第1 事業承継税制とは
企業の経営者が事業を後任に承継する際、株式を譲渡することで事業承継をすることがあります。その場合、株式を譲渡する際には後継者すなわち株式を譲り受けた人は贈与税を支払わなければなりません。親族内承継(親から子に事業を承継すること)の場合は、前経営者がご逝去されたのに伴い株式を相続により承継することがありますが、その場合も承継された株式については相続税が発生します。
この税金の負担が大きいために、事業承継がスムーズになされていない問題があるのです。多額の税金を払ってまで後任に事業を承継するほどの企業かどうか、それを考えた結果、事業を廃業してしまう経営者も中にはいらっしゃいます。そうすると企業一つがつぶれてしまうことになり、従業員の生活も危うくなってしまいます。国全体で見れば、日本の経済も活性化しません。
そのような状況を回避するための制度が事業承継税制度です。先に述べたような税金の負担を軽くすることで、事業承継がスムーズに行われるようにする制度です。ただし、税金の負担が軽くなるというのは、支払う税金の額が減るのではなく、支払いを猶予される、というものであることは要注意です。
第2 事業承継税制上の優遇を受けるための要件とは
この税制度が、平成27年1月に改正法が施工されて以降、主に、以下の要件となりました。※全て網羅しているわけではありません。
大まかに二つに分けると、承継前の要件と、承継後の要件です。
1 承継前の要件
まず、都道府県知事から自社の株式について認定を受けることが必要です。その認定要件が
①中小企業基本法上の中小企業者であること(製造業、小売業等の業種によって定義が異なりますのでご注意ください)
②上場会社、風俗会社でないこと
③従業員が1名以上いること
④資産運用会社に該当しないこと
※親族内承継であるかどうかは要件になりません。
2 承継後の要件
相続税、贈与税の申告期限から5年間は、以下の要件を満たして事業を継続することが必要です。(このような要件が必要とされるのは、制度が悪用されるのを防ぐためです)
①5年間、事業を廃業しないこと
②雇用の8割以上を5年間平均で維持すること
※平成25年度改正(27年度施工)前が雇用の8割以上を毎年維持することが必要でしたがその要件が緩和されました。つまり、5年間のある年は整理解雇(リストラ)などにより従業員を大量に解雇しても、その次の年に新たな従業員を雇ったり再雇用すれば税制優遇を受けられるのです。
③後継者が5年間、代表を継続すること(コロコロと代表者が変わってはいけません)
④先代の経営者が代表者を退任し、5年間は再び代表者にならないこと(会社の代表権を持たないということです。)
※有給役員として会社に残ることは大丈夫です。
⑤対象株式を5年間継続して保有すること(いったん代表者に株式を譲って、その株式をさらに第三者に譲るなどすることは許されません)
⑥承継後も5年間の間、資産管理会社や風俗関連事業を行わないこと
第3 事業承継税制の効果
1 相続による承継の場合
後継者が納付すべき相続税のうち、相続により取得した非上場の株式等に係る課税価格の80パーセントに対応する額が納税猶予されます。
ただし、相続前から後継者がすでに保有していた議決権株式などを含め発行済株式総数の3分の2に達するまでの部分に限ります。3分の2という割合は会社の重要な事項を決議する際に必要な割合だからです(特別決議)。3分の2についてまで承継がされれば、十分に後継者は会社をコントロールできるのだから、残りの3分の1についての株式の承継についてまで税制上優遇する必要はない、というのが法制度の趣旨だと思われます。
2 贈与による承継の場合
後継者が納付すべき贈与税のうち、贈与により取得した非上場株式等に係る課税価額の全額に対応する額が納税猶予されます。
ただし、贈与前から後継者がすでに保有していた議決権株式等を含め、発行済株式総数の3分の2に達するまでの部分に限ります。その理由は相続による承継の場合と同じです。
第4 おわりに
以上が事業承継税制の概要です。ご不明な点等ございましたら是非ともご連絡くださいね。
参考URL
国税庁のURL
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sozoku/hijojo_aramashi/index.htm
中小企業庁のURL
http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/g_book/h21/gb149.html
中小企業の定義について
http://www.smrj.go.jp/org/about/sme_definition/index.html