D・トランプをJ・W・ブッシュに準えるのは間は間違っている | 初瀬蒼嗣の保守言論

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保守の立場から政治思想を中心に意見を述べていきたいと思っています。

2019年02月20日
D・トランプをJ・W・ブッシュに準えるのは間違っている

日本では今でも、アメリカにおいて、共和党が保守政党であり、民主党が左翼政党だと考えている人がいるようだが、必ずしもこの考えは正しくないと思われる。

アメリカでは長らく、共和党は新自由主義と新保守主義の影響を強く受けており、新自由主義および新保守主義は決して伝統的な西欧保守とは一致するわけではない。

むしろ新保守主義の祖であるノーマン・ポドレツやアーヴィング・クリストルといった人物を見ても、実際は共産主義からの転向者と言われており、実際のところは転向者どころか、保守の仮面を被った共産主義者と見做すべきほどの考え方をしている。これはアメリカの新自由主義者にも通じるところがあり、共和党のいわゆるネオコンは、民主党のリベラルと非常に強い親和性を持っているのである。

異なるのは非常に表面的な印象のみであり、中身にはほとんど大きな違いはない。言い換えるならば、新保守主義者、ネオコン勢力であるJ・H・W・ブッシュやJ・W・ブッシュは、同じ共和党のD・トランプよりも、ずっと民主党のB・オバマやビル・クリントンやヒラリー・クリントンに近い立場である。

現にこのことはヒラリー・クリントンの著作を読んでもよく分かる。ブッシュ家はトランプではなく、ヒラリー・クリントンに対して同情的であった。かつての共和党、D・トランプ以前の共和党の指導部と民主党の指導部は、実際は非常に強い同一性を持っていたのである。

ウッドロウ・ウィルソン政権以来、アメリカの指導者層はウォール街やロンドンシティの金融資本家たちの強い影響下に置かれ、J・F・ケネディという例外を除けば、ロナルド・レーガンがこの勢力に幾分抵抗したと言われているが、概ねこの、いわゆるディープ・ステートの支配の下、アメリカの政治は動いていたともいわれている。

アメリカはこのようなウォール街やロンドンシティの金融資本家たちのディープ・ステートによって長く傀儡状態であり、およそ100年という歳月を経てやっと、D・トランプを背後から支援する勢力によって反旗が翻されたのである。

もう、私たちはアメリカを共和党・民主党という対立軸からのみ眺めるべきではない。アメリカは長らく世界で率先してグローバリズムを推進してきたが、ここにきてナショナリズムを重視する立場へと転換しつつある。アメリカ国民はウォール街やロンドンシティが支配するディープ・ステートの行ってきたことを直感的に感じ取って、彼らの支配から脱しようとしている。そういう時代なのである。

D・トランプはアンドリュー・ジャクソンを尊敬しているとされるが、アンドリュー・ジャクソンと言えば、中央銀行である第二合衆国銀行を締め出した大統領であり、トランプ政権を支援する勢力の狙いは、現在のアメリカの中央銀行であるFRB、連邦準備銀行、民間による通貨発行権を撃つことである。これは実に明白なことである。

このようなトランプの動きに対して、アメリカをはじめとする欧米社会の金融資本家勢力は、彼らの傘下にあるメディアというプロパガンダ装置を最大限に使い、トランプ大統領を権力の座から締め出そうとしている。その代表的なメディアが、湾岸戦争以来、彼らディープ・ステートの戦争プロパガンダとして最大限に利用してきたCNNのようなフェイクニュースである。

CNNはアメリカ国民あるいは世界の諸国民のために存在しているわけではない。CNNは金融資本家勢力、ディープ・ステートのプロパガンダ装置として存在しているのである。トランプ大統領がいうように、CNNはフェイクニュースであり、全てのニュースが扇動・洗脳・工作を前提としている。日本人はこの事実に気が付かなければならないのだが、保守派もリベラル派も挙ってCNNを引用し、CNNがまるで事実を言っているかのように錯覚し、その工作にのっている。右も左も見事に洗脳されているのである。

アメリカにおける最も重要な権力の対立軸は、実は共和党対民主党ではなく、ウッドロウ・ウィルソン以来、アメリカ大統領を支配してきたディープ・ステートによるグローバリズムとアンドリュー・ジャクソンそしてD・トランプのようなアメリカを第一とする指導者との対立だったのである。それがようやく2016年に顕在化してきたのである。

日本の自民党は長らくアメリカのディープ・ステートの支配下にあり、実質的に右も左も、このディープ・ステートの掌の上で転がされていたようなものである。自民党から日本共産党に至るまで、それを支援していたのは、ウォール街およびロンドンシティの金融資本家勢力であり、日本には実際に保守政党などなかったのである。日本のための政党など存在しなかったのである。

そんな中でも政治家の一部には、そういったディープ・ステートの支配下にありながらも、そういった勢力の様々な工作・命令・脅迫が行われているさなかにあったとしても、日本のために何ができるのかを真剣に考えてきた人物も少なからずいたものと推測する。同時に、見事にその工作・命令・脅迫に乗り、日本の国体の破壊に寄与したような政治家も山のようにいたということも推測するに難しくない。

どれほど彼らの行動が妥当なものであったのかは私には想像もできないところがあるが、いずれにせよ、それが我が国の戦後の政治体制というものだったのだろう。

しかしながら、現在アメリカ国民が大きく舵を切ったことにより、世界情勢は大きく変化しつつある。この流れを世界の裏の歴史を知り尽くしているものたちが、この機を狙って様々な行動をしているというのが、現在の国際情勢の重要な要素であろうと思われる。そして自民党の指導者層も様々な人々が、様々な思惑と、様々な観点から、この流れをどのように切り抜けていくのかを思案しつつ、政治を行っているものと推測する。

私たち国民の方も、このような時代の流れを捉えて、より確かな世界の真の姿を見出し、考え、行動する必要があるのだろう。現代は、非常に混迷を極めている時代ではあるが、それでも非常に興味深い、そういった時代であるというのは間違いなさそうである。

私たちは再度、私たちは何を真に目指すべきなのか、よくよく考える時期に来ている。メディアやアカデミーの洗脳から覚醒し、本来の私たちの願いを、再度求めるときが来ていると私は思う。