昨日、2019年に放送された、NHKの『心の時代』のサヘル・ローズさんを取材した回、『砂漠に咲く薔薇のように』を見た。


彼女の半生は、波乱万丈。

イランで、戦災孤児をへて、養母と共に、日本へ移住。

ホームレスからから、少しずつ這い上がっていく様子を

サヘルさんと、養母のフローラ・ジャスミンさんへのインタビューと、ドキュメンタリー取材で構成されていた。


フローラさんと、サヘルさんの出会いは、爆撃で壊れたビルの瓦礫から出ていた小さい手を、フローラさんが見つけたこと始まった。フローラさんは、瓦礫の中からその小さな手の持ち主を助け出した。少女は孤児院へ入ったご、フローラさんは、少女を迎えに行き、サヘル・ローズと名付けた。


サヘルとは、砂漠

ローズは、バラ


砂漠のような過酷な環境でも、美しい花を咲かせるバラの様になって欲しいとつけられた名前だ。


フローラさんは貴族の身分で、当時大学生。大学教授になる夢を叶えるために大学院へと進む用意をしていた時のことであった。


孤児のサヘルさんを引き取るということは、フローラさんの家族は認めなかったという。


フローラさんは、当時、婚姻関係にあった男性の住む、日本に渡った。しかし、彼は、サヘルさんとの生活に馴染めなかった。


ある日、フローラさんは、その男性から、

「僕を取るか、サヘルを取るか決めろ。」と、迫られ、サヘルさんを連れて、その男性の元を去った。それからは、サヘルさんと共に公園で、野宿を始めた。当時、サヘルさんは、小学校4年生。二人は、毎日公園から、フローラさんは仕事へ、サヘルさんは小学校に通った。帰宅時、公園の中の約束のベンチで落ち合った。


その後、学校で給食の作る職員さんの女性自宅で下宿をした。それからしばらくして、その女性の紹介で、フローラさんは絨毯を作る仕事することになり、フローラさんと、サヘルさんは新しい職場の近くへ引っ越した。


絨毯の作業所での賃金は安く、1つのツナ缶を3つに分けて2人で毎日、空腹をしのいだのだそうだ。どうしても、サヘルさんがお腹が空いて我慢ができない時はデパートの試食コーナーへ行った。


フローラさんは、瓦礫の中から見つけた1人の少女を育てる為に、それまであった地位も財産も将来もなげうった。


フローラさんの、行動力、決断力は若さゆえだったのがも知れないが、まるで聖書の中の主要人物の様だと感じた。


番組の中で、フローラさんは仕事場で、サヘルさんは学校でいじめにあっていたというが、2人とも決して人間を嫌いにはならなかった。


サヘルさんは、女優、講演・執筆活動をしながら、ご自分の経験を伝えているそうである。

そして、世界中のご自分の幼少時代と同じ様な境遇の子どもたちの為の活動をしているのだそうだ。


番組の中で、サヘルさんは、外国で出会った、ストリート・チャイルドの男の子と再会を約束した。

男の子は、


「お姉ちゃん、もっと大きくなってね。

必ず、また、僕をみつけてね。」


と言ったそうだ。


「その言葉が、ずっと自分の中にあって、

落ち込んだ時も彼の言葉が支えてくれてるんです。」


「必ず、彼を見つけに行きたい。

彼は、ストリート・チルドレンドレンだから至難の業だけど。必ず彼を見つけたい。

見つけてって言われたから。」


「それが自分にとっての生きる目標」


「私は、必ずまた来る。

そして、必ず彼を見つける。

旅は2度目が本物だから。

彼に、ちゃんと私は繋がっていると証明したい。」


「私は多分、出会うために生まれて、

そのためにいかされて。

「出会わなきゃいけない人がいる。」っていう、

その出会いに生かされている。」


「みんな、自分探しって言うけど、自分はどこにもない。私は、ここだし(胸を指して)。

この人間をどれだけ肉厚にできるか。

経験が、多分、自分の心の厚みを

増していくと思うので。」


「旅は、自分を成長させてくれている大事な鍵。

明日はないです、旅には、正直。

でも、過去でもなくて、

現在なんだなぁって。」


と、語っていた。


番組の最後に、サヘルさんは、


「よく、「アイデンティティは?」

って言われるんですけど、

アイデンティティって作られていくもので、

それをどう自分で作っていくかで…」


「自分という根っこがない人間を

根っこを色んな所で張っている。

根っこを常に探している。」


「砂漠に咲く薔薇で、「サヘルローズ」。

誰も、私にはなれない。私は私。」


フローラさんは語った、


「サヘルは本当に強いと思う。戦争にあっても死ななかった。」


それにしても、

サヘルさんは、どうして人を嫌いにならなかったのだろうと、私は、とても不思議だった。


考えを巡らせた結果、それは、フローラさんの献身的な支えがあったからだと思う。


フローラさんだけでは無い。


小学校の先生も、放課後サヘルさんに一生懸命日本語を教えてくれたのだと言う。


デパートの試食コーナーの女性は、家から食べ物を持って来て、サヘルさんに渡してくれた。


給食のおばさんも、自宅にサヘルさん母子を無償で住まわせてくれた。


きっと、

サヘルさんは、周りの人たちの損得のない、純粋に相手を思やる気持ちと行動で、純粋に人のことを思うことが出来るようになったのだと思う。


純粋に人を思う気持ちは、

本当に自分自身を愛していなければ生まれない。

純粋に人のための行動は、

本当に自分自身を大切だと思っている

人にしか起こせない。

それが出来る人が本当に強い人間である。


と、私は思う。


世の中では、

これ程までに相手を思いやることのできる人がどれだけいるだろうか。


風の時代に…