記者のリソースが限られた中で広報を実践することについて | IT企業のPR

記者のリソースが限られた中で広報を実践することについて

仕事柄、自分が担当するお客様の新製品などを発表するため、記者発表会を開催しますが、最近とくに感じることは記者さんの出席を確保することがますます難しくなっていることです。もちろん、記者発表会を主催する会社の知名度や発表案件の中身に左右されますが、たまたまある日に数多くの企業の記者発表会が重なってしまうと限られたメディア媒体の記者の取り合い合戦となってしまっています。

限られた数の記者で様々な企業の取材をしているわけですから、当然、一つの企業の取材にあてる時間や労力に限界があります。結果的に、記事化が実現したとしても企業が最も伝えたいメッセージが伝えられなかったり、知名度がない会社はなかなかメディアに露出する機会が得られず、自らが情報を発信していかない限り、自社のことを分かってもらえない状況になってしまいます。

この傾向はアメリカで顕著で進みつつあるようで、Pew Research Centerが発表した「The State of the News Media 2013」によると、ニュースを報道するメディアの記者の数がリストラで減り、記者が伝える記事の報道力や調査力などに影響を及ぼしているようです。そのため、従来の新聞、雑誌、テレビなどのいわゆるマスメディアに比重を置くのではなく、自ら直接メッセージを伝えたい人に届ける取り組みがより活発になってきています。

それが顕著に現れたのが、オバマとロムニーが争った2012年の大統領選だったそうです。Pew Research Centerの分析によると、この大統領選でマスメディアが果たした役割は前回の大統領選の時より小さくなり、候補者が有権者に直接伝えたメッセージのほうが大きな役割を果たしたと述べています。

以下のスライドが示すように、選挙戦で伝えられた政治家個人に関するメッセージについては、2000年に50%がメディアから発信されたものだったのに対し、2012年にはその割合が27%に減少し、逆に政治家個人が直接伝えた割合が48%に増えています。
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また、以下のスライドが示すように、オバマのほうがより多くのメッセージを、ソーシャルメディアツールを使って発信していたことが分かります。
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こうした背景があるため、政界や企業において、以前はマスメディアの記者だった人などを自らの組織のお抱え記者として雇って、自社のプラットフォームを使って情報発信する取り組みを強化したり、自らが生み出すコンテンツをより多くの人に届けるために「ネイティブ広告」などの新しい手法を使って、直接ターゲットにメッセージを届ける取り組みなどが活発になっているのです。

日本でも夏の参院選から選挙期間中にソーシャルメディアを使ってネット上で情報を発信ができるようになりましたが、マスメディアだけでは伝えられないメッセージを伝えるために、日本の政治の世界でも直接メッセージを届ける取り組みが活発化していくと思いますし、企業も同じように企業自らが直接ターゲットにメッセージを届けるにはどうしたらいいのかということを真剣に検討する必要があります。