あまりマスコミに出たがらない安部氏だが、取材を受けることをいったん決心すると、熱心かつ丁寧に話してくれた。
「カリスマ経営者」というよりは、「頼れる先輩」のような雰囲気と言ったら、失礼だろうか。
「本部は店のために、店はお客様のために」というモットーを語る口調には、細部への目配りと、「皆で力を合わせてがんばっていこう」というチームワーク意識、そして、社員に対して大きな全体的視野のなかで自らの仕事の意義を認識させ、誇りを持たせようという、安部氏のビジネス哲学があらわれていた。
創業100年を超える老舗として、牛丼という昔ながらの商品を中核としながら、そのビジネススタイルはアメリカの最新の経営者のそれを思わせる。
「進化と成長」を求めながら、古きよき伝統を壊さずに商品を売る、それもこの不況下で。
こうした最も困難とも思われる離れ業を、吉野家は軽々と、どこか楽しげにこなしているように見える。