第四夜はこちら

 

初めての恋に浮かれている割に口が堅い綾人から

慎重に初恋の話を聞きだした


いや、そんな話、本当は聞きたくない

でも聞きたい

綾人の事は何だって知っていたい

ひとつ残らず全て

俺が一番近くにいて、全てを知っていたい


いつしか綾人がキョウカと呼び始めた、初めてのガールフレンドである松本さんとは

ひとけのない道で手を繋いで一緒に下校したり

塾の帰りに一緒にアイスを食べたり

時々ラインで長話をしたり

そんなささやかな関係だった


けれども俺は猛烈に嫉妬した

顔には出さずに

相変わらずにこにこと笑顔でいたくせに

心の中で何度も願った

いや、呪った

早く別れろ、それ以上関係を深めるな


そんな呪いが通じたのか

1年ほどで関係は自然消滅し

俺達は3年生になっていた

部活も引退し、俺はまた綾人の一番近くにいた


一緒に下校したり

塾の帰りにコンビニで買ったチキンを半分ずつ食べたり

ラインで通話を繋いで一緒に勉強したり

やっている事は松本さんと変わらないのに

それでも決定的に違う事に勝手に傷ついていた


だけれども、その時の自分は、友達で良いと思っていた

むしろ友達の方が良い、とさえ

恋はいずれ終わる

けれども、友達なら一生綾人の傍にいられる


屈託なく笑う綾人の傍に

一番近くにいられる、と

そう思っていた