さてさて、P&GさんのPANTENEのキャンペーン解析第二弾お待たせしました。

前回からまた期間がもの凄くあいたことはスルーでいきます

 

この珠玉のキャンペーンを成功に導いた要因の残り2つのご紹介です。

 

インフルエンサーの使い方

インフルエンサー施策隆盛の中、インフルエンサーをどのような基準で選ぶかの視点はとても重要です。

あまり慣れていない人だと、芸能人、モデルさんにCMに出てもらいましょう、読者モデルやインスタグラマーを集めてインスタやブログで発信してもらおうという流れに100%なります。代理店からの提案書にもデフォルト設定のごとく盛り込まれています。

 

今回のセンスが光るポイントはbabychancoちゃん、近藤サトさんを起用し、かつWEBムービーの形にまとめた点だと思っています。

アメリカの娯楽雑誌「People」において、babychancoが「Get this kid a Pantene ad!(この赤ちゃんはパンテーンの広告に出演すべきだ!)」と紹介された記事を、パンテーンの責任者が偶然発見したことがきっかけで、今回のプロジェクトが実現したそうです。その個性的な“爆毛”を通じて、世界中の多くの人々に個性や違いを愛することの大切さを教えてくれます。さらに、染めない・隠さない“グレイヘア”で賞賛を得た近藤サトさんは、自分を表現する様々な選択肢があることを、髪を通じて教えてくれた存在です。

 

このお二人が出演するバースデームービー「The Hairy Tale by babychanco #HairWeGo PANTENE(パンテーン)」を見た時はおじさん、ちょっと涙腺が緩んじゃいました。最近ほんと涙腺が弱くて弱くて・・・姪っ子が頑張ってる姿をみ(割愛)

この動画は世界中で賞賛の嵐となるわけですが、これが日本国内で流されるCMであったり新聞広告であったりしてもここまでの反響にはならなかったと思います。世界中の人が見て、感じて、拡散できるWEBムービーというフォーマットを選択したことが一つの分岐点だったのではないかと思います。

 

統合型PR

”Hair We Go”キャンペーン最大の功績はSNS、CM、新聞広告、Ownedメディア、交通広告などあらゆるメディアを最適なタイミングで活用していった点に尽きます。

 

①交通広告

このキャンペーンが耳目を集めるきっかけになったのが内定式の日に駅の広告スペースに掲載されたこちらのメッセージです。

内定式という就活生がもっとも自分を殺さなければいけない日に、「あなたは本当にそれでいいの?」と投げかけ、当の就活生本人だけでなくそれをみた社会で働く先輩も「もうそんな時代じゃないよね。自分たちの時はそうだったけど、なんであんなに気にしていたんだろう」という気持ちを起こさせ人々の興味に静かに火を付けました。

 

②新聞広告

   

所謂オールドメディアではありますが、意見広告など内容によっては読者の深い理解に繋がるメディアです。

社会的な問題へのアプローチとして新聞をあえてスコープに入れたのはとても良かったと思います。

 

③SNSハッシュタグ

そこからP&Gさんは攻勢をかけ一気に畳けます。

#就活をもっと自由に

#この髪どうしてダメですか?

など、議論を巻き起こす議題設定を行い、昔から日本にある問題に光を当てていきます。

 

実はこのSNSのハッシュタグ、PR担当者なら分かると思うのですがめっちゃ怖いです。一歩間違えれば即炎上必至の内容なので、話題化と炎上は常に表裏一体なわけです。

特に#この髪どうしてダメですか?は学校の校則や教育現場に土足で上がり込むわけですから先生方や教育関係者からの反発は必至です。しかし、ここでも一方的に校則を批判するだけでなく、WEBを使って教師と生徒の対話により、自分たちの頭で考えていこうというポジティブなメッセージに転換していくわけです。このあたり、やっぱり緻密に設計されています。

 

色々と事後になって分析しましたが、だからと言って素晴らしい企画が作れるわけではないです。

でも、このキャンペーンを企画されたご担当者も最初からここまでの展開を見通せていたわけではない、というか、最初は「就活の時って話題になりそうだからそこにメッセージを当てよう」くらいのことだったかも知れません。しかし、勇気をもって世の中に発信することで、その反応を受けてさらなるアイデアが湧くことも多いですし、周りに賛同者が増えて思わぬ発想をくれたりするものです。

 

”Hair We Go”キャンペーンのような取組みを私も成し遂げたいと願うばかりです。