敵 | やまちゃんのホビー日記

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映画、グルメ、サバゲーなど趣味の日記です。

 

原作:筒井康隆 監督・脚本:吉田大八 

「敵」を観ました。

 

ストーリーは妻に先立たれ一人孤独に一軒家で暮らす老人が自分の死を意識しながらも平穏な日々を送っていた。しかし、2人の女性との出会いによって少しづつ平穏な日常が崩れていく。

 

元大学教諭の渡辺儀助(77 歳)を演じる長塚京三の矍鑠(かくしゃく)とした老人像は憧れますね。

映像は白黒で、古い一軒家の様子を映し出す画面は昔の映画を観ているようで懐かしい感じがする。渡辺が毎日自炊するのだが、白黒の映像なのに、これが美味しそうに撮れているんですよね。

鮭を網焼きすると、鮭の切り身から泡立つ水分と煙が美味しそうに感じられてお腹が鳴ります。

前半はこういった平穏な日々の日常を淡々と描いていきます。


ある日、元教え子の鷹司靖子が自宅を訪ねてきたり、行きつけのバーにフランス文学を専攻する大学生・菅井歩美と出会うことにより、渡辺の日常も少しづつ変わり始める。

そんなある日、パソコンのメールに「敵がやって来る」というメッセージが来てから周りに不穏な空気が流れ始める。


夢に死んだ妻が現れるようになり、女性に現(うつつ)を抜かす渡辺をなじる。

渡辺の精神状態も不安定になり、現実と虚構がない交ぜになっていき、夢か現実かの区別がつかなくなっていく・・・。

 

後半はかなりシュールな展開になっていくので、見ている人は混乱するかもしれない。

 

ここからネタバレ注意⚠️

タイトルにもある「敵」の正体ですが、私は「煩悩」なのではないかと解釈しました。

煩悩(ぼんのう)とは、仏教用語で、人を苦しめる心の働きや、欲望や欲求、妄念、妄執などの事をいいます。

人生をリタイアして、あとは死を待つのみという悟りの状態だった渡辺が2人の女性に出会うことによって「性欲」に目覚めます。渡辺は死んだ妻への贖罪の意識に駆られ葛藤します。それが外部化されたものが「敵」として渡辺を攻撃してきます。
うるさい隣人やペットを連れた女も射殺され、渡辺の心をかき乱す連中は一掃されます。
そしてすべてが片付いた渡辺は安らかに永眠します。

 

老人になろうとも、やはり人間は欲望に振り回されるのですね。