッスンを受けてみたいです!