第八夜はこちら

 

黙り込んだ自分に対して、どんどんと収集がつかなくなっていく佐竹さんを、どこか俯瞰で見ている

「ねぇ」

何でそんな事を言ったのだろう?

「ひょっとして佐竹さんって綾人の事、好きなの?」

「はぁ~?」

あ、ビンゴ


「好きなんだ

 チャンスじゃん、別れたんだから」

「ちょ、片倉君、何言って・・・」

チャンスすらない自分の事が情けなくて仕方がなかった


「マイカ?」

ドアが開き、見知った顔が現れる

「ミク・・・」

「マイカ、片倉君と・・・えっと、そういう事?」

「違う」


2人の言葉が揃った時、見知らぬイケメンが姿を現す

「ミクちゃん?」

その瞬間、自分も佐竹さんも全て悟ったのだと思う

結局こういう子が全てを手に入れるんだ、って



カラオケを出たその足で綾人の家に向かった

心の中にあるこの感情をどうにかしたかった

ずっと隠しておくつもりだったのに

知られていない事実は、最初から存在しないのと同じだから

親友として、ただ傍にいるつもりだったのに

それなのに


その感情は自分の中で徐々に育って、そして宿主である自分を浸食していた

他に何も考えられないくらいに


どうせ叶わない

それならば

叶わないのならばいっそ粉々に砕いてしまいたかった

もう2度と元に戻らないくらい、粉々に